もしエルシィが勾留ビンを使えなかったら   作:天星

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 前話の感想で「女子空手部は主将1人だけだね」みたいなコメントを頂きました。
 そしてよく考えると月夜も多分だけど天文部1人だけ。
 ひとまず『申請』には3人以上必要だけど、廃部の条件は相当緩いとしておきます。

 ……天文部を建てようとする人が3人も居たのだろうか? いや、考えないでおきましょう。

 では、スタートです。




01 部室を求めて

  そして、次の日の放課後!

 

 

 

「却下」

 

 私たちの魂を込めた部活登録申請は児玉のヤローにアッサリと却下された。

 

「なーにが軽音楽部だ! 学校は遊ぶ所じゃないぞ!!

 そんな事よりもうすぐ期末テストだ! しっかり勉強しろ!!」

 

 確かに期末テスト前に申請なんてしたら色々と面倒なのかもしれないけど、そんな風に言うことは無いだろう。

 やっぱり児玉のヤローは児玉だった!

 

「大体、お前たちみたいに一時の思いつきだとか、思い出作りだとか言って部活を作ろうって奴らは山ほど居るんだ!

 声優研だとか、カードファイト部だとか、ライトノベル研究会とか、そんなのいちいち認められるか!!」

 

 そこまで言うか!? なら私も言ってやろうじゃないか!!

 

「そんなニワカどもと私たちを一緒にしないで!

 私たちのバンドへの熱意はハンパじゃないんだから!!」

『そーだそーだ!!』

「ホーウ? そこまで言うか。

 ならば、お前たちの『覚悟』を見せてもらおうか」

 

 そこで児玉はようやく私たちに向き直り、こう告げた。

 

「期末テストの私の英語の科目でお前たち全員が100点を取れたら認めてやる!

 達成できなければ補習!!」

「「「失礼しました!!!」」」

 

 当然、脱兎の如く逃げ帰った。

 

 

「……あ、私たちも一旦失礼させて頂きますね」

「失礼します」

 

 

 結と京は私たちから少しだけ遅れて帰ってきたみたいだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「予想外の条件を出されましたね」

「いや、確かにバンドにはかけてるよ? でもそれと勉強とは話が違うと思わない!?」

「100点って、そもそも最初っから認める気無いよね……?」

 

 勉強が学校の本分で、部活をやる前にそっちをしっかりとしろという理屈は分からないでもない。

 しかしこれはいくらなんでも極端過ぎるだろう。

 

「ちなみに、皆さんの前回の試験における英語の点数は……」

「82。頑張れば何とかならなくもない点数ではあるけどね」

 

 京が、京だけが堂々と答える。

 

「それくらいであれば100点満点とまではいかずとも90点台までなら何とかなるのではないでしょうか?

 完全に認めさせるのは無理でも交渉材料にはなるでしょう」

「あ~、うん。私は何とかできると思う。私は」

 

 

「…………」ちひろ() 68点

「…………」歩美 35点 (赤点まであと2点)

「…………」エリー 18点 (赤点)

 

 

「……あいつらが無理」

「無理って言うなよ無理って!!

 私は日本人なんだ!! 英語なんてナンボのもんじゃい!!」

「そーだそーだ!! 私たちは日本人だ!!」

「そーです! 獄語があれば平気です!!」

 

 文句を言う私たちに対して、結が優しく告げる。

 

「確かに、英語を将来使わないという方もいらっしゃるでしょうね。

 ですが……流石に赤点ギリギリやそれ以下というのはいかがなものかと思いますよ? 部活なんてしてる暇が無いと言われても無理はありませんね」

「ぐぬぬぬ……そういう結はどうなの!?」

「そ、そうです! 結さんの点数はどれくらいだったんですか!?」

「私ですか? 前回は98点だったと記憶しております」

「「「裏切り者ーー!!」」」

「いや、裏切ってないですから」

 

 くっ、この腹黒お嬢様め! 自分だけ90点台をとっておきながら『せめて90点台なら何とかなる』とか言っちゃって!

 結には私たちみたいに持たざる者の苦しみが分からないんだ!!

