ハーティックさん、
ドラレンジャーさん、
感想ありがとうございました!
では、スタートです。
プロローグ
~前回までのあらすじ!~
妹となる私を雑に扱う神様。
だけど、私のデキる妹アピールによりついにデレてくれました!
ここから私の快進撃が始まるのです!!
……と、思っていたのですが……
ドロドロドロドロ……
なんと、歌姫さまに駆け魂が。
一体どうなってしまうんでしょうか……?
「というわけで、どうやらお前の中に駆け魂が居るらしい」
「えぇっと、そのセンサーの誤作動とかそいういうのじゃないよね?」
「どうなんだ? エルシィ」
「今調べてみてますけど、特に異常は見当たらないですね。
念のため室長に送って見てもらいましょうか? ちょっと時間がかかりますけど」
「いや、そこまではしなくていい」
とりあえず異常が無さそうなら、中川に駆け魂が居るという前提で動いた方が良い。
駆け魂を放置なんてしていたら……
「……あれ? 駆け魂を放置したらどうなるんだ?」
「あれ? 言ってませんでしたっけ?」
「悪人の魂だという事しか聞いてないな。だよな?」
「うん、そうだね。何か悪者だから倒そう……ってくらいしか」
「そうでしたか。えっとですね。駆け魂を放置すると育ってゆき、やがて隠れた女の子供として転生します」
「……なんだと?」
「え、エルシィさん、それ、どういう事?」
「だから、宿主の子供として転生します。今回の場合ですと姫さまの子供として……」
「おい止めろ!!」
「へ? あっ!」
中川は体を抱いて震えていた。
自分の体に悪いものが取り付いているだけならまだしも、それが自分の子供として産まれてくるなんて耐えがたい恐怖だろう。
詳細を訊いたのは本人だが、サラリと話すような事では決して無い。
「大丈夫か?」
「……うん、大丈夫、だよ」
どう見ても大丈夫なようには見えないが、ここで僕が何か言っても効果は薄いだろう。
今は……とにかく情報を集めるぞ。情報次第で取れる選択肢も変わってくる。
「中川、僕はこれからこのアホ悪魔を問い詰めて情報を引き出す。
駆け魂についての情報、聞くのが辛いなら部屋に戻っていてくれ」
「……一緒に居させて」
「……分かった。辛くなったらすぐに言うんだぞ」
「あ、あの……桂馬くん」
「どうした?」
「あの……手、握ってて欲しいの」
「……」
エルシィがサラリと言ってのけた駆け魂に取り付かれた人間の末路は中川にかなりの衝撃と絶望を与えたようだ。
しっかりと手を握る。
それからエルシィに問いかける。
「エルシィ、駆け魂の潜伏期間はどれくらいだ? どれだけの猶予がある?」
「えっと、そうですね……個体差もありますし、駆け魂が潜んでからどれだけの時間が経過しているかも分からないのでハッキリした事は言えませんけど、妖気が出ている気配はほぼ無いので軽く1ヶ月は大丈夫だと思います」
……意外と余裕があったな。
一週間くらいかと勝手に想像してた。
「だそうだ。少しは安心できるな」
「……うん」
本当に少ししか安心できないな。
時間に余裕ができただけで、現状は全く変わってないからな。
「駆け魂を追い出す為の手段は……」
「もちろん、『恋愛』です!」
「だよなぁ……」
中川と恋愛かぁ。
しかし可能なのか?
恋愛をしなければ死というある意味で打算しか入ってない関係を理解した上での恋愛なんて……
「……ん? 待てよ? アレが使えるのか?」
「どうしたんですか神様?」
「中川を攻略する為のルートについて考えていた」
「るーと?」
「お前、ルートも分からないのか。そうだな、折角だから説明してやろう。
中川、お前も聞いておくと良い」
「え? う、うん。
……え? あの、私が聞いても良い事なのそれ?」
「普通なら良くはないが、今回は別だ」
多少は余裕が出てきたかな?
このまま少しずつでも安定した状態に戻しておきたい。
駆け魂が追い出せるかは僕の攻略の成否にかかっている。不安を見せないように理路整然と説明して行けば回復していくはずだ。
「では、ルートについてだったな。
本来の意味は選択肢による分岐から発生するグッドエンドルート、バッドエンドルートなどを表す『道』だが、今回僕が言ったのは『ヒロインの属性に依存する定式化された攻略手法』の事だ」
「定式化?」
「ぞくせい?」
「エルシィ、お前はそこからなのか。
属性ってのは例えば幼馴染属性とか、妹属性とか、アイドル属性とか、攻略ヒロインのキャラ付けの事だよ」
「なるほど! 神様、『び~えむだぶりゅ~』がどうとか言ってましたね!」
「まあそういう事だ」
妹が妹である為の基本条件であるBMWの事だな。
「それで、『定式化された攻略手法』っていうのは?」
「キャラの属性次第では同じようなイベントが発生するんだ。様式美と捉えるかワンパターンと捉えるかは意見が割れるがな。
例えば幼馴染であれば主人公の部屋に入って寝坊してる主人公を叩き起こすだとか。
他にも色々あるが、押さえておくべき重要なイベントが多数ある」
「……現実じゃ考えられないね」
「だから
他にも、妹属性なら兄に料理を作ったりする。その味は……ケースバイケースだが」
「分かりました! 明日も頑張ります!!」
「お前は頑張らなくていいんだよ!!
アイドルであれば……そうだな、大団円の直前のコンサートでプレッシャーに耐えきれずに逃げ出し、それを主人公が追いかけて励ますとか」
「いやに具体的だね」
「それが定番だからな」
「うーん、まあいいや。
それで、私はどうなるの? その『アイドルルート』で攻略されるのかな?」
中川は現役アイドルであり、そのルートに則った攻略が一番分かりやすいだろう。
だが、今回は違う。
「僕も最初はそう思ったが、この状況にもっと適したルートがある」
「……?」
「それは……『許嫁ルート』だ!!」
言葉「許嫁ルート……私の出番ですね。
理論上最適なルート構築をしてみせましょう」
許嫁という言葉は原作者さんの若木先生の新作から持ってきました。
あれが無かったらこの展開は考えなかったでしょうね。