もしエルシィが勾留ビンを使えなかったら   作:天星

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06 所属する部活

 桂木先輩を探してみる……と決めたは良いものの、どうやって探そう。

 他の先輩とコンタクトを取るのはいつも斎藤とあっこの役割だったので私にそんなコネは無いのであります。

 プールで待ってたら会えるのかなぁ……頻繁に見かけるわけじゃないからあそこで待っててもそう簡単には会えない気がする。

 そう言えば桂木先輩って何か部活に入ってるんだろうか? 水泳部は真っ先に探したから居ないのは確定だけど、それならどこに居るんだろう?

 あれだけ速く泳げるならどこかの運動部でエースになっててもおかしくないはずだけど……

 ……明日、そっちの方を探ってみようか。

 

 

 

 

 

 そういうわけで学校までやってきたわけだけど……今日は雨だ。

 まずは校庭を見て回ろうと思ってたけど、こんな日に外で活動してる人は殆ど居ない。

 この学校に屋内プールがあって本当に良かったと思える場面だ。

 仕方ないので屋内を見て回る事にする。高等部の先輩たちが使ってる校舎に入るのって初めてだけど体育館とかの場所分かるかなぁ……

 

 そんな事を悩みながら足を踏み入れた、その時であります。

 

「ん? おいそこのお前、こんな所で何をしている?」

「ひゃいっ!?」

 

 突然誰かから声が掛けられた。

 声のした方へと振り向くといかつい顔をした教師が。

 

「その制服は中等部の物だな? ここは高等部の校舎だぞ? もしもーし!」

「え、えっと、そ、その……」

 

 ええっと、中等部の生徒ってここに入るのって禁止されてたっけ?

 確か……斎藤が先輩に水泳部のプリントか何かを配達したって聞いたことがあった気がする。ちゃんと理由があれば大丈夫のはず!

 私のがちゃんとした理由かどうかはちょっと何とも言えないけど……

 

「そ、その……桂木先輩に用があって……」

「桂木ぃ!? あの桂木に用だと!?」

「ひうっ!!」

 

 目の前の教師が凄く不機嫌そうな顔になっている。桂木先輩、一体何をやらかしたのでありますか!?

 

「フン、まあいい。奴の居場所は知らんが一応軽音部部長だ! 用があるなら部室にでも行け!!」

「け、軽音!?」

 

 よ、予想外過ぎるのであります。運動部ですら無いとは。

 いやいや、それよりも今問題なのは……

 

「あの、その部室はどこに……?」

「4階の隅っこだ! サッサと行け!!」

「あ、ありがとうございました!!」

 

 こ、怖い先生だった……でも一応欲しい情報は教えてくれたのであります。

 顔に似合わず良い人……いや、違うか。

 とにかく、行ってみるのであります。

 ……隅っこって2箇所あるけど、どっちだろう?

 

 

 

 

 片方の隅っこに行ったら誰も居なかったので反対側に行ったら『軽音部』と書かれた部屋があった。

 正面から乗り込む勇気は無いのでこっそりと様子を伺ってみるのであります。

 中に居るのは5人、全員女子で、桂木先輩は居ないようだ。

 本当にここで合ってるのかなぁ? ここは女子部で、『男子軽音部』みたいな部屋が別にあるのかもしれない。

 他の所を探そうか? いや、それともあの人達に訊いてみるという手も……

 そうやって迷っていたとき、こんな音が聞こえてきたのであります。

 

ドロドロドロドロ……

 

『あれっ、センサーが!?』

『おいエリー、演奏中は携帯切っとけよ~』

『あ、すいません、ってそうじゃなくて、えっと……そこですね!!』

 

 ドクロの髪飾りを付けたポニーテールの人が突然こっちに振り向いてドアを勢いよく開けたのであります!

 まるで私の居場所を正確に把握していたかのような動きで、あまりに突然だったので隠れる暇も無かった。

 

「エリー、一体どうした……って、どなた?」

「あ、あの、その……」

 

 こっそり見てたという負い目と、上級生からの格上オーラにあてられて満足な受け答えはできなかったのであります……

 

 

 

 

 

  ……しばらくして……

 

「事情は分かったような分からないような……まあ、何となく分かった気がするよ」

「あ、ありがとうございます……」

 

 結局、逃げる事なんてできなかった私は高等部の皆様に囲まれて大体全部吐かされたのであります……

 夜のプールで桂木先輩と出会って、

 噂を聞いたら何か凄まじい人で、

 興味を持ったので調べに来た……と。

 ……簡潔にまとめてみたけど、自分でも何をやっているのかよく分からないのであります。

 

「しっかしあのバカ、中等部でも噂になってるのか」

「私の自慢のお兄様ですからね!!」

「エリー、褒められてないからな?」

「隣のクラスであるにも関わらず噂の存在を知らなかった私は相当疎いのでしょうか……?」

「結っ!? そんな妙な事で落ち込まないで!?」

 

 どうやら皆さん桂木先輩の事は知っているらしい。流石は中等部で噂になるような人だ。

 ……ところで、一つ疑問がある。

 

「あの、皆さんは桂木先輩とはどういうご関係なのでしょうか?」

「一言で言うとクラスメイトだね」

「私は違いますけどね」

「私はクラスメイト兼妹です!!」

 

 よりにもよって5人中4人が同じクラスらしい。随分と偏ってるなぁ……

 

「桂木先輩は軽音部の部長だって聞いたのですが、ここの事……ですよね?」

「あ~、そう言えば部長だったね。一応」

「どういう、事でしょうか……?」

「イロイロと複雑な事情があってね。名目上はあいつは部長って事になってるケド、幽霊部員みたいな感じでここには一切来てないよ」

「そうなんですか……」

 

 なんだか良く分からないけど、ここに居ても桂木先輩と会えないのは理解できたのであります。

 いや、そもそも会う事は目的じゃないんだけどね。

 

「ま~安心しなさい。あいつの事だったらうちらに訊きなさい。

 答えられる範囲で答えるよ」

「えっ、でもご迷惑になるのでは?」

「どうせ休憩しようかって時だったからね~。面白そうだし。

 結~、お茶とお菓子出して」

「そんなものはありませんよ。茶道部じゃないんですから」







 出す先生は児玉先生か二階堂先生かで迷いましたが、桂馬の軽音部所属を確実に知っているのが児玉先生だったのでそっちにしました。
 まぁ、二階堂先生も知ってそうですが……
 なお、どっちであってもみなみが災難だった事は変わらない模様。

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