もしエルシィが勾留ビンを使えなかったら   作:天星

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 久しぶりの投稿だったせいか前話投降後には感想が4件も来ましたよ!
 本当にありがとうございました! そして待たせてしまってホントごめんなさい……




01 潜入

 と言う訳で、エルシィの羽衣で透明化して中等部の職員室に忍び込んだ。

 

「それで、どこにあるんでしょうか。例のぶいんめいぼは!」

「知らん」

「……えっ!? 分からないんですか!?」

「逆に何故分かると思ったんだ? 僕がこの部屋に入るのは初めてだぞ?」

「え? そうなんですか? 神様が中学生だった頃とか……」

「もっと近い所に学校があったから僕はそっちに通ってた。この学校に来たのは高校に入ってからだ」

「ほえ~、そうだったんですか~」

「そういうわけだから、手当たり次第に捜すぞ」

「ああ、だからこんな時間に来たんですね~」

 

 言い忘れていたが現在は真夜中だ。学校に残っているのは守衛や見回り、そして一部の物好き(月夜)くらいのものだ。

 どうせ教員に訊いても何も教えてもらえないだろうからこの方が都合が良かった。

 

「何だか泥棒みたいですね~」

「似たようなものだな」

 

 しかし暗いな。おまけに暑い。

 明かりを点けるのは論外として、エアコンもどこかの部屋で管理されていそうだ。不用意に触らない方が良いだろう。

 

「暑いですね~。よいしょっと」

「おいコラ! エアコンを使おうとするな!!」

「え~、でも暑いですよ?」

「だったらホラ、お得意の結界で何とかならんのか? 熱だけが一方通行で逃げていく感じの」

「そ、そんな技が!? 神様頭良いです!!」

「できるならサッサとやってくれ。

 あ、そうだ。ついでに光を通さない感じのも頼む」

「りょーかいです!! あの辺からあの辺まで……できました!!」

 

 見た目には分からないが、結界を張り終えたらしい。明かりを点けても大丈夫……のはずだ。

 慎重にスイッチを入れる。守衛が飛んでくる気配は無いがいつでも逃げられるように身構えておこう。

 そもそも完全に真っ暗な部屋というのも異常だしな。光が漏れているよりは遥かに目立たない異常だが、手早く済ませるに越したことは無い。

 

「部活関係の書類……この辺か?」

「頑張ってください神様!」

「いや、お前も探せよ」

「そうしたいのはやまやまなのですが、私は日本語が読めないので……」

「……お前、よく中川の替え玉が務まってるな」

 

 流石に簡単なものなら分かるんだろうが、書類の山の中から目的のものを捜すのは不可能か。

 仕方ない。1人で済ませるか。

 

「ん? これか? 茶道部、書道部、文芸部……ちっ、文化部関係か。

 エルシィ、この名簿の中から生駒みなみの名前を探しておいてくれ。それくらいならできるだろ?」

「それくらいなら……でも、文化部を調べても意味が無いのでは?」

「念のためだ。暇ならそれくらいやってくれ」

「分かりました!」

 

 高等部では文化部の担当は児玉、運動部の担当は……誰だかは忘れたが別々の担当になっていた。

 中等部もそうとは限らんが、別の所を調べてみるか。

 

 

  ……しばらくして……

 

 

「あ、ありました!! 生駒みなみさんの名前!!」

「何だと?」

 

 文化部関係の書類を調べていたはずのエルシィからそんな声が上がった。

 まさか最初の読みが外れていたのか? 乏しい情報からの読みではあったが……

 

「どこにあったんだ?」

「はい! 神様から頂いた書類を全部見終わったので元の場所に片付けようとしたのですが、そこに『運動部』と書かれた束があったので調べてみました!

 そしたら見つけました!」

「……灯台元暗しだったな」

 

 最初に調べた場所の近くにキーアイテムがあるのはゲームでは定番の罠だが、まさか現実(リアル)で同じ事をされるとは思ってなかった。

 やるじゃないか、現実(リアル)

 

「で、何部だったんだ?」

「女子水泳部みたいですね」

「水泳か……」

 

 うちの学校にはプールがある。普通の学校にあるような屋外のものではなく、きちんと屋内に作られており冬でも泳げるといった触れ込みだったはずだ。

 夏にしかイベントを起こせないみたいな制約があったら大急ぎで攻略せにゃならんかったが、そんな事は無いようで一安心だ。それでもサッサと進めるに越したことは無いが。

 

「次は水泳部の部室でも探るか。エルシィ、書類の片付けを……もうほぼ済んでいるみたいだな」

「モチロンです! 掃除は得意ですからね!!」

「久しぶりに役に立ったなその設定」

「ちょっ、どういう意味ですか神様!!」

「いいから行くぞ。明かり消して、結界解いて……」

「は~い……」

 

 職員室から出ると熱気が襲ってきた。

 意外と冷却効果あったんだなあの結界。







 その後、見回りに来た守衛が職員室前を通りかかったとき冷気を感じて、なんやかんやあって舞高のミステリー倶楽部にそれが伝わり『中等部の職員室には悪霊が潜んでいる』といった噂が立つのだが……それはまた別の話。


 桂馬の中学時代の情報は筆者が知る限りでは一切不明です。
 面倒だったので別の中学に居たという事にしておきます。
 最初は『当時は舞高は女子校だった』で押し通そうとしたのですが、共学化は新校舎設立の1年後(9年前)なので無理でした。(何故か2年くらい前だと勘違いしてました)

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