 

「成績の事はひとまず置いておくとして、これからどういたしましょうか?

 部活を作るのか作らないのか、作るとしてもどのように作るか」

「え? 作り方なんてあるの?」

「理事長に直接掛け合えば期末テスト後なら何とかなるでしょう。

 それでも、ある程度の成績の改善はすべきでしょうけど」

「う~ん、できれば使いたくないんだよね?」

「はい。できる事であればなるべく自力でやるべきでしょう。

 『コネで作った部活』等と後ろ指を指されないとも限りませんし」

「それは……嫌だね」

 

 詰まるところ、私たちには現状3つの選択肢があるみたいだ。

 

 ① 正攻法で児玉を倒す。(目標全員100点。最低でも90点以上)

 ② 結のコネを使う。(それでも勉強は必要。歩美とエリーが50点くらいまで行けば大丈夫かな? 私も頑張りを見せた方が良さそう)

 ③ 部活申請を諦める。(これなら勉強の必要は無くなるけど不便)

 

 こんな感じかな。

 まず、諦めるのは嫌だ。やっと見つけた輝けるものなんだ。やるなら全力で挑みたい。

 そうなると、残り2つのいずれかで、結局は勉強も必要で……

 

「……勉強、しますか。まず全力でやって、その後考えようよ。

 皆はどう思う? 京と結は聞くまでもなさそうだけど……」

「当然、100点を目指しますよ」

「満点はちょっとキツいけど……何とかやってみるよ」

 

 優等生組は当然のように頷いてくれた。

 残るは赤点組だけど……」

 

「ちひろ!? 私はギリギリ赤点じゃないからね!?」

「あれ? 声に出てた?」

「出てたよ!

 私もやるなら全力で頑張るけど、100点はちょっと……」

「わ、私も無理ですぅ……」

「歩美もエリーもやる気があるなら大丈夫。皆で頑張って何とかしよう!」

 

 ひとまず、勉強を頑張るという方向で統一できた。

 それは何よりだけど、まだ問題もある。

 

「しかし、100点を取るのは簡単ではありません。

 私が教師役を務めるのもやぶさかではありませんが、それだけでは少々厳しいかもしれませんね」

「そもそも結だって前回は満点を逃してるもんね。確か98点だったよね」

「はい、ケアレスミスで落としてしまいました。アレさえなければ満点だったのですが……」

「ん~……」

 

 それさえなければ100点だったのなら実力的には教師役として十分だと思う。

 だけど、それをやると結の負担も増えるし万全ではない。

 となると……

 

「……ちょっと気は進まないけど、あいつに頼むのが一番か。

 エリー、あいつを呼んでくれない?」

「アイツ? どなたですか?」

「そんなの決まってるでしょ。ロクに授業も聞いてないクセに、児玉のテストはもちろん他のテストでも100点しか取ってない問題児。

 あんたのお兄さんだよ」







 筆者が度々参考にする神のみファンブックの中には各キャラの勉強能力の評価が0~5の7段階で評価されています。7段階です。0と4.5があるので。震度の6強みたいなもんでしょう。きっと。
 今回出てきたキャラの能力値は以下の通り。

 結  4.5
 京  4.5
ちひろ 3
歩美  2
エリー 0

 この話を書く前は結の能力値が5だと勘違いしていたので京さんよりも多い98点としたのですが、実際には同格程度でしたね。
 ただ、ギリギリ100点を逃したくらいが話を進める上で面白そうだったので修正しないでおきました。きっと調子が良かったんでしょう。

 なお他の主要キャラの学力に関しては、桂馬は5、かのんは4となっております。アイドルのこの数値の意味が『学校には通ってないけどかなりの点数が取れる(単純な成績の評価)』という意味なのか、それとも『ちゃんと学校に通っていればかなりの点数が取れる(学習能力の評価)』という意味なのか、その辺は謎です。かのんの素の成績が分かる場面があれば良かったんですけどね。一応本作では後者の『学習能力の評価』として進めています。

 余談として、天理と七香が意外と高くそれぞれ5と4だったりします。ああ見えて実は優等生なのだろうか? 東美里高校は実は進学校だったりとか?

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