もしエルシィが勾留ビンを使えなかったら   作:天星

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 投稿が途絶えてから10日しか経ってないのに何故か書けてしまった……
 そういうわけで投稿再開です!




理想への先導者
プロローグ


 エルシィさんは地獄の特訓合宿へと旅立った。

 

 あ、私の仕事をエルシィさんに押しつけたわけじゃないからね?

 岡田さんから『あっちの方のかのんを連れてきてね』とわざわざ言われたのだ。

 岡田さんも棗さんも『悪魔が変装した替え玉』とまでは見抜いてないだろうけど、『何か2人居る』って事には気付いてるみたいだ。

 むしろ今までバレなかった方が不思議……いや、今までも薄々勘付かれてたね。岡田さんが優しいからスルーしててくれただけで。

 

「そういうわけだからしばらく学校に通うね」

「……そりゃ気づかれないわけが無いな。数週間ならともかく、もう数ヶ月か?」

「そうだね」

 

 私にとっては貴重な登校日だ。

 桂馬くんとのカラオケボックスでの週末デート……もとい、勉強会のおかげでテストは余裕だと思うけど、それでもきちんと授業を受けておきたい。

 

 

 

 

 

 

 突然だけど、私は学校が好きだ。

 学校は同年代の少年少女たちが教室という狭い空間で何年も過ごす場所。大人になってしまうともう二度と経験できないような場所だ。

 って、子供時代を懐かしむ大人みたいな事を言ってみたけど、私もまだ一応高校生なんだけどね。

 

「おーす、おはようエリー!」

「おはようございます、ちひろさん!」

 

 でも、普通の高校生活を送る事ができないっていう意味では私も大人と同じだ。

 エルシィさんと入れ替わるなんていう非現実的な事をやってなければ今年は殆ど学校に来れなかっただろう。

 

「エリー、今日の放課後空いてる? バンドの特訓やりたいんだけどさ」

「大丈夫ですよ~。頑張りましょう!」

 

 ほら、こうやって部活……ではないけど、一緒に何かにチャレンジしたりできる。

 前に桂馬くんが『学校はイベントの宝庫だ』みたいな事を言ってた気がするけど、よく考えてみると凄く納得できる言葉だ。

 『中川かのん』として参加できないのは少し残念だけど、精一杯楽しませてもらおう。

 

「あ、そうだエリー、あの話知ってる?」

「何ですかぁ?」

「何か今日から教育実習生が来るらしいよ」

「? きょーいくじっしゅー?」

「あ~っと……要するに、先生の卵が勉強しに来るってコト。

 確か、鳴沢なんとか大学の学生さんが副担任みたいな感じでうちのクラスに来るらしいよ」

「あっ、なるほど。流石はちひろさんです! 情報が早いですね!」

「まあね~」

 

 ……あっ、エルシィさんだったら『先生の卵』の意味すら分からずに混乱してるかもしれない。少し失敗したかも。

 にしても教育実習生かぁ。

 センサー、鳴らないよね?

 

 

 

 

 

 

 

「そういうわけで、私の後輩が教育実習にやってきた。

 しばらくは副担任としてこのクラスについてもらう」

 

 二階堂先生が連れてきたのは先生よりも少しだけ背の低い女性だった。大体私と同じくらいの身長かな。

 

 手元の駆け魂センサーを確認してみたけど、鳴り響く様子は無い。

 よく考えたら、今までの駆け魂は高校2年生にしか取り憑いてないんだから心配する必要も無かったかな。

 

「ほれ、自己紹介」

「……あっ、はい。長瀬純です!

 鳴沢教大の4年生です!

 尊敬する人はジャンボ鶴間です!

 皆さん、宜しくオーねがいします!」

 

 ジャンボ鶴間……響きからしてプロレスラーか何かかな? ちょっと聞いたことが無いかな。

 にしても、何か若干間があった? 普通は先生に促される前に自己紹介しそうなものだけど……緊張してるのかな?

 ……いや、違う。単に気をとられてただけだ。

 

 教室のほぼ真ん中で堂々とゲームをする桂馬くんに……

 

 このクラスの人たちにとっては桂馬くんが堂々とゲームしてる姿なんて日常と化してるけど、外から来た人が見たらそりゃそういう反応するよね。

 こっそり隠れてやるならまだしも完全に開き直ってるもんね……

 

 だけど、大丈夫かな? 長瀬先生が単に物珍しさから見てるだけなら問題ないけど、ゲームやってる事に怒ったり、あるいは心配したりしてる場合がちょっと心配だ。

 未来ある教育実習生の人があんな神様じみた問題児を相手にして折れなきゃいいんだけど……







 ようやく2年以外が来ましたよ。そういう訳なんで長瀬先生編、始まります!
 しっかし、期末テストも近い時期に教育実習生が来るものなのだろうか……?

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