既に会った事のある人はお久しぶり。
今回は神のみを大胆にいじってみました。
少しでもお楽しみ頂ければ幸いです。
プロローグ
亡霊対策室長、ドクロウ・スカールはかつてないほど悩んでいた。
悩んでいたというより、どうすれば良いか分からずに途方にくれていた、というのが正しいか。
彼女は、
そして、ある理由から一人の悪魔を駆け魂隊に入れようとしている、と言うか入れなければならないのだが……それには大きな障害があった。
駆け魂隊とは、地獄から脱走した悪魔の罪人の魂……駆け魂を捕縛する為の組織である。
駆け魂は人間の心の隙間に逃げ込むので、捕獲が極めて困難である。
心の隙間を埋める事で駆け魂を追い出し、そして捕縛する。
心の隙間を埋める行為は原則として人間の
で、駆け魂隊に入れなければならないある一人の悪魔、『エリュシア・デ・ルート・イーマ』なのだが……捕縛に必須の道具である『勾留ビン』を使う事ができないのだ。
彼女は落ちこぼれの部類ではあるが、それだけなら何とか強引に入れる事もできるのである。しかし勾留ビンが使えないのは致命的である。
捕縛ができない状態で駆け魂を追い出しても意味が無い。また他の人間の心の隙間に隠れるだけだ。
それだけならまだ良い、いや、良くは無いが……最悪の場合は力をつけた駆け魂が実体化して復活する事も考えられる。
……捕縛だけは他の悪魔にやらせる? いや、勾留ビンが使えないとバレたら一発でクビだろう。
(どーすりゃいいの、コレ……)
故にドクロウは悩んでいた。
何の解決策も無いまま数時間が経過し……彼女は決断した。
「そうだ、ビリーズブートキャンプでも見て気分転換しよう」
まさかの棚上げである。丸投げでないだけマシか。
彼女が使っているテレビは特別製で、人間界の電波をも受信している。
チャンネルを切り替えてビリーズブートキャンプを探す。
彼女の外見はマントを羽織った骸骨であり、鍛える必要も痩せる必要も微塵も感じないのだが……そこは本人にしか分からない問題があるのだろう。きっと。
「……あれ? やってない?」
どうやら特番で潰れているらしい。
若干イラつきながらも適当にチャンネルを回す。
「…………!!」
そして、一つのチャンネルで止まる。
「そうか、この手があったか!!」
その後いくつか調べ物をし、計画に修正を加えていく。
「……よし、これで完璧だ!」
つい今しがた作成した書類を持って、彼女は部屋を駆け出した。
つけっぱなしのテレビには何かの歌番組が流れていた。