プロローグ
皆さんこんにちは……エルシィです……
今日は、悲しい事がありました。
とても、とても悲しい事。
……そう、『夏休みの終わり』……です。
……え? 大した事無いって? 何を言ってるんですか!!
あれだけ長かった夏休みが終わってしまったんですよ!! 凄く大変な事です!!
あともう1年くらい続いてくれれば良かったのに!!
……あれ? そうなると夏休み中にまた夏休みが始まって……永遠に休める?
凄い! 凄いです!! 私、もしかして頭が良いですか!?
「というわけで結さん、この学校のエラい人に夏休みを延長するように頼んでください!!」
「一体何が『というわけ』なのかは分かりませんが……学校として必要な授業日数は決められているので無駄だと思いますよ?
万が一できたとしても他の長期休暇が削れたり、休日祝日が潰れるだけでしょう」
「そ、そんなぁ!!」
ば、バカな! 私の完璧な計画が!!
「おいエリー、寝ぼけた事言ってないで練習始めるぞ~。夏休み明け最初の特訓だ!」
「あ、ハイ! 頑張りましょー!」
幸いな事に夏休み明けの登校日は始業式があっただけです。
残りの時間は部活で特訓できます!!
「よーし、全員準備完了だな。
さあやるぞ!!」
ちひろさんの掛け声に合わせて皆で楽器を構えます。
精一杯頑張りましょー! えいっ!!
バキッ!!
……あれ? 何か嫌な音が聞こえたような……
「……おい、またエリーが何かやらかしたか?」
「え、ええええっ!? わ、私ですか!?」
慌てて手元の楽器を確認してみます。
シールドは繋いである、弦は普通に張られている。その他おかしな所は無し。見えない内部も結界のちょっとした応用で確認……
……特に問題無さそうです。はて……?
「あ、あの……」
私が考え込んでいると後ろから控えめな声が聞こえてきました。
「ん? どした結?」
「……さっきの音、どうやら私のようです」
振り返って確認してみると……ドラムの表面が破れているのが見えました。
「えっ、ええええっっ!? 物を壊すのって普通はエリーの役目じゃん!! どうして結が!?」
「歩美サン!?」
そりゃあ私もちょっとは、たまーに物を壊しますけど!
「役目云々は置いておいて……結、何があったの?」
「……このドラムは元々吹奏楽部で廃棄予定だった物を頂いてきたものです」
「と言うことは……」
「単純に『寿命』という事でしょうね。むしろ良く保ってくれたものです」
「寿命かぁ……それじゃあまあしゃーないか」
人間界の物品は地獄に比べて壊れやすいですからね。仕方ないみたいです。
「原因は分かった。それで、どうするよ?」
「動きの練習だけならこのままでもやってやれない事はありませんが……やはり買い換えるべきでしょうね。
遅くとも舞校祭までには一式を買い替え……とまでは言わずとも不安なパーツは新調しておきたいです」
「壊れた所だけじゃなくて他もマズいん?」
「一ヶ所壊れたという事はそういう事でしょう。
本番の真っ最中に壊れる……なんていう悪い意味で有名になりそうな事態は避けたいです」
「そりゃ確かに嫌だね。でも、楽器って結構高いよねぇ……」
「そうですね……」
「結は一応お嬢様だけど、自由に使えるお金ってあんまり無いんだよね?」
「一般家庭のお小遣いと同じくらいは何とか確保しましたが、少々厳しいです」
「となると……皆で稼ぐか?」
「えっ? さ、流石にそれはどうでしょうか……? バイト等で稼ぐにしてもかなり大変ですし、そのお金を私の為に使うというのは……」
「『ワタクシの為』じゃなくって部活の皆の為だよ。ドラムが無かったら皆が困るんだから」
「そうですよ! 皆の為なら私頑張っちゃいますよ!」
「私は陸上部の方もあるからあんまり稼げないかもしれないけど……なるべく頑張るよ」
「み、皆さん……」
うちの学校の文化祭『舞校祭』は確か11月の頭くらいだったはずです。
2ヶ月間皆で頑張ればきっと何とかなります!!
「パーツを買い替えなんてケチくさい事言わずに1セット買うぞ! 目標は……とりあえず10万くらいか? そうなると1人あたり平均2万だから……」
「1ヶ月あたり1万円、時給800円のアルバイトであれば週に3時間ほど働けば何とかなりそうです。
あくまでも平均値でですけど」
「あれ、意外と何とかなりそうな……よし、やってやるぞ!」
「「「おー!!」」」
精一杯頑張りますよ!
「……あのさ」
「どうした京よ」
「……フツーに部費を使えば良くない?」
「「「「…………あ」」」」
というわけで軽音部回。またか!
何か過去のドロー記録見てると日常回Bは既に3回やってて、今回の抽選結果がミスである可能性が高いけど気にしない。
ドラムセットを適当に検索してみましたが、安いものなら5万くらいで買えるっぽい。けど高いものだと10万でも足りないという。
楽器って高いですねぇ……
最後に突っ込むのは最初は結さんの予定だったのですが、前に結さんが部活の立ち上げのメリットを語る時に部費の事には触れていなかったので完全に忘れてた事にしてみました。京さんの影が薄かったから急遽セリフを増やしたなんて事情は無い可能性が無きにしも非ず。