もしエルシィが勾留ビンを使えなかったら   作:天星

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02 潜入・その2

 屋内プールの側にある水泳部の部室に到着した。

 部室と言うより更衣室だな。運動部だからそれくらいしか専用の部屋を必要としていない。

 

「神様がこんな所に居るのが見つかったら大騒ぎになりそうですね~」

「そう思うならサッサと片を付けるぞ」

 

 何か役に立つ痕跡があると良いんだがな。ひとまずはみなみのロッカーを探すか。

 頻繁に使っている痕跡があれば学校で遭遇できるチャンスが増えるし、そうでないなら別の手を考えなきゃならん。

 

「う~ん……見当たりませんね」

「…………」

 

 一通り見て回ったと思うが、みなみの名前は見あたらない。

 既に引退したからロッカーも片付けられた? 流石にそこまで急いでやるもんじゃないと思うが……

 

「あっ、神様! これ凄いですよ!」

「ん?」

「この大会のメンバー表、『桜井ひより』って人の名前が何回も出てますよ!」

 

 エルシィが指差しているのは窓に張られた表だ。

 『舞島学園高等部水泳部 県大会出場メンバー表』と書かれている。

 それに何度も名前が出ているという事は有力選手という事だろう。何かのイベントに使えるかもしれないし覚えておいて損は無い。

 ……って、ちょっと待て。

 

「高等部、だと?」

「あれ? ……あっ!」

 

 どうやら、部室を間違えたらしいな。

 暗かったからしょうがないと言えばしょうがないんだが。

 

 

 気を取り直してすぐ隣にあった第二更衣室……中等部が主に使ってるらしい更衣室を探索する。

 

「お、居た居た」

 

 さっきの更衣室と同じように壁に張り出されていたメンバー表を確認すると探していた名前がしっかりと書き込まれていた。

 

「ひゃくえむ、えふあーる、第3補欠って書いてありますね」

「予備の予備の予備って事か。ほぼ出られないな」

 

 念のため表全体を確認するが、他の場所にみなみの名前は無かった。

 そりゃそうだな。有力な選手が第三補欠になぞなるわけがない。

 

「もしかすると、大会に出られなかった事が心のスキマだったりするんでしょうか?」

「……まだ分からん。真面目にやっててこの結果だったならその見込みは高いが、遊んでただけの可能性もあるからな」

「うーん……遊んでいたようには見えませんよ?」

「ん? どういう意味だ?」

「これ、みなみさんのロッカーみたいなんですけど、よく見てみてください」

「……? 何かおかしな所でもあるのか?」

「あれ、気づきませんか?」

 

 僕の目から見て、特に異常は無いように見える。

 他のロッカーとも見比べてみるが、やはり異常は見あたらない。

 

「取っ手の所、埃が付いてません。夏休みに入ってからも使われてる証拠です!」

「埃ぃ? そんなもん簡単に溜まるもんなのか?」

「神様! 埃をバカにしちゃいけませんよ! あいつらは気がついたら溜まっているんです!!」

「そ、そうか」

 

 そう言えばエルシィは300年近く掃除係をやってたんだったな。こういう事には敏感なのか。

 確かに言われてみると隣のロッカーの取っ手と比べて微妙に汚れが少ない気がしないでもない。

 どうせこの後裏取りはするので、ひとまず相手が真面目であるという前提で進めよう。埃なんて誰かがうっかり触っただけでも落ちるだろうし。

 

「よし、ひとまずはこんなもんか。撤収するぞ。

 鍵はキチンと閉めたか?」

「だいじょーぶです!」

 

 本人には全く遭遇できていないが、結構情報が集まってきたな。

 

「次にやるべきは……」

「何をするんですか?」

「……張り込みかな。攻略対象の居場所が分からん事には何もできんからな」

 

 ゲームでもやたらと遭遇条件が厳しい連中はたまに居るが、ここまで中途半端なのも珍しいな。

 

「というわけでエルシィ、明日からお前だけであのロッカー前で張り込みな」

「ええええっ!? 私1人ですか!? 神様は!?」

「……透明化で隠れて、みなみを待って、見つけたら追跡して家を見つけるだけだから1人の方がむしろ楽だと思うんだが?」

「それはそうですけど……」

「じゃ、頼んだぞ」

「分かりました……」

 

 都合良く現れてくれると良いが……下手すると1週間くらいはかかるかもな。

 

 

 

 

 

 そして、翌日……

 

 

 

「見つかりましたよ神様!!」

「早いな!!」

 

 まさか一日でアッサリ見つかるとは思っていなかった。

 

「周りの方の話を聞く限りではほぼ毎日来てたみたいですよ。第三補欠でも練習を頑張るなんて、真面目さんなんですね~」

「…………」

「あ、でもそんな運動一筋の人を攻略するって大変なのでは……神様、どうするんですか?」

「心のスキマがあるなら、現実(リアル)に満足していないなら、いくらでもやりようはあるさ」

 

 選手としての強さを追い求めて心のスキマができるような奴が第三補欠になるなど有り得ない……とまでは言わないがかなり考えにくい。

 水泳をやってきて、大会にも(ほぼ)出場できずに引退して、燃え尽きても他にやることが無くて惰性で泳ぎ続けている。

 そんな筋書きの方が遥かに有りそうで分かりやすい。断定は禁物だがな。

 

「じゃ、明日にでもイベントを起こすとするか」

 

 頻繁に学校に来るのであれば比較的安全に後輩ルートを使える。

 上手くルートに入れればかなり簡単な部類の攻略だ。サクッと片付けるぞ。







 スゴロクガールこと桜井ひよりさんを強引にねじ込んでみました!
 初出の絵の方が原作の絵より幼く見えるのは頭身の関係なんでしょうかね。多分。
 彼女の水泳の能力は完全に不明でしたがねじ込む為に凄く高いものとしておきました!
 カラオケの能力なら判明してるんですけどね……

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