もしエルシィが勾留ビンを使えなかったら   作:天星

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結果と得られたもの

 桂木との勉強会から数日後、無事に試験は終わって試験返却も終わった。

 

「諸君、成果はどうだった?」100点

「うん、バッチリだったよ! 桂木の予想ドンピシャ!」100点

「一応怪しそうな所も見といたけど、無駄だったね」100点

「皆さんの話では授業中にゲームばかりしていて授業を聞いていないとの事ですが……

 あれだけの予測ができるという事は聞いてないようでちゃんと聞いているのでしょうね」100点

 

 私たちのうち4人は見事に100点を取る事ができた。

 で、最後の1人、エリーは……

 

「う、うぅぅ……ご、ごめんなさい」

 

 49点。

 

 勉強会が終わった後、児玉と直談判して、ゴネにゴネて、二階堂先生とかの力も借りて、何とかエリーだけ条件を緩くしてもらえたんだよ。

 そのラインが、50点。

 1点、足りなかったみたいだ。

 

「まあしゃあない。取れなかったモノはしゃーないよ」

「これからどうしましょうか? 理事長に直談判してみます?

 この科目だけは赤字予備軍から脱却しているので協力が得られると思いますし」

「うーん……とりあえずもう一回だけ児玉に直談判してくる。皆は待ってて」

 

 というわけで、職員室に行く事にした。

 

 

 

 

 

 

「お願いします!!」

「ダメだ!」

「そこを何とか!」

「ダメなものはダメだ!

 大体、緩めてやった条件さえ満たせてないだろうが!」

 

 取り付く島も無いよ。

 確かに条件は満たせなかったけど、十分覚悟は見せたはずだ。

 私たちの覚悟を試す為にあえて高すぎる目標を出す……なんて人情に溢れた行動ではなかったのは分かってたけどさ。

 

「さっさと帰って勉強でもしてろ! ほら、ハリーアップ!」

 

 児玉は私たちのうち4人が100点を取った事を分かった上で言ってるんだろうか?

 

 そんな不毛な言い争いをしていたら、後ろから声がかけられた。

 

「邪魔だ。どいてくれ」

「あ、ごめんなさ……って、桂木!?」

 

 すぐ後ろに、桂木が立っていた。

 いつも手にしているPFPの代わりに一枚の紙を携えて。

 

「え、どうしたの桂木?」

「……邪魔だ。どけ」

「そんな言い方しなくてもいいじゃん!」

「いいから、どけ」

「う……わ、分かったよ」

 

 有無を言わせぬ勢いで迫る桂木に道を開ける。

 その先に居るのは児玉だけど、何の用があるんだろう?

 

「あン? 何をしにきた桂木」

「……これを出しにきました。確か文化部の主任でしたよね」

 

 桂木が出した一枚の紙。

 チラッと見えたそれには『部活登録申請』と書かれていたようだ。

 

「桂木、コレは何の冗談だ?」

「前から部活は作りたいと思っていたけど、却下されやすいらしいんで諦めてました。

 でも、聞いた話じゃあ部員全員が英語の試験で100点を取れば創部が認められるらしいじゃないですか。

 だから、条件を満たしてきた。それだけです」

「その条件を出したのはそこに居るそいつらだけだが……まあいい。

 訊きたいのはコッチだ。どうして申請する部活名がそこの奴らと同じ『軽音部』なんだ?」

「えええええっ、か、桂木! どういう事!?」

「ん? まだ居たのか、用が無いならサッサと出ていけ」

「あーもう、そこまで言うなら出ていきますよだ!」

 

 おっかしいなあ。桂木はあそこまで嫌な奴じゃなかったはずなのに。

 しかしどういう事だろう、私たちが軽音部を立ち上げようとしているのを知ってて軽音部を申請するって。

 

 疑問に思いながらも職員室を出ると意外な人物を遭遇した。

 一緒に勉強会に参加したあさみんだ。

 

「あれ、こんな所でどうしたの?」

「えっと……小阪さんに伝言?」

「伝言? 私に?」

「うん、桂木君から。教室で待ってて欲しいって」

「……その桂木、今職員室の中に居るんだけど?」

「そうだけど……あれ? 桂木君からまだ例の話聞いてないの?」

「例の話?」

「……話してないみたいだね。とにかく、教室で待ってて。そんなにかからないはずだから」

 

 なんだかよく分からないけど、とりあえず待ってみよう。

 

 

 

  ……そして十数分後……

 

 

「待たせたな。全員揃っているか?」

 

 教室で待っていた私たちの前に桂木が何食わぬ顔でノコノコとやってきた。

 あさみんもその後ろに付いてきている。

 

「桂木! 説明してもらうからね!」

「説明か……これを見せれば伝わるか?」

 

 桂木が突きつけたのは最近よく見慣れた『部活登録申請書』だった。

 半分に折られていて上半分しか分からないけど、児玉の判が押されているらしい事はよく見えた。

 

「で、コレだな。全員に1枚ずつ」

 

 次に配られたのは『入部届』だった。

 私たち全員に1枚ずつ、丁度5枚が用意されていた。

 

「……つまり、どういう事?」

「代わりに部活を作った。

 創部はともかく、入部に教師の印鑑は必要ない。

 創立メンバーは基本的に幽霊部員だからお前たちで自由にやってくれ」

 

 それだけ言い放った桂木は教室から出て行った。

 

「そ、そういう事だから、じゃあね」

 

 あさみんもそれに続いて教室から出て行った。

 残ったのは私たちと入部届だけ。

 

「そういう……事ね。

 そっか、そっかぁ」

 

 私たちが失敗した時に備えてくれていたみたいだ。

 やっぱり優しいよ。桂木は。

 

「よし! 皆、予定とはちょっと違うけど無事に部室が手に入った。

 これからも頑張って特訓しよう!」

「「「「おー!!」」」」

 

 

 

 

 あれ? 部活の創立にはメンバーが3人必要だよね?

 桂木とあさみんで2人、あと1人って誰だろう?

 …………ま、いっか♪







原作と同じような解決策では芸が無いのでこんな展開にしてみました。
他の案としてかのんが申請するとかもあったのですが、その後の展開が恐ろしく面倒になるので断念していたり。

では、あと1本、5分後です。

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