灰色の狼と小さな白猫   作:鯵開き

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いつの間にかお気に入りが160件を越えていました。嬉しさで小躍りしてしまいそうです。ありがとうございます。



なんとか聖剣篇完結です。


第7話 事後処理

「おの、れ。ファイズ!」

 

コカビエルは翼を失った痛々しい姿でなお獰猛に俺を睨む。

俺は油断なく構えながら思考する。

 

さっきの蹴り─クリムゾンスマッシュ─は間違いなく当たった。確実に貫いたはずだ。現にコカビエルの翼は灰化して消えている。ならば奴の体は万物にとって有毒なフォトンブラッドに侵されているはずだ。

事実、コカビエルはふらつき、時おり血反吐を吐いている。つまり、いかにコカビエルといえどフォトンブラッドの毒性は堪えると言うことだろう。

即死しなかっただけで時間の問題か?

 

「まさか、俺が、ここまで追い詰められるとはな。おもしろい。ひどくおもしろいぞ!ファイズ!」

 

俺の思考はコカビエルのそんな言葉によって中断させられた。

狂ったように笑いながら奴は手に光の槍を生み出し構えだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこまでだ。コカビエル」

 

 

 

 

 

 

上空から、結界を破壊する轟音とともに静かながらもよく通る声が聞こえた。

 

 

「白龍皇(ヴァニシングドラゴン)か!」

「アザゼルから叩きのめしてでも回収するように言われてきたが、叩きのめす必要はなくなったな」

 

そう言って白い龍のような全身鎧を着た男─白龍皇─はコカビエルとの距離を一瞬にして詰めると拳を振るった。コカビエルはその一撃で気を失ったらしい。

同時に地面の魔方陣も粉々に砕け散った。

 

「あの男も回収するか」

 

コカビエルを肩に担ぐと倒れていた神父の服を掴みぞんざいに持ち上げ、飛び上がった。

 

『無視か白いの』

 

さっさと飛び去ろうとする白龍皇を兵藤が、正確には兵藤の左手の籠手が呼び止めた。

 

『起きていたのか。赤いの』

『ああ』

 

白いのやら赤いのやら言い合っている点と籠手と鎧から感じる龍の気配から二つの声を二天龍か、とあたりをつける。

 

『久しぶりだがこれではな』

『ああ、だがたまにはいいだろう』

『そうだな。いずれ、改めて』

『ああ、いずれ、な』

 

そんな会話を最後に二つの声は止み、今度は宿主同士が話始めた。

 

「お前はなんなんだ?」

「全てを知るにはお前は弱すぎる。強くなれ、赤龍帝」

 

兵藤からの疑問をぶったぎり、白龍皇は飛び去って行った。

 

彼方へ消えたのを確認し、俺はベルトのファイズフォンを外すと解除キーを入力し変身を解除する。

 

「待ってちょうだい」

 

ハンドルを回収し、バイクに向かおうとするが、リアス・グレモリーが俺に声をかけた。

 

「なんだ?」

「巧真、だったわね。貴方のことについて色々聞きたいのだけれど」

 

リアス・グレモリーの目的はそれらしい。まあ、当然だろうな。

とはいえ今はまずい。久しぶりの変身と戦闘に体が疲労を訴えている。

 

「悪いが放課後にしてくれ。今日は疲れた」

 

正直面倒だが、最低限しなければならないだろう。

 

「……分かったわ。放課後にイッセーと一緒に来て頂戴」

 

少し考えてリアス・グレモリーは了承した。

俺は頷くとアタッシュケースにファイズギアを仕舞う。

その様子を見ていたリアス・グレモリーが再び口を開く。

 

「それも持って来てくれるかしら」

「なんなら今預けるが」

 

そう言うとリアス・グレモリーはポカンとした表情に変わる。

 

「兵藤」

「ん?何…っておおう!」

 

それを尻目に俺はアタッシュケースをリアス・グレモリーの近くで話を聞いていた兵藤に投げ渡すとバイクに跨がりエンジンをかけた。

 

「じゃあな」

「あ、おい!ちょっ、乾!」

 

慌てて呼び掛ける兵藤の声をシャットダウンするようにヘルメットを被るとちらりと塔城を見やって無事を確認し、さっさとバイクを走らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─side イッセー─

 

「なんだったんだ?あいつ」

 

俺は抱えていたアタッシュケースを見る。

乾の奴が持っていたものだ。これで、あいつは変身して、コカビエルを追い詰めた。

 

「とにかく、イッセーはそれを部室に置いてきて頂戴。あと、明日は巧真を連れて来てくれる」

「あ、はい部長。あの、乾と知り合いだったんですか?」

 

巧真と呼び捨てにしているから知り合いだと思うけど、乾と部長がどうやったら知り合うんだ?

