では、スタートです。
プロローグ
バンドメンバー5人が揃ったあの日から数週間後、舞島市の某所にある貸しスタジオにて。
私たちはいつものように練習をしていた。
「ジャーンっと。どうよ! 今の演奏は中々良かったんじゃない?」
「じゃないですか?」
ドラム 兼 指導役 兼 お嬢様の結に向かって4人揃って期待の眼差しを向ける。
え? 最後のは余計? 細かい事は気にしない!
「ふむ……大分良くなってきたように思います。
この調子で精進して参りましょう」
「うへぇ……もっと上を目指さなきゃならないんだね」
「当然です。音楽の道に終わりは無いのです」
結の指導は厳しいけど上手だ。
前に本人が言っていたように担当は打楽器だから別の系統の楽器に関しては突っ込んだ事は流石に知らないけど、音楽全般に関する知識ならいくらでも教えてくれる。
そして、志も高くて常に上を目指そうと頑張ってくれるのだ。
「……これなら、次のステップに進んでも良いかもしれませんね」
「次?」
「はい。皆さんも基礎練習と時々演奏だけでは飽きてしまうでしょうし、ちょっと別の事をやってみましょう」
「別の? どゆこと?」
「端的に言ってしまうと……私たちで部活を作ろう、という事です」
「……??」
言っている意味がよく分からなかった。いや、日本語は理解できるけどその内容がイマイチ分からない。
他の皆も同じような顔をしている。エリーだけはいつも通りだけど。
「皆さん、顔に『良く分からない』という文字が浮かんでいるようですね。
それでは、1から説明していきましょう。
私たちが通う舞島学園では部長、副部長、会計の3人が居れば部活を申請する事ができます。
他の条件として部活の取りまとめをしている教員の方に許可を取る必要はありますが……ここは気にしてもしょうがないので条件はクリアしています。
部活動を申請する事によるメリットは2つです。
一つ、部活動であれば部室が貰えるので、私たちの活動拠点が確保できる事。
一つ、文化祭などでステージの確保がしやすくなる事。
特に活動拠点が得られる事はかなりのメリットでしょう。場所代も移動時間も節約できますから。
デメリットとしては目立った活動ができないと取り潰されて先生方に悪印象を与えてしまう事ですが、これは問題ないでしょう。
今更『ステージに立ちたくない』とか『演奏が恥ずかしい』といったような事を言い出す軟弱者は皆さんの中には居ませんからね。
以上の理由から、私たちの部活『軽音部』の申請を行う事を提案致します」
やたらと長いセリフだったけど、メリットがある事は十分理解できた。
部活、かぁ……よし。
「私は良い案だと思う。皆は?」
「やりましょう!! 軽音部ですよ! 軽音部!!」
エリーはすぐに返事を返してくれた。軽音部に何か思い入れでもあるのだろうか?
それに対して、歩美と京は渋い表情をしている。
「良い案だとは思うんだけど……」
「何か問題があるの?」
「私と歩美、陸上部なんだよね。その辺は大丈夫かなぁ……」
そう言えばそうだった。
歩美は勿論、京も陸上部だ。軽音部との兼部なんてできるのだろうか?
しかし、我らが結お嬢様はその辺の事もしっかりと考えていた。
「それは問題ないでしょう。
我が校の校則では兼部を禁止するような記述は見当たりませんでしたから」
「……それ、単に書き忘れてるだけじゃないの?」
「その場合は理事長に直訴します。顔見知りなので私から頼めば何とかしてくれるでしょう」
「サラッと凄い事言ったよね!?」
流石はお嬢様だ。理事長と知り合いって……
「ただ、恐らくは大丈夫でしょう。書き忘れたような書き方ではなかったので。
あと、最終手段として歩美さんと京さんを抜いて申請するという手もあるので心配する必要は無いですよ」
「そういうコトなら賛成だよ」
「私もOK」
歩美と京の賛同も得られた。
「それじゃ、明日にでも早速申請に行こう!
あ、そう言えば文化部の担当って誰だっけ?」
「確か、児玉先生だったと記憶しております」
「…………うぇ?」
原作では歩美も京さんも何事もなかったかのように軽音部に所属していますが、舞高の部活のシステムはどうなってるんでしょうね?
とりあえず特に縛られてないとしましたけど……
部活の最小人数ってどれくらいでしょうね?
少なすぎたら同好会や愛好会……というツッコミは置いておいて、それらの団体の最小人数とは。
3人くらいでギリギリかなとしておきます。