ジャンヌは魔剣を構えて相手の動きを伺う。相手は上半身すっぽんぽんで武器すら持っていない物腰の状態。静かに拳を構えているジークにジャンヌは鼻で笑う。
「ふっ…まさか素手で私と戦うつもりか?」
こちらは氷の能力と鋼を断ち切る魔剣デュランダル。相手の力は未知数だが、ジャンヌは勝てる自信があった。一方のジークはそんな事は気にもしないようで、静かに闘気を高めていた。
「…武器が持った奴が相手なら覇王翔吼…じゃなかった、えーと…本気で戦わせてもりゃう」
戦う前に台詞を考えてないし、しかもドヤ顔で噛む。緊張感が無いように見えて逆にやる気を削がれてしまう。ジャンヌは手っ取り早くこの邪魔者を片付けて白雪を誘拐せんとジークに襲い掛かる。
「Yhea!」
振り下ろされた魔剣をジークは躱して裏拳をおみまいする。ジークの裏拳を魔剣で防ぎ、横薙ぎをして相手を退けさせる。
「凍り付けっ‼」
ジャンヌは魔剣を地面に突き刺す。突き刺した先からパキパキと音を立てながら凍りつき始め、ジークに向かって勢いを増して一気に凍っていく。それに対しジークは恐れる様子もなく右手に力を込める。彼の右手から白く光る何かが見えた。
「レップーケーン‼」
ジークが右手を振り上げると風の衝撃波が地を這って進み、ジャンヌが放った凍てつく氷を相殺させる。自分の技が塞がれたことよりもジークの力にジャンヌは目を丸くさせ、少し驚きながらも鼻で笑った。
「ふっ…どうやら只者ではなさそうだな。闘気と風を使う
「え゛っ!まさかデートのお誘い!?それほど私の肉体美が気に入ったか!見よ、この筋肉!」
うん、やっぱりやめとこう。目の前でマッスルポーズをとるジークを見て前言撤回した。こいつはいち早く氷漬けにして見なかったことにしておこう。さっさと白雪を攫い、この場をすぐに去ろう。
「見つけたわよ、デュランダル‼」
自分の背後から大声が聞こえたとともに颯爽と駆ける足音が近づいてきた。振り向くとアリアがこちらにめがけて日本刀を振り下ろしてきた。ジャンヌは魔剣で防ぎ押し返す。押し返されたアリアは宙返りをしてスタリとジークの隣に着地してジャンヌを睨み付けた。
「デュランダルが学園内で白雪を攫ってバックレるにはうってつけの場所をあちこち探し回った甲斐があったわね。いい時間稼ぎにだったわ」
「神崎アリア…!何故ここにお前が…!」
「あんたは対象を攫う時、こちらの連携を崩してから攫う。あえて外れて探してたけども…彼がキンジの部屋に盗聴器を隠したのを見つけてくれたおかげでいつ攫ってくるか待ち構えてることができたの」
ジークは嬉しそうに胸を張るがアリアはそれに一向に構わず日本刀の切っ先をジャンヌへと向ける。
「さあ観念しなさい、デュランダル!あんたはあたしが捕まえてやるんだから!」
「ふっ…それで勝ったつもりか?お前なぞ相手にもならん」
「おっと、その前にデートはどこがいい?浅草?秋葉原?それともノブツナの部屋?」
「そんな事はどうでもいい‼ええい、いちいちこっちの気を削ぐな‼」
ジャンヌはもう一度魔剣を地面に突き刺す。今度は先ほど放ったものよりも強い氷撃が放たれる。
「ダブォーレップーケン‼」
ジークは両手で烈風拳を放ち、迫りくる氷柱を相殺させる。両者の間に氷の破片が飛び散り、その間を縫うようにアリアが駆けてジャンヌめがけて日本刀を振り下ろした。ジャンヌは魔剣で受け止めると一歩下がる。
「そんな鈍で私を倒せると思ったか‼」
魔剣を強く握りしめ、思い切り薙ぎ斬りをする。ガキンッと金属音を響かせアリアを弾き飛ばした。アリアは「きゃっ」と声を出して後ろへと下がる。手は先ほどの受けた衝撃でふるふると震え、持っていた日本刀は上半分がスッパリと切られていた。
「やっぱり噂通り、鋼を断ち切る魔剣というわけね…」
アリアはしかめっ面で持っている日本刀を投げ捨てる。腰のホルスターにある2丁のコルトガバメントですぐにでも引き抜いて撃ってやりたいが、ここは弾薬庫。間違って風穴開けてしまったらまずい事になる。バリツでどうにかするか、もしくは頼りになるのかどうかわからないジークに頼るかどうか迷った。