 

「ええ、でも一度話しただけよ。むしろ小猫の方が知り合いと言えると思うわ」

「小猫ちゃんとですか?」

 

そういえば小猫ちゃんと親しげだったな。

小猫ちゃんを見るとじっと乾が去った方を見ていた。

 

「小猫ちゃん、乾なんだけど」

「巧真先輩は、無愛想ですが、悪い人ではないと思います」

 

小猫ちゃんはいつもの無表情だったけど信じているようだった。

だよな、よくわかんないけど、俺もあいつは悪い奴じゃねえと思う。

 

さて、木場にも声かけるかな。

 

俺は木場のいる方へと歩きだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────────────────────────

 

『なんだよこれ』

 

乾は困惑していた。目の前のアタッシュケースの中身の説明書を読んで。

 

─ファイズギアとデルタギア、だそうだ。そこに書いてある通りなら武器として非常に強力だ─

─これを俺たちに着けろと?─

 

曹操の言葉に坂下が続く。

 

─そうだ、俺は神器があるがお前たちにはないだろう─

─わかった─

『ああ』

 

乾と坂下がそれぞれベルトを巻く

 

乾がファイズ、坂下がデルタだ。

 

乾はファイズフォンに≪555≫とコードを入力する。

《standingby》

 

坂下はデルタフォンに≪変身≫と音声を入力する。

《standingby》

 

乾は腰のバックルに坂下は右腰のデジタルカメラ型のデルタムーバーにそれぞれセットする。

 

《complete》

同時になったその音声とともに部屋を紅と白の閃光が埋め尽くした。

 

 

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

─side 巧真─

 

「今度はあの夢か」

 

今日は不快感が少ない。少しだけ機嫌をよくしながらちらりと時計を確認し、眠気は吹き飛んだ。

 

15時23分

 

「遅刻、というより欠席だなこりゃ」

 

正直このまま家にいたいが、放課後に説明すると言った手前すっぽかす訳にはいかないだろう。

 

適当に飯を食い、制服に着替える。時計は15時42分。

いっそ放課後につくように行こうかと考えつつ携帯を確認する。

 

「……」

 

言葉を失った。

 

着信122件未読メール98通

 

差し出し人は兵藤と塔城。塔城からは昼に少しだが、兵藤からはほぼ毎時間数件ずつ来ている。

 

俺が休んだせいだと思うが、かけすぎだ。

 

と、考えていると携帯が震えた。相手は兵藤一誠。

 

「もしもし」

『あ、おい乾!お前今どこに』

「家だ。寝坊って奴のせいでな」

『そ、そうか。早く来いよ』

 

兵藤は言いたいことを言うとすぐ切れった。

 

 

行くか。

 

俺は鞄も持たずに家を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─side 小猫─

 

─オカ研部室─

 

 

「お茶ですわ」

「楽にして頂戴」

 

イッセー先輩につれられて巧真先輩がオカルト研究部の部室へとやってきました。

出された紅茶を巧真先輩はじっと見つめています。なにかを警戒しているのでしょうか?

 

「心配しなくても変なものは入れていないわよ」

 

部長がそう言っても目は変わりません。ようやくカップを手に取り口元に運びました。

 

「さて、「フー」呼んだの「フー」は他「フー」でもない「フー」わ。うるさいわね」

 

部長の話に耳を傾けることもなく巧真先輩は一心不乱に紅茶を冷ましています。

 

「フーフーフーフー」

「話がしたいのだけど」

 

部長の言葉を気にせずフーフーし続けています。

 

「フーフー……ズズッ、熱。フーフーフー」

 

まさか。

 

「こ、これは」

「ええ」

「あらあら」

「フム」

「ええっと」

「なるほどね」

 

イッセー先輩部長朱乃さんゼノヴィア先輩アーシア先輩祐斗先輩が呟きました。

 

「猫舌」

「るせぇ」

 

私たちの反応に巧真先輩がイラつきを声にのせて吠えました。

 

道理で肌寒い日も冷たい牛乳だったんですね。

 

 

 

 

 

 

「さて、聞かせて頂戴、貴方のことを」

 

巧真先輩の意外な一面を知ってから五分後部長が改めてそう切り出しました。

 

「……わかった」

 

入れ直してもらったアイスティーを飲みながら巧真先輩そう言って話出しました。

 

2年前まではぐれ悪魔を狩る組織にいたこと。

 

昨日の力はそのときに手にいれたこと。

 

力─ファイズ─が堕天使のものであることを聞いたのは昨日が初めてであること。

 

組織を抜けてからは平穏を求めてここに住み始めたこと。

 

 

 

「以上が俺の過去だ。質問はあるか」

 

巧真先輩は一周見回すと再び部長へと視線を戻しました。

「いくつか聞くわ。その組織の名前は?なぜ組織に入ったの?止めた理由は?そして」

 

部長は一度切って続けました。

 

「私達と敵対する意思は?」

 

巧真先輩は普段通りの仏頂面でため息をつくと口を開きました。

 

「悪いが言いたくない」

「ふざけて「だが」」

 

「敵対するつもりはない」

 

巧真先輩はそう言ってじっと部長を見つめました。

 

部長も反らすことなく巧真先輩を見つめます。

 

空気がどんどん張りつめ、重くなっていきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう、分かったわ。信じましょう」

「そうか」

「ただし、監視はつけさせてもらうわよ。あと、オカルト研究部に入部してもらうわ。いい?」

「……ああ」

 

たっぷり3分見つめあってようやく決着しました。

ゼノヴィア先輩に続いて新しい部員が増えました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




うん、滅茶苦茶。

見捨てないでいただけると幸いです。

次回から、三大勢力会談篇です。
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