東方蓮魔境   作:我が名はヤマト

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七話 蓮

「・・・?」

私が目覚めた時、そこは建物に挟まれた狭い道だった

ここは何処で、私は誰で、何をしているのだろう?

何も分からない

私はそれが怖くて怖くてたまらなかった

目に入ってくるのは薄汚い硬い細道

耳に入ってくるのは雑音だらけの喧騒

鼻に入ってくるのは廃棄物の突く様な臭い

ただ一つだけハッキリと分かるのは

「・・・こんな時間・・・」

夜空を見上げた時に頭の中に感じる秒刻みの時間と私の座標

私はどうすればいいのだろう

「・・・」

この細い道の外に出る勇気が出ない

外は見た事が無い様なキラキラした光と、恐ろしい程の人の数

私がその場から動けない間に、雨が降り始める

その雨は次第に強くなり、私の体に打ち付ける

「・・・寒い・・・」

私はこのままここで死んで行くのだろうか?

早くこの不安から解放されたくて、それでもいいと思った

だが、目を閉じた私にそっと傘が被さる

目を開ければ、初老のお爺さんが私に傘を被せてくれていた

「・・・?」

私がそのお爺さんの方を見れば、その人は優しく微笑み

 

「大丈夫かい?お嬢ちゃん。行き場が無いのならワシの家に来んか?ここで野垂れ死ぬよりもマシじゃろうて」

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

そのお爺さんは、宇佐見と言う名前らしい

宇佐見さんについて行けば、大きな日本建築の屋敷に着いた

この人も、一体何者なのだろう

単純にお金持ちなのだろうか?

「お前は記憶がないのじゃろ?」

私はその問に一つコクリと頷く

「・・・ならばしばらくワシの家にいるがよい、ワシが面倒を見てやろう」

「・・・何故?」

「何故じゃと?」

何故どこの誰だかも分からない私の面倒を見てくれるのだろうか

「お前、名前は?」

私は首を振る

「・・・そうか。何故かと言ったらな、ワシは人間が好きだからじゃよ」

・・・それとこれとはどういう関係なのだろう

「例え通り掛かっただけだとしても、お前を探していたとしても、生命の危機に瀕した人がいれば、それだけで助ける理由になるんじゃよ」

「・・・」

この人は一体、何を見て生きているのだろう

何を成そうとするのだろう

この人の目の奥には何か光る物がある

「お前は名前を覚えてないと言ったな?」

「・・・」

「ならばお前には名前を付けてやろう」

名前を?

「あの汚い路地に居たから」

そこで一区切り置いて

 

「大きな蓮の花を咲かせるよう、『宇佐見蓮子』だ」

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

それから数日たち私は、宇佐見蓮子として生きる事になった

と言っても、外には殆ど出ずに家のなかで過ごしている

私はこの世界の事が全く分からず、毎日毎日宇佐見さんに色々なことを教わっていた

「なんじゃ、料理は出来るんじゃな」

「・・・」

分からない中にも、いくつか体に染み付いていることはあった

料理みたいな生活に必要なことは、記憶を失う前にも私はやっていた様ですぐに覚えた

「いただきます」

「・・・いただきます」

作り終えた料理を運び、宇佐見さんと2人で食べる

「なあ、蓮子。ワシには子供などいなくてな。お前の事は実の娘だと思っておる」

「・・・」

「だから、もう少しお前の思っておる事を口にしたらどうじゃ?」

私が思っていること・・・

宇佐見さんはいい人だ

私を拾ってくれた

私が思うのは・・・

 

「・・・ありがとう・・・」

 

私の言葉に宇佐見さんはいつもの優しい微笑みで

「・・・そうか」

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

私はその後、うまく生活できるようになり外にも行けるようになっていた

「・・・これは何?」

「それは自動販売機じゃよ。無人で飲み物を売っておる」

外には見たことが無いものが沢山あって、とても眩しい世界

「・・・じゃあこのグルグル回ってるのは?」

「それは床屋の看板じゃな」

なんでこんな物を・・・

確かに目を引くから、看板としてはいい役割を果たしているが

「蓮子は覚えが早いからのう」

「・・・そう?」

私は毎日家では勉強をしている

宇佐見さんは頭が良く、沢山の事を教えてくれた

最初は足し算や引き算だったが、今は中学校と言う学校の教科書を終えた所だ

大体の事は1度聞けば覚えるし、すぐに進んでいく

そして日課の散歩を終えて家に帰る

また今日も勉強だ

勉強が苦だと思ったことは無い

知らない知識を得るのはいい事だと思う

「・・・あの」

「ちゃんと誰を読んでいるのか分かるように声を掛けないと、誰も振り向いてはくれんぞ?」

前を行く宇佐見さんは振り返らずに言う

「宇佐見さん」

「お前も宇佐見じゃろ」

「・・・お義父さん・・・」

渋々私はお義父さんと呼ぶ

すると上機嫌でお義父さんは振り返る

「なんじゃ?」

「・・・今日はなんの勉強?」

「そうじゃな、今日は物理をやるかの」

物理は私が一番好きな教科だ

私の知らないこの世界の摂理を解いていくのは面白い

そして私は今日も勉強を教えて貰う

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

そんな生活が一年半ほど続いた時

私はお義父さんとの生活にもなれ、勉強も殆ど専門的な学科になっていた

それを全て教えられるお義父さんは何者なのか

まあ、そんな事は今更だけど

「・・・そろそろじゃな・・・」

お義父さんのそんな呟いが聞こえた

「蓮子、大学に行くつもりは無いか?」

「大学?」

「うむ。お前の頭脳ならば余裕だろう」

大学かぁ・・・

「もっと広い世界を見ろ、そして自分の記憶を自分で見つけるんじゃ」

「でも私は・・・」

「安心せい。力さえついておれば合格できる」

そうは言ったって・・・

どこの大学に行けばいいのだろう

勉強は一通りしたが、大学についてはあまり詳しくない

「ワシは、京都のとある大学に行くのがいいと思うのう」

「きょ、京都・・・?」

ここは東京と言う地名らしい

そして京都はここからかなり離れたところにある地名だ

となると・・・

「一人暮らし?」

「そうなるのう」

正直言って自分一人で生活するのは厳しい

大体の常識は備わったつもりだが、全てを一人でとなると・・・

だけど、私は多くの世界を見たい

その先に、私の記憶がある気がする

 

「私、大学に行くよ」

 

「そうか・・・」

お義父さんは、私の答えに微笑み、そして少し寂しそうな顔をした

そして私は、自分の部屋に戻った

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

「これで良かったのかのう・・・」

「ああ。・・・すまないな、辛い役を押し付けて」

「たかが人間の小娘一人位では何とも無いわい」

「そうか・・・それにしては寂しそうな顔をしているな?」

「・・・おヌシも冗談を言ってないで、幻想郷にもどったらどうじゃ。準備が必要なんじゃろ?」

「そうだな、後のことは私に任せろ」

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

大学の受験は通ることが出来た

私が行く事になった学校は、地元では結構な有名校らしく沢山の人が居た

そんな大学生活が少し続いた時、とある学生に出会う

その学生は、私を見るなり微笑みーー

 

「やっと見つけた」

 

 

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