もしエルシィが勾留ビンを使えなかったら   作:天星

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01 手続

 『部費を使えば?』

 

 京さんの驚愕の発言を受けて結さんが自分の荷物から何やら冊子を取り出して調べ始めました。

 

「部活……予算……あった、ありました」

 

 校則の一覧か何かでしょうか?

 

「……結、それいつも持ち歩いてんの?」

「ええまあ。何かと便利なので」

「ん~、まあいいや。それで、どうなってんの?」

「はい。部活を立ち上げてすぐでも予算は降りるようです。

 最初の年度は丁度10万で固定、それ以降は実績や部員数に応じて増減するみたいですね」

「要するに……買えるじゃん!!」

「全て使ってしまうと万が一の時、例えば他の楽器が破損した時などに身動きが取れなくなるのである程度は残した方が良いですが……何とか買えそうですね。

 えっと、手続き関係は……」

 

 何ページかパラパラとめくって、少し進んだ所でまた手が止まりました。

 

「ありました。指定された書式の書類に品名と値段を書き、部長と会計の印鑑を押した上で事務の方に提出すれば良いようです。

 あと、購入が終わったら領収書も提出するようにと」

「アラ? 意外と簡単そうだね。

 んじゃあまずは書類は……職員室にあるんかな?」

「恐らくは」

「じゃあ取ってきて、店に行って値段見て、その後に判子?」

「手順は問題ありませんが、一つ問題があります」

「ん?」

「印鑑です。軽音部の部長は桂木さんですが、会計がどなたかご存知な方は居ますか?」

「会計? そう言えば知らないような……歩美は知っとる?」

「ううん、私も知らない」

「そう言えば知らないね。エリーは?」

「う~~~~~~~~~~~~~~~~ん………………

 ……分かりません!!」

「分からないならサッサと言えよ!!」

 

 何となく分かりそうな気もしたんですけどね。

 部活を作ったのは神様で、副部長は麻美さん。

 あと1人、神様と仲が良さそうな人と言うと……

 

「……あれ、まさか……」

「今度こそ閃いたのか?」

「い、いえ……と、とにかく神様にお尋ねしてみましょう!」

「まあ、そだな。桂木の判子も貰わんといかんし」

 

 まさかとは思いますけど……軽音部の会計って、姫様……?

 と、とにかく今はできる所からやっていきましょう!

 

 

「……結、ちょっと気になったんだけどさ」

「何でしょうか?」

「部長とかを変える事ってできないの? 桂木はもちろんあさみんも役職には興味なさそうだから変えておけるなら後々楽そうだけど」

「残念ながら我が校では部活の役職という責任を安易に放棄するような事は不可能なようです。

 基本的には年度が変わるまでは不可能。例外のケースは役職持ちの方が怪我や病気で長期入院したり、あるいは退学になった場合などのようですね」

「そりゃ無理だな。普通に頼みにいこう」

 

 

 

 

   で!

 

 

 

 

 私たちはイナズママートまでやってきました!

 いやー、ここって何でも揃ってますね。まさか楽器まで売っているとは。

 たい焼きが美味しいだけのお店じゃなかったんですね!

 

 

「ち、ちひろさん! このベースすっごくカッコいいです!!」

「おまえの楽器はまだまだ保つし、こんな高いの買うわけが無いでしょうが」

「うぐっ、ちひろさんだってさっき30万くらいするギターを物欲しそうに見てたじゃないですか!!」

「確かにそうだけど……別に買ったわけじゃないから!」

 

 

「最安値で3万程度ですか……しかしこれは……」

「あっちの子供用とかの中途半端なセットと違って一式揃ってるように見えるけど、何か問題があるの?」

「はい。材料費を安く抑えているせいか音が少々安っぽくなってしまう事、あと耐久性に不安があります」

「うわっ、また壊すのは勘弁したいね」

「舞高祭までは保つでしょうけど、今後の事を考えるとコストパフォーマンス的にはグレードを上げたいです」

「だったら上げちゃえば? 本当にお金が足りなくなったら皆で何とかできなくはないわけだし」

「……そうですね。ではこの辺にしておきましょう。

 ……よし、メモ完了です」

 

 

「この機会に消耗品も買い足しておくか」

「あ~、確かに。ギターの弦の予備とか持っときたいね」

「あ、私も」

「私もベースの弦欲しいです! 念のため10セットくらい!」

「……一体何に使う気ですか?」

 

 

 そんな感じで楽器の下見は終わりました!

 次は神様の所ですね。きっと家にいるはずです。

 ハンコをもらわなくちゃいけないので直接行っちゃいましょ~!







 結 「印鑑」
ちひろ「判子」
エリー「ハンコ!」
 という呼び方の謎のこだわり。ちなみに意味的には……
  判子:判子を押すための物体。一般家庭では円柱状のアレ
  印影:判子で押された文字や模様
  印鑑:印影の中でも役所などに届け出て登録をしてあるもの
 となっているようです。本文中の手続きを正しく言うと、書類には『印影』が必要であり、それを押す為に『判子』が必要。みたいな感じになりますね。
 尤も、そんな意味の違いなんて作中では誰も意識してませんが。

 実際の部活の部費がどんなもんかは分かりませんが、舞島学園ではこんなもんとしておきます。
 児玉先生が創部をやたら拒むのは予算の問題があったりして……?

 予算の手続きとかは分からないのでテキトーに決めました。
 本来なら顧問の先生とかの認可も必要になりそうですが……舞島学園の部活に顧問が居た形跡が全く見られないので。
 天文部とか、女子空手部とか、あと将棋部とか陸上部とか……居ないはずは無いんですけどねぇ……

 部活の役職の変更は不可能としてみました。そうしないと今回の話が成り立たないので……
 正確には役職持ちであっても退部する事は可能ですが、再任命が出来ないとしておきます。そうしないと原作で部員数1になっていた女子空手部の設定と矛盾するので。
 まぁ、退部したのではなく籍は置いたまま幽霊部員になってただけの可能性もありますが。

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