もしエルシィが勾留ビンを使えなかったら   作:天星

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 大変長らくお待たせしました! ギリギリで2ヵ月に間に合いました!
 では、スタートです。




正しいエンディングの迎え方
プロローグ


「あ、神様! 少々宜しいでしょうか?」

 

 ちひろたちからかなり気の利いた贈り物を受け取って少し良い気分に浸っていた僕にエルシィが無遠慮に声を掛けてきた。

 何故だろう、凄く嫌な予感がする。

 

「神様~? 聞こえてますか?」

「ああ。聞こえてるからサッサと話してくれ」

「はいっ! 皆さんと靴屋……と言うよりスポーツショップですね。

 そこに行った時に新しい駆け魂を発見しました!!」

 

 現実(リアル)を少しは見直した途端にコレかよ!!

 贈り物探しが原因で駆け魂を発見したのなら贈り物なんて要らなかった……なんてのは流石に言いすぎか。

 はぁ……

 

「で、プロフィールは?」

「はいっ!

 名前は生駒(いこま)みなみ、中学3年生。

 身長151cm、体重41kg、血液型B型、誕生日は2月20日。

 以上です!!」

「中学生ねぇ。所属校は……分かる訳が無いか」

「バカにしないで下さい! うちの中等部です!」

「……そうか、そのパターンがあったな」

 

 つい最近人間界に来たばかりのエルシィに中学校の事など分かる訳が無いと思っていたが、そこだけは例外だったな。

 前にも話した気がするが、うちの高校は中等部もある巨大な学校だ。

 まぁ、中等部と高等部でそこまで交流があるわけじゃないんだが、制服のデザインくらいは何となく覚えていたんだろう。

 

「はぁ……何で夏休み中に見つかるかなぁ……せめて前か後にして欲しかった」

「え? どうしてですか?」

「簡単な事だ。『後輩』という属性はギャルゲー的には極めて楽な属性なんだ」

「何だか属性って言葉を久しぶりに聞いた気がしますよ」

「そうだったか? まあいい。

 そういうわけなんで、その属性を強調する為にも先輩っぽさを積極的に出していきたいんだが……」

「何か問題でも?」

「大有りだ。今は夏休みだぞ?

 学校の事なんざ忘れて遊び倒すような時期に先輩面した奴が現れても鬱陶しいだけだろう。

 相当上手くやらないと後輩属性がプラマイゼロか、下手するとマイナスになる」

「うわっ、確かに問題ですね」

「それだけじゃない。通常時なら学校でぶつかる等の遭遇イベントが作れるが、今は夏休み中だから不可能だ。

 かと言って街中でぶつかるのも微妙だ。制服を着てたら怪しい奴にしか見えないし、私服だと『同じ学校の先輩』ではなく『本当に赤の他人』にしか見えないからな」

「それじゃあ……どうするんですか?」

「できるなら夏休みが終わるまで待ちたいんだが……ひとまずはいつも通りに情報を集めるとしようか」

 

 何をするにもまずは正確な情報だ。情報が多ければ多い程に選択肢は増え、失敗率は下がる。

 まずはエルシィに軽く調べさせて、細かい所を詰めていけば……

 

「……そう言えばエルシィ、そいつの住所は分かるのか?」

「いえ、全然分かりません!!」

 

 ……せめてとっかかりくらいは掴んでおいてほしかった。

 僕にどうしろと言うんだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ひとまず、エルシィが今回の攻略対象と接触したというスポーツショップにやってきた。

 学校から程近い場所にあり、うちの学校の生徒の姿もちらほら見えた。

 

「エルシィ、反応は?」

「うーん……無いですね」

 

 前に月夜を探した時と同様にみなみの駆け魂に絞ってもらっているので少し歩くだけで店全体をカバーできているはずだ。

 それでも見つからないという事は今は居ないという事だろう。やはりそう都合良くはいかんか。

 

「前はどの辺に居たんだ?」

「確かあの辺だったと思います」

 

 エルシィが指し示した場所にはスポーツドリンクが売っていた。

 粉を水に溶かすタイプの奴だな。歩美の陸上は勿論、大抵のスポーツで使えそうな代物だ。

 つまり、全く絞り込めていない。

 

「……電波系じゃあるまいし、もっと情報を落としていってくれよこのクソ現実(リアル)が!!」

「わわっ、神様どうか落ち着いて……」

「仕方あるまい。今ある情報だけで考えるか」

 

 今回のターゲットはうちの学校の中等部の生徒。

 そして、夏休みであるにも関わらず制服を着ていた。

 わざわざ着ていた理由、それはほぼ間違いなく学校に行っていたからだろう。

 この店に居た理由も相まって彼女は運動部の部員に違い無い。

 だから、活動中の部活を見て回れば遭遇可能……と言いたい所だが2つの理由で厳しい。

 1つ、うちの学校は単純に広い。運動部の活動場所はある程度絞れるが、それでも広い。それだけならやってやれん事は無いだろうが……

 もう1つの理由として相手は3年だという事だ。

 普通の生徒ならもう引退している時期だ。うちの高等部を志望しているなら受験の心配はあまり無いが、それでも部活動に通いつづける生徒は少数派だろう。

 今回のターゲットが引退後も毎日部活に通いつづけるストイックな性格の奴なら話は簡単だが、そうでないならたまに顔を出しているだけの可能性、下手するとエルシィが目撃した日だけしか顔を出していない可能性まである。

 居るかどうかも分からん奴をあんな広い学校で捜せというのは無謀だ。

 となると……

 

「……職員室に忍び込むか。あそこなら各部の部員名簿くらい置いてあるだろう」







 前の話の流れからすると若干不自然な流れになってしまいますが、

 ・靴を送る
 ・本編
 ・前話エピローグ

 みたいな感じの流れだと思っていただければ。

 夏休み中の相手として最悪の部類に入るであろうヒロインです。
 どうやってアプローチしていくのやら。

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