~10年前 舞島海浜公園~
「皆~、潮干狩り楽しんでる?
あ、桂馬君? ゲームしてないで遊ぼう?」
「海なんてゲームで行けば暑くないし濡れないからいいよ」
「それじゃあ海の意味が無いでしょうが!!」
僕はあの時もゲームをやっていて、何故か担任に怒られた。
鬱陶しかったんで近くに停まっていたあかね丸の甲板の上でゲームしてた。
しばらくゲームをしていたら……地震が起きた。
ほんの軽い、震度3くらいの地震だったと思う。
だけど、何故か周りが海になってて、帰れなくなってたんだ。
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「……神様、よくそんな凄い事件を忘れてましたね」
「いや、帰れなくなったって言っても陸地は普通に見える距離だったから頑張って泳げば帰る事は不可能ではなかった。
持ってきたゲームを濡らさずに帰るのが難しいってだけで」
「……10年前からそんな感じだったんですね」
「続けるぞ」
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そうやって取り残された後も1時間くらいゲームして待ってたんだけど、助けは来なかった。
……そう言えば、もう1人近くに誰か居た気がする。
確か、大きなリボンを2つ付けてた女子……
……あ、天理か。お前居たのか。すっかり忘れてたな。
え? そんな大事な事を忘れるなって? いや、大したことじゃなかったからな。
え? 天理にとっては大したこと? はいはい、分かったから次行くぞ。
1時間待っても誰も来なかったんで自力での脱出を試し始めたんだ。
船の上にあった布とかを結んで垂らして船から降りた。
……そう言えば、船の近くは海じゃなくて砂浜みたいになってたな。船自体も何かボロボロになってた気がするし、考えてみればかなり異常事態なんだが……何だったんだろうなアレ。
……脱線したな。んで、確か船の下の方に穴があって、入ってみたら洞窟になってたんだ。
洞窟ってRPGじゃよく出てくるけど現実で入るもんじゃないな。中は薄暗くて、先がどこに続いてるかも分からなかった。
僕は天理に待つように言った気がするが、結局付いてきて……ライト代わりにゲームを貸したな。
モニターのバックライトなんてたかが知れてるが、2人で両手に1つずつ、合計4つで照らせば多少はマシだった。
奥に進んでみるとなかなかに広い洞窟だった。方向的には陸地の方だったんでそのまま探索を続けた。
その後は……
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「その後は? その後はどうなったんですか!?」
「落ち着けエルシィ。その後はあんまりよく覚えてないんだよな」
『そこからが大事なのではありませんか! どうしてそこを忘れているのです!!』
「あった事っていってもだなぁ……」
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あった事……あった事……
……ああ、そうだ。天理が泣き出した記憶があるな。
……おいディアナ、ドヤ顔するな。天理が恥ずかしそうにしてるぞ。
おいおい気にするなよ。小学生が洞窟に取り残されたらそりゃ泣くから。
え? 僕は泣いてなかった? そりゃあ僕は神だからな。
何だと? 人間が神を騙るな? ふっ、
えっと、天理が泣き出して、更に腹も減ってたみたいだから弁当を渡したな。天理の分の弁当は荷物ごと荷物置き場に置きっぱなしにしてたんだったかな?
あと、飴とかも押しつけた記憶がある。甘い物が苦手だからちょうど良かった。
ん? 僕の分の食料? ゲームがあれば生きていけるだろ?
んで、その後天理と適当に会話して……また地震が起こった気がするな。最初の時よりもずっと強いやつが。
これ以上は……思い出せないな。
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『そこですよそこ!! どんな会話をしたのかです!!』
「いや、そこまでは流石に覚えてないよ。
天理だってそこまで細かくは覚えてないだろう?」
「……流石にセリフ全部は覚えてないけど、内容は覚えてるよ」
「……マジか」
『当然です。桂木桂馬、これが正常な人間です!!』
「いや、あの、あの時の言葉は私は印象に残ったってだけで、桂馬君から見たらそんな大した事じゃなかったんだと思う。
だから、忘れてても大丈夫だよ」
『天理は甘いですね。それも天理らしさですけど』
「ところで、どんな内容だったんだ?」
「あ、えっと……本当に大した事じゃないから、気にしないで」
「そうか。その後は……どうなったんだ?」
「ここから先は覚えてなくてもしょうがないかな。
あの時は、桂馬君は上から降ってきた石か何かに頭をぶつけて気絶してたから」
「……道理でその頃の記憶が曖昧なわけだ」
『ここから先の話があなたの質問に関わってきます。
どうやって私と天理が出会ったのかという質問に』
「なるほどな。それじゃあ続きを教えてくれ」
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天理の記憶では……あなたが倒れた後、洞窟の奥の方から青白い幽霊のようなものの大群が現れたのです。
恐らくあの全てが
駆け魂達はその場に居た人間、天理に一斉に襲いかかりました。
幸い、天理に心のスキマは見当たらなかったらしく取り憑かれる事はなかったのですが……幼い子供にとって幽霊が一斉に襲いかかってくる様は恐怖でしかなかったでしょう。
天理は健気にも気絶したあなたを抱えて耐えていました。
その時でした。私が天理と出会ったのは。
封印から解き放たれた駆け魂と一緒に居た私は天理の助けを求める声を聞いて駆けつけたのです。
私の全盛期の霊力があればあの程度の魂だけの存在など一掃できたのですが……封印が解けたばかりの私にはそこまでの力はありませんでした。
天理の体の中に入り、あなたを抱えて洞窟を駆け抜けるのが精一杯でした。
結局どうやって戻ったか、ですか?
簡単な事です。洞窟の奥の方はちゃんと陸地に繋がっていたのですよ。
確か……あの舞島学園の寂れたシアターに繋がっていました。
え? 何でそんな所に出たのか? 私に訊かないで下さい。
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『これが、10年前のあの日に起きた全て……ですね。
地震のせいでいくつか家も倒壊したので、その時に天理は引っ越したのですよ』
「そう言えばウチも崩れたな。ゲームが割れてショックだった記憶がある」
『またゲームですか……』
「う~ん、頭が良いに~さまが忘れるなんて珍しいって思いましたけど……もしかしたら頭を打ったせいだったのかもしれませんね~」
「……どーだろうな」
追憶編という事でこんな形式で書いてみましたがいかがだったでしょうか?
桂馬の記憶という事なので、天理との会話は流石に忘れているだろうと判断してカットしました。原作を知っている方は原作通りだと思っていただければ。原作を知らない人がもし居るなら……何か桂馬が良い感じの事を言ったんだと察してください。