私は何故生まれて来たのだろうかと何度疑問に思った事か
妖怪や神と言うのは、何も最初から存在する訳じゃない
人が居て、居ると信じられた時、初めてそこに生まれるものらしい
神は崇拝され
妖怪は忌み嫌われる
ならば何故、私達妖怪は生まれてくるのだろう
人間達に忌み嫌われる姿が具現化して現れる私達は、果たして存在意義など有るのだろうかと、名も無き闇の具現である私は考える
「人食い妖怪め!この村から出て行け!」
私に浴びせられる罵声が、何度も頭の中で反復される
人食い妖怪
確かに私は人を食うことも出来る
だが、そんな事などした事がない
それどころか、私は人間達に危害を加えた事など一度もない
なのにどうして、私は嫌われなければならないのだろうか
私はただ、居場所が欲しいだけなのにーー
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私は行く宛もなく、村の近くの誰も住んでいない小さな山小屋に住み着いていた
ちなみにだが、妖怪と言えど普通に人間と同じ物を食べていれば生きていける
なので時々山へ山菜取りに出かけたり、川で釣りをしたりして何とか暮らしていた
そしてその日も、山へ入る
「これは食べられそうだな」
食べられる物を見つけて摘む
まあ、もし毒があっても私は体を壊したりしないのだが
そしてしばらく山菜摘みをしていると
「助けてくれえええ!」
何処からともなく助けを呼ぶ声が響く
「!」
私はすぐに走り出し、声のした方へと向かう
少し先に、大きな熊に襲われている男を発見した
「ひいぃ・・・」
私は熊に闇を放ち、熊を吹き飛ばした
「え・・・?」
男は目の前の光景にかたまったいる
・・・嗚呼、また見られてしまったか
何故私は人を助けるのだろうか
ただ、人に認められたいだけなのかもしれない
何にせよ、力を見た人間は私を追い出そうとするだろう
人も必死に生きているのだ
仕方がない事である
私は背を向ける
その男は私の力を見て尚、声を掛けてきた
「アンタ、もしかして妖怪なのか・・・?」
訝しげに私に聞いてきた
「・・・」
私は何も答えず、その場を去ろうとする
「待ってくれ!せめて名前だけでも教えてくれないか?」
名前か・・・
私は生まれた時から近くに誰もいなかったので、名を付けてくれる人もいなかった
「名など無い」
私のその単調な答えに、尚も問う変わり者は
「ならせめて、助けてくれたお礼をしたいんだ」
「お礼だと?私は妖怪だぞ、死にたいのか?」
なんにせよ、私の正体を知られてしまったのだ
すぐにこの近くから離れて、また住める場所を探さなければならない
だと言うのに、この男は
「本当に俺を殺す気なら、助けないし、自分から妖怪だと名乗らないだろ?力になれるかは分からないけど、出来る事なら協力する」
この男は何故、私から逃げないで居てくれるのだろう
何故、罵声を浴びせて来ないのだろう
「・・・本当に、私の力になってくれるのか・・・?」
私の問いに男は屈託の無い笑みで答える
「もちろんだとも」
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それからその男は、毎日の様に私の住む山小屋に姿を見せた
そして姿を見せては、村の様子や、面白い話を持ってきてくれる
私は最初の方は少し警戒していたのだが、今は完全に心を開いていた
やはり人間の中には、この男の様に人で非ざる者に対しても屈託無く接してくれる優しい人間もいた
私はずっとこの男の様な人間に出会えるのを待っていたのかもしれない
そしてその男は、思いもよらぬ事を言う
「明日、一緒に村へ行かないか?」
「え?だが、私が行くのはマズイのでは・・・」
もし村で何かあったら、私だけでなく、この男も・・・
「大丈夫だよ。何かあったら、人と同じく逃げればいい」
「・・・そうか。分かった、行こう」
そしてまた、男は笑顔を見せたーー
翌日
私は男と共に村へ来ていた
結構大きな村の様で、店も多くある
「何処か、気になる所はあるか?」
何やら甘い香りが漂っている
「この甘い香りはなんだ?」
「ん?ああ、団子屋だな」
「団子?」
名前は聞いた事有るし、見た事もあるが・・・
「食べるか?」
「・・・いいのか?」
「もちろんだとも、それじゃあ行こうか」
私と男は店先に座り、男が団子を注文する
そして運ばれてきた団子を私は少し警戒しながらも、食べる
「どうだ?」
「・・・美味しい」
人間はこんなに美味いものを作れるのか
私はすぐに食べ終えてしまう
「それなら良かったよ」
そしてその後も、男に連れられ村を散策して遊んだ
今まで何年生きて来たかは数えた事も無いが、その日は最も楽しい1日だった
それから数ヶ月の時が経った
あの日以降も何度か村に行って遊んだし、一緒に山菜摘みや魚釣りなんかにも出かけた
私は生まれて初めての幸せな日々を楽しんだ
そしてその日も村へと行った
だが、幸せな日々はその日簡単に破壊された
村に鬼が襲来したのだ
逃げ惑う人々の中で、私は一人鬼の方へ向かおうとする
しかし
「行ってはダメだ、相手は鬼だぞ!?」
男が私の腕を掴み、止める
だが私は
