見てない方は1話戻りましょう。
……ちひろが出て行った後、職員室にて……
上手いことそこそこ険悪な雰囲気でちひろを追い出せた。
これなら児玉も僕とちひろが裏で繋がっているとは考えにくいだろう。
「で、改めて訊くぞ?
桂木、コレは何の冗談だ?」
「軽音部の件ですか? 僕も驚きましたよ。
まさか小阪達が作ろうとしていたのが軽音部だったとは」
「あくまでも偶然だと言い張るつもりか?」
「言い張るも何も、僕が
「ムムム……一理あるな」
完全に信じたわけでは無さそうだが、苦虫を噛み潰すような表情をしながらも同意が得られた。
児玉はその表情のまま僕が提出した申請書に目を通す。
「……確かに、この申請書の名簿に記されている名前は全員私のテストで100点を取っている。
部長、桂木桂馬、副部長、吉野麻美と。
ここまではまだ納得できなくもない」
勉強会の終わり際に麻美のノートに少々書き込ませてもらった。
『頼みたい事がある。後で連絡をくれ』という言葉とメールアドレスだ。
その頼みごととは勿論、この件の名前貸しだ。
いざとなったら勉強を教えた事を交換材料にするつもりだったが、事情を話したら二つ返事で了承してくれたよ。
児玉の奴、嫌われてるな。
「だけどな。これはどういう事だ一体!!」
児玉が指し示したのは、会計担当の……3人目の名前。
そこにはハッキリと記されていた。『中川かのん』と。
「どうしてお前如きがアイドルと接点を持ってるんだ?
偽造した申請書なんて受け取れんぞ!」
「偽造じゃなくて本人の直筆だ……なんて言っても信じないんでしょうね」
「当たり前だ!!
仮に本物だったとしてもアイドル活動で忙しい奴が部活なんてできるわけないだろうが!!」
確かにそれは正論だな。
そして勿論、そういう風に突っ込まれる事も考慮済みだ。
だから、一応対策はしてある。
「……あいつ、結構怒ってましたよ」
「ハァ? 何をだ?」
「何をって決まってるでしょう。
学校側がアイツに対してカンニング疑惑をかけた事ですよ」
「なっ、ななな何故お前がそれを知っている!!」
「本人から聞いたんで」
カラオケと勉強会は週に1回ほどの習慣になってたんでかのんは脅威の平均点98点を叩き出した。
100点でないのはいくつかケアレスミスをして落としてしまったからだと本人が残念そうに語っていたよ。
それでも、英語は得意だったらしくしっかりと100点を取っていた。
「数科目の試験を作り直した上で個室で受けさせた事でようやく冤罪だと判明したそうですね。
幸いな事にすぐに気付いたから噂が広まる事もありませんでしたが、危うくイメージに傷が付く所だったとか。
あと、単純に追加試験の為に拘束された事も不快だったそうですよ」
「ば、バカな! 本当に本人から聞いたのか!?」
「……彼女は頑張って努力してあれだけの成績を出したというのに、それをカンニング扱いされて、辛かったでしょうねぇ。
そんな彼女のちょっとしたわがまま、聞き入れてやろうとは思わないんですか?」
「…………はぁ、仕方ない。
ほら、受け取れ!」
児玉はしぶしぶながらも申請書に判を押してくれた。ここでゴネたらかなり大きな問題に発展していただろうから賢明な判断だと言えよう。
全ての科目で急激に点数を伸ばしたかのんを疑う気持ちも理解できない事は無いが、もう少し慎重にやるべきだったな。
なお、いくつかの試験の受け直しを提案したのは学校側ではなくかのんだったらしい。早期決着の為だそうだ。
「ありがとうございました。それでは失礼します」
「さっさと失せろ! シッシッ」
後は、かのんの名前を隠しながらちひろに見せれば完了か。
予定外の残業になってしまったな。いつか何か請求してやろう。
その場のノリで書いたカンニング疑惑事件がこんな所で役立つとは……
原作ではかのんの得意科目なんて全く出てきてませんが、中の人補正で英語が得意としておきました。その方が都合が良かったので。
え? 原作ではわざわざ英語の勉強会に参加してる? もともと点数が高かったんですよ。きっと。
さて、次こそは天理編……の前に同掃会もちょっとだけ入れます。
全部書くのは色々と面倒なんで集会が終わった後のドクロウさんのつぶやきみたいな感じで。
1話だけですが既に書きあがっているので明日投稿します。では、また明日。