プロローグ
僕の名は桂木桂馬。
不完全で不条理な
しかし、1週間ほど前に事情が変わった。
地獄の悪魔とワンクリック詐欺のような契約をさせられて
まあ、それは良い。もう終わった話だ。
当面の問題は……
「初めまして! 桂木エルシィです!
お兄様の桂馬ともども、よろしくお願いします!!」
あの悪魔が僕の妹を名乗って学校に乗り込んできやがった事だ!!
驚きすぎて反射的に中川にメールを送ってしまったぞ!!
「おいオタメガ、あんなのどこに隠してたんだよ!!」
「あんな可愛い妹が居るなんて聞いてねぇぞ!!」
僕も初耳だよ。
ちくしょう、何で僕がこんな目に遭うんだ!!
……放課後……
授業が終わると桂馬くんがそそくさと教室を出て、それにエルシィさんがついていく。
どうしよう、私も一緒に行った方が良いのかな? でもこれ以上放課後の空き時間を確保しようとすると岡田さんに迷惑が……
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あ、電話だ。
「もしもし? 岡田さん?」
『かのん! 無事!?』
「え? はい」
『良かった。1週間くらい前の爆弾騒ぎ、覚えてる?』
「え? そんなのありましたっけ?」
『テレビ局の前の地面が抉れて、芸能人の誰かを狙ったテロなんじゃないかって、そういう事件があったのよ!』
「え、そうだったんですか!?
……あれ?」
テレビ局前の地面の抉れ、凄く心当たりがあるんだけど……
『それで、こんどはあなたが住んでるマンションの前に同じような跡があって、あなたが狙われてるんじゃないのかって話になってるのよ!!』
「…………」
岡田さんゴメンなさい。犯人は私なんです。あとエルシィさんも。
『そういうわけなんで、今のマンションは危険だわ。今日の仕事もキャンセルよ。
急遽別の家を用意しようと思うんだけど、すぐには見つからないから今日の分だけでもお友達の家とかに泊まれないかしら?』
「そういう事なら分かりました。相談してみます」
『お願いね。気をつけてね』
「はい、失礼します」
……どうしよう? 真相を言った方が良かったのかな……?
でもそうなると理由や手段を訊かれそうだし、悪魔が云々なんて説明するわけにもいかないし……
……この秘密は墓まで持っていこう。
それじゃ気を取り直して、誰かお友達に相談を……あれ?
……も、もしかして、お泊まりを頼めるような友達って、居ない?
い、いやそんな事は無いはずだ! だって、メールアドレスの『友達』の欄にも……
『桂木桂馬』
……これしか、無かった。
どうしよう? 岡田さんに相談するか、桂馬くんに相談するか。
えっと、えっと……あ、そうだ! エルシィさんの件も聞きたいし、桂馬くんに相談してみよう! よしそうしよう!
さっき出て行ったばっかりだから、急げば追いつけるかな。