そう言えば、噂の信憑性は結局の所どうなんだろう?
この際だから開き直って色々と訊いてみる事にするのであります。
「桂木先輩の噂なんですけど……
例えば、授業中ゲームばっかりしてて先生の話を聞いてない……なんていうのは流石に何かの間違いですよね?」
「ん? それは紛れもない事実だよ?」
「…………えっ!?」
よりにもよってあれだけ泳げる身体能力を持ってる先輩がゲームばっかりしている……?
ま、まさか、他の噂も真実なんて事は無いのでありますよね!?
他には確か……
「留年して妹と同じクラスというのは……」
「同じクラスっていうのは正しいですね」
「留年はデマだね~。正しい部分を聞いた誰かが勘違いしたんだろうね」
「な、なるほど……ってあれ? それじゃあどうして同じクラスなんですか?」
「うちらも詳しい事情は知らんけど……」
「その辺はあんまり深く突っ込まないでくれると助かります……」
何だか安心できた気がする。噂なんて所詮はこんなもんだよね。
「しっかし中等部の方ではそんな噂が流れてるのか。他にはどんなのがあんの?」
「え? えっと……そうですね……」
あっこと斎藤が言ってた噂、他に何があったかな……
あ、そうだ。凄く噂っぽい噂があった。
「屋上に住んでてUFOを呼んでたなんていうとんでもない噂がありました」
「あっはっはっ、何だそりゃ。どんだけ捻じ曲がって伝わってんのよ、あいつの所業は」
「UFO……ですか」
「ん? どした結?」
「いえ、あながち間違いでも無いのではないかとふと思っただけです」
「えっ、ちょ、マジで!? あいつUFOなんか呼んでたの!?」
な、何か話がとんでもない方向に向かっているような気が……
まさか本当に呼んでたのでありますか!?
「いえ、そういう意味ではありません。
ただ、あの方なら必要があればUFOくらい呼ぶのではないでしょうか?
目的の為なら手段を選ばず手間を惜しまないあの方であれば」
「そういう意味かぁ……まあ確かに必要ならやらかすだろうね、あいつなら」
この先輩たちにここまで言わせるって、一体どんな人なんだろうか。ますます分からなくなってきた。
「手段を選ばないって、何か凄く怖い響きですけど……その、桂木先輩は……」
「悪い意味で言ったつもりは無かったのですが、確かに悪い意味にしか受け取れないような言い方でしたね。
私が言いたかったのは決断力と行動力に優れているという事です」
「何だかんだ言って割とお人好しだからね。誤解されやすい奴ではあるけど、悪い奴ではないよ」
強烈な人ではあるけど、悪い人ではない……ということなのでありますでしょうか?
ここまで来たらもう直接会って話してみたい。何を話すのかと問われると困るけど。
「桂木先輩って、ここには来ないんですよね?」
「そうだね~。うちらが呼びつけても絶対来ないだろうね。
直接会いたいならこっちから出向くしか無いけど……」
「何か問題でも……?」
「……突然行ってもゲームの時間を削ってまで誰かに会おうとするとは思えないね。
うちらも何日か前にお邪魔させてもらったけど、5分も話せなかったから」
「そ、そうでありますか……」
悪い人じゃなかったんじゃないの?
……いや、突然家に押しかけたら門前払い喰らってもおかしくはないのか。
「もっと詳しい話が聞きたいなら……同居人に声を掛けるのが良いかもね」
「同居人、ですか?」
妹さんではないのかな?
そう思って視線をそちらに向ける。
「あ~、エリーも一応同居人なんだが……よし、試しに見てもらおう。
エリー、桂木の事を紹介してみて!」
「待ってました! お兄様は凄いんですよ!!」
「ほぅ、何がどう凄いんだ?」
「はいっ! えっと、何かこう、ピカーって光ったりして、とにかく凄いんです!!」
「……な?」
「……はい」
確かに無理だ。下手すると私より語彙が少ないのであります。
「そういうわけでエリーはこんなんだからもう1人の同居人を当たろう」
「ちょっと! こんなんってなんですかこんなんって!!」
「そんな事より、サッサと西原さんと連絡取って!」
「ひ、姫様ですか? お会いできるかどうか分かりませんけど……」
「そん時はそん時だ。頼んだぞ~」
「あの……西原さんとは一体……?」
「桂木のイトコらしいよ。別の学校なんで会った事はあんまり無いけど、桂木なんかよりずっと親切な人だから話くらいは付き合ってくれるはず」
今、さりげなく桂木先輩が貶されてたような……
「エリー、連絡取れた?」
「はい! 今忙しいので後でかけ直すそうです!」
「そう言えばバイトやってたんだっけか……ま、何とかなるっしょ」
その後、適当に雑談した後に私は部屋を出た。
続きはまた後日という事になったけど、忙しいらしいイトコの人を呼んで大丈夫なのでありますでしょうか?
なお、実際に過去編では『UFOを呼ぶ』のと似たような事をやっていた模様。