「デュランダル‼言われた通り、独りで来た…ってジーク君、アリア!?」
アリア達の後ろにジーク達の姿を見て驚愕していた白雪がいた。まさかもう来たのかとジークは目を丸くし、アリアは焦りだした。
「白雪…!?もう、何してんのよバカキンジ‼」
「むっ、このままではまずい。早くデュランダルを倒さねば」
白雪が来たことでこれは好機だとジャンヌはほくそ笑んだ。
「ようやく来たか、白雪。さあ、私と共にこい」
「分かってる…アリア、ジーク君、私を止めないで。デュランダルの言う事を聞かないと…キンちゃんが殺されるの」
「ま、待ちなさい白雪!そいつの言う事なんて聞かなry」
「ええっ!?デュランダルってそっち系だったの!?」
キマワシタワーと叫ぶジークにアリアとジャンヌはずっこける。そういう意味じゃないと何度言えばわかるのか、というよりもなんて緊張感がない奴だと二人は呆れた。
「あんた、今そんな事言ってる場合じゃないでしょ!?」
「HAHAHA、絵にもなるしいいんじゃないかな?」
「やかましいわ!というか真面目にやりなさいよ‼」
後で終わったらノブツナにどうしてこんなバカをよこしたのか、ありったけ文句を言ってやろうとアリアは決めた。そんな事よりも白雪は既にデュランダルの言うようになってしまっているし、間違いなくデュランダルは白雪を人質にとってこちらが手を出せないようにしてくるはず。兎に角やる事は白雪を説得することだ。
「白雪!こんな奴の言いなりになっても何も変わらないわ‼」
「そうだぞー。悪い奴のいう事を聞いてもいいことは無いぞ」
呑気に言っているジークはどうでもいいとして、白雪はゆっくりとジャンヌの方へと近寄っていく。アリアがいくら説得しても白雪は首を横に振った。
「ごめんなさい…私、キンちゃんを守りたいの…」
このままではまずい。こうなれば力尽くでも白雪をこちらに戻すしかない。アリアはジークにすぐにでも飛び掛れるよう目で合図をした。
「白雪‼待て‼」
白雪ははっとして歩みを止めて声のかかった方へ振り向く。そこへキンジが駆けつけて来たのだった。ようやく来たかと待ち焦がれたのが半分と事態がまたややこしくなると悩むのが半分でアリアは肩を竦めてキンジをジト目で見る。
「キンジ!遅すぎるわよ‼」
「アリア…悪い。俺のミスだ。ノブツナにこっぴどく言われてわかったよ…」
キンジはすまなそうにアリアに視線を向けて謝る。自分が白雪を守ってやらなければいけなかった。護衛とか関係なく、大事な人として守ってやらなければ白雪を救う事ができない。普段ならば皮肉を言うキンジが素直に謝ったことにアリアはキョトンとするが少し照れながらそっぽを向く。
「ま、まあ、分かったんならそれでいいわ…兎に角、白雪を助けるわよ」
「さー盛り上がってまいりました!三角関係って見てて面白いよね!」
「というかなんでジークがいるんだよ…」
「絡むとややこしくなるから気にしない方がいいわ…」
にやにやしているジークをキンジとアリアはジト目で流してデュランダルを睨む。
「白雪!こっちに戻ってこい‼」
「さあ観念しなさい、デュランダル!」
キンジ達はすぐにでも白雪を助けようと身構える。その時、下の方から大きな爆発音がしたと同時に地価が揺れ出した。何事かと思うと下から勢いよく水が流れ出てきた。
「なんだと…!?爆発にはまだ早すぎる…!」
ジャンヌは内心焦った。仕掛けていた爆弾はスイッチを押せば爆発するはずだったのに急に爆発をしたのだ。しかも思った以上の威力のようで水の流れ出る量が多い。このまま長居してはまずい。ジャンヌは咄嗟に白雪の腕をつかむ。
「こい…っ‼」
人質として連れ去ってやりたかったが、この数ではすぐに追いつかれてしまう。もう星伽の巫女を攫うよりも自身の安全を取るべきだ。途中で彼女を縛り、逃走の時間稼ぎにしてしまおう。ジャンヌはスモークを投げ、そのまま白雪を引っ張りその場から離れていった。
「白雪っ‼この…っ‼」
「キンジ、焦ってはダメ!追いかけるわよ‼」