「私が行かなければ、この村が無くなってしまう。それだけは嫌だ」
私は、男の手を振り切って鬼の方へ向かった
鬼は一匹だけだった、だから私にとっては負けなど無い
「貴様・・・人間では無いな・・・!」
「ああ、私は闇の妖怪だ」
鬼は既に傷だらけで、私に襲いかかる力など無い
「すぐにこの場を立ち去るのなら、命は助けてやる」
「貴様、何故人間を守る?」
「お前には関係の無い事だ」
「甘いな。貴様のその甘さが、何れその身を滅ぼす事になるぞ」
鬼はその言葉だけを残し、その場を去っていった
一件落着である
しかし、私はもうこの村に戻ってくる事は出来ないだろう
何故ならばーー
「あいつも鬼の仲間じゃあ!」
鬼を逃す所を村人に見られたのだ
村人達が少しずつ集まってくる
「鬼の仲間め!この村から出て行け!」
ーー最悪だな
これでまた、私は居場所を失った
だが、その中で一人私に近づいてくる者がいた
・・・あの男だ
「ちょっと待ってくれ!話を聞いてくれ!」
必死に私と村人達の間に入り叫ぶ
・・・この男はなぜ私の為にここまでしてくれるのだろうか
「あやつもきっと鬼の仲間じゃ!出て行け!」
私と同じ様に村人達が男に罵声を浴びせる
このままではダメだ
私はゆっくりと男に近付き、男にだけ聞こえる様に
「私は大丈夫だ。・・・今まで、ありがとう」
私は男の首筋に手刀を入れ、気絶させる
そして村人達に向かって、鬼の仲間を演じ切る
せめてこの男に迷惑をかけない様
「ばれてしまっては仕方が無いな。この男も、もう操る意味は無い。ここを去るとしよう」
私はまた、居場所を失ったーー
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翌日
私は小屋を去る準備をしていた
もう直ぐにここを出なければ、村人に見つかってしまうかもしれない
あの男はどうなったのだろうか
私のせいで、迷惑を掛けてしまった
また会いたいがーー
やはりそれは叶わないだろう
そして準備を終えた私は小屋を後にする
が、その時
カーン、カーンと、村の方向から甲高い鐘の音がする
「何だ!?」
私は直ぐに村の方へ向かう
村人に見つかるのはマズイが、村に危険があるのなら放ってはおけない
村に着いた私が見たものは、地獄絵図だった
あちこちから炎が立ち込め、人の死体もーー
一体誰が・・・
見回してみれば、鬼の姿がちらほらある
昨日の今日でもう報復に来たのか・・・!
「ああ・・・」
これは私のせいだろう
あの鬼を昨日のうちに殺してしまい、私がこの村を離れていてもいいから見ていれば・・・
・・・あの男はどうしたのだろう
その時ーー
「うわああぁぁぁぁ!」
ーー叫び声が響く
・・・今の声は・・・
私は声のする方へ走る
そして着いた先には
「ふん!」
少し先で金棒を振り下ろす鬼の姿とーー
ーーその金棒で吹き飛ばされたあの男の姿だった
「あ・・・」
吹き飛ばされた男は、私の直ぐそばで転がる
「おい・・・」
呼び掛けると、私に気付き、かすかに唇を動かし男は私に言う
「・・・よかった、もう、会えないかと思ってた・・・」
こんな再会は・・・嫌だ・・・
「私の所為で・・・すまない・・・」
「なんで、アンタの所為になるんだよ・・・?」
私の目元から涙が溢れてくる
その時私は思った
私はこの男の事を好きだったのだろう
「前に・・・なんでここまでしてくれるのかって・・・聞いて来ただろ・・・?」
「もう、無理して喋るな!傷口が開いてしまうだろう・・・!」
血が出て止まらない
それなのに、この男は私に何かを伝えようとする
「俺さ・・・アンタに助けられたとき・・・アンタの事ーー」
私は男の手を強く握る
その後、一言残した男は力尽き、私が握っていた手が地面へと落ちるーー
「・・・」
「お前が昨日俺たちの仲間に怪我させたって言う妖怪か」
「・・・」
「おい!集まれ!こいつに昨日の報復をしてやろうぜ!」
「・・・まれ」
「お?なんか言ったか?びびっちまって声も出ねぇのかぁ?」
『ギャハハハハハハ!』
「黙れと言ったのが聞こえなかったのか?」
闇が剣の形へと姿を変えていく
そして私はその剣を握り、振るう
「!」
私の一番近くにいた鬼が真っ二つになる
「なんだ!?」「ヤバイ!早く逃げろ!」
鬼達が逃げ惑う
がーー
「逃がさんぞ?」
もう私は自分を抑えられないーー
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「・・・」
「その墓は、誰の墓?」
「・・・私の大切な人の墓だ」
「そう・・・貴方は凄いわね、餓鬼を全部で23匹たった一人で片付けるなんて」
「・・・お前は何者だ」
「自己紹介がまだだったわね。私は八雲紫。貴方は?」
「名前など無い」
「そう。処で、貴方にぴったりの場所があるんだけど、私と来ない?」
「ぴったりの場所?」
「貴方達妖怪が住む、人間達とは隔離された場所。『幻想郷』」
「・・・幻想郷」
「どうする?」
「・・・行こう」
「ふふ、そう言うと思ってたわ。だけど、名前が無いと不便ね」
「・・・」
「私が付けてあげるわ」
「ラテン語で、『光の芸術』という意味の『ルーミア』なんてどうかしら?」