耳を澄ませ、遠くでバシャバシャと駆けていく音のする方へと走った。白い煙を潜り抜け、気づけば膝の半分まで水位が上がってきた。流れ出てくる水量が多い。二人は急いで白雪を探して駆けていく。
「キンジ!いたわ!」
アリアは白雪を見つけてキンジに呼びかける。白雪は3つの鉄の鎖で体を縛られいた。
「白雪、無事か‼」
「…キンちゃん、アリア、ごめんなさい…皆に内緒でデュランダルのいう事を聞かないと学園島を爆発させキンちゃんを殺すと脅されて…いう事を聞くしかなかったの…」
「いいんだ、白雪。俺こそ謝らなきゃなんない。お前を守らなきゃいけなかったのに…助けてやるからな!」
「そ、そうよ。今はあんたを助けるのが先だから」
キンジは白雪を慰め、アリアと共にロックされている錠を解こうとする。だが今の自分のアンロックスキルでは到底外すことができない。一方のアリアも焦っていた。自分は泳ぐことができないため、どんどん水位が上がっていることを恐れていた。焦るアリアを見て、キンジはアリアには今逃げているデュランダルを追ってもらおうと判断する。
「アリア、先にデュランダルを追ってくれ」
「そ、そんな。あんた達を見捨てて行くわけにはいかないわよ」
「ここは俺がなんとかすry」
「えい」
「あっ…」
ジークが鎖を気合いと素手で千切り、白雪を自由にさせた。ぽかんとしているキンジとアリアにジークはドヤ顔をする。
「HAHAHA‼ピッキングなぞよりも男なら素手でやるべきだぞ!」
「「「‥‥」」」
白雪は苦笑いをし、キンジとアリアはジト目で睨む。そこは空気を読んで欲しい。あとでノブツナに文句を言っておこうと二人は決めた。
「水位も腰まで上がっておるし、水の勢いも増して流されるよりかはマシだろう?さあともに追いかけるぞ!」
「ま、まあ…一応良しとするわ」
アリアは気を取り直して、デュランダルを追おうと乗り出す。追いかける途中、ハッチが開いた音がしたから上へと逃げたのだろう。鉄の梯に手をかけて登ろうとした。しかし、それを遮るかのようにまた爆発が起き、ジークが言っていたとおり流れ出る水の勢いと量が増しだした。勢いを増した水流に白雪が流されそうになり、キンジは咄嗟に身を乗り出して白雪を助け出す。
「キンジ‼」
「アリア、ジーク、先に行ってくれ‼」
「おう!任せておけ!」
ジークはアリアの襟を掴んで上へと投げた。上への階へと投げられたアリアはギョッとするが猫の様に着地をする。後から登ってきたジークにゲンコツを入れた。
「ちょっと!驚かせないでよ‼」
「そうかっかするでない。あまり怒ると首が切れるぞ?」
ジークに言われてアリアはハッとする。目を凝らしてみると薄っすらと見えにくいケブラー繊維のワイヤーが自分の首の近くに張られていた。背中に隠していた日本刀を引き抜きワイヤーを断ち切る。
「見る目があるのか、ふざけているのか、よく分からないわね。それよりもデュランダルを追うわよ」
「…やはり追ってきたか。しつこい連中だな」
暗い通路からゆらりとジャンヌが姿を現した。ふんと鼻で笑ったアリアは日本刀を構える。
「それが私の売りよ!兎に角あんたをとっ捕まえて罪を償ってもらうわ!」
「ふっ…リュパン4世が言っていたとおり威勢がいいな。その姿は我らとよく似ている…そう、美しく勇敢な一族、ジャンヌ・ダry」
「ジャエーケン‼」
ジャンヌが言い切る前にジークが気を込めた肘打ちで突進してきた。ジャンヌは驚いて油断してしまい、直撃をした。受け身を取りジークを睨み付ける。
「く…卑怯だぞ‼」
「卑怯もらっきょもあるもんか!なんか話し長くなりそうだから隙をついてやっただけだぞ」
「いいだろう…‼ならばこのジャンヌ・ダルク30世の…オルレアンの氷華となって散れ‼」
ジャンヌは怒りを込めてジークへと襲い掛かる。さらっとジャンヌダルクだと名乗ったことにアリアは驚いていた。
「いや、ちょ、ジャンヌダルク!?しかも30世!?というかあんたそれでいいの!?」
レップーケーン→烈風拳
ダブォレップーケン→ダブル烈風拳
ジャエーケン→邪影拳
ジークの戦闘スタイルはまんまギース様です…はい…