神様の家に皆で集まった次の次の日、軽音部のみんなで姫様をお出迎えする為に集まっていました!
おっと、今回は姫様の事を『姫様』って呼んじゃダメって念押しされてました。えっと……ちひろさんや歩美さんに合わせて『かのんちゃん』ですかね。少しおそれ多いですけど。
ちなみに神様は居ません! 『事情は伝えてあるから僕は要らないだろう』とか言って帰っちゃいました。
「あ、あああ歩美! ホントに来るんだよね? かのんちゃんが!!」
「お、おお落ち着きなさいちひろ! あ、相手はアイドルって言ってもくくくクラスメイトなんだから!!」
「……お前たち、落ち着け」
「どうして京はそんな落ち着いてるのさ!!」
「いや、だって、桂木の家で聞いてたし」
「そりゃそうだけどさ、何かこう、今になって実感が湧いてきたというか何というか……」
「教室で会う事は前にもあったけど、私たちの部室に私たちに会いに来るわけだし……」
ちひろさんも歩美さんも凄く緊張してるみたいです。姫様との会話なんて私にとってはいつもの事なので今更ですけどね。
あ、でも、棗さんがカッコいい時は私もこんな感じだったかもしれません。やっぱりアイドルって凄いんですね。
「書類良し、朱肉良し、印鑑を押す為の下敷き(プリントの束)も良し、ティッシュもありますね」
「うわっ、すっごい丁寧に準備してるね。そこまでする必要あるの?」
「それは勿論あるでしょう。相手は限られた時間の中で何とか来て下さっているのです。
数秒でもスムーズに事が進むようにするのは当然でしょう」
「あ、あのメールの文面ってそういう意味だったのか。
よし。他に何か準備できないか考えよう!」
「と言っても、印鑑を押すだけですからね……」
「あの、お茶用意しようか? ティーバッグだけど」
「おお! それだっ!」
「果たして飲む時間はあるのでしょうか? と言うか、茶道部なのに抹茶ではないのですね」
「ちゃんとやろうとするとそれこそ時間かかるからね」
あ、そうそう。今回は麻美さんも来ているんです!
かのんちゃんが来るという事でせっかくだからとちひろさんが誘ったみたいですね。
人をここまで惹きつけるとは……流石は姫様です!
と、そんな風に過ごしていたら廊下の方から足音が聞こえてきました。
そしてそのままガラッと扉が開けられて待ち望んでいたかのんちゃん……ではなく、全く知らない男子が入ってきました。
「おっと、人が居たのか。君達、かのんちゃんを見かけなかったかい?」
「えっ? いえ、見てないですけど……」
「そうか……ここにも居ないのか」
「な、何事ですか?」
「ああ、かのんちゃんが突然姿を消してしまってね。何かのトラブルに巻き込まれたんじゃないかと有志で探し回ってるんだ」
「そうですか……」
「もし無事なのを見かけたら連絡してくれたまえ。では!」
それだけ言って謎の男子は去っていきました。
何事かと思いましたが、姫様のファンだったみたいですね。
「だ、大丈夫なのかな、かのんちゃん」
「この学園のセキリュティはそう甘くはありません。よほどの事が無い限りは問題ないでしょう」
「……何か結が言うと説得力がある気がする。何でだろうか?」
と、ホッと一息吐いた所で今度は廊下とは反対側から物音が聞こえてきました。
コンコンッという窓をノックするような音に反応して全員がそちらを向くと……
ベランダに、姫様が、居ました。
…………
「って、えええええっっ!? かのんちゃん!? 何でそんな所に居るの!?」
「お、おかしいですね、こ、この学園のセキリュティはそう甘くは無いはずなのですが……」
「と、とにかく鍵! 鍵開けよう!」
「はいっ! 開けます!!!」
で!
「いやーゴメンね驚かせちゃったみたいで」
「べ、べつに大丈夫だけど……どうしてあんな所に?」
「ファンの人を撒くためにちょっとね。あ、集合時刻にも遅れてる。ホントごめん」
ちょっとって一体何をしたのでしょうか……?
「まずは会計の判子だったよね。書類は準備できてる?」
「はい、こちらに」
「ここだね? ほいっと」
丁寧な動作でハンコを押して、少し確認してからティッシュを上から押しつけて拭き取ってました。
どうやらキレイに押せたみたいですね。
「ふぅ、これでようやく予算申請ができます。わざわざありがとうございました」
「別に構わないけど……他にも押しとかなくて大丈夫?」
「他に、ですか?」
「うん。今後もこういう申請が必要なら白紙の書類に判子だけでも押しちゃうけど?」
「あまり褒められた行為では無いように感じますが……確かにその方が良さそうですね。
少々お時間を頂けますか? 今から職員室から必要そうな書類を持ってきますので」
「勿論大丈夫だよ。焦らないで良いからね」
「では失礼します」
そう言って結さんが部室から出ていきました。
いつもおしとやかな結さんが心なしか駆け足だったような気がしましたが、きっと気のせいではないですね。
「あの、かのんちゃん? 時間って大丈夫なの……ですか?」
「時間はそこまで余裕があるわけじゃないけど、まだまだ大丈夫だよ。多少遅れても私の同僚が何とか繋いでくれるし。
あと、ちひろさんだっけ? 敬語じゃなくても大丈夫だよ。むしろクラスメイトに距離取られたらちょっと悲しいから……」
「えっ、ご、ごめん」
「ふふっ、冗談だよ。それより、話聞かせてよ。
クラスメイトで音楽をやってる人が居るって聞いてすっごく楽しみにしてたから」
「えっ、私たちなんてかのんちゃんに比べたらそんな大した事はないよ」
「そんな事は無いよ。むしろ私の方こそ歌が本業のはずなのに最近色々と手を広げてるから……」
「??」
「……ううん、何でもない。とにかく色々と聞かせてよ」
ところで、『さどうぶ』と入力して変換すると『サド初』になるのは筆者だけなのでしょうか……?
なお、本文では『さどう』と『ぶ』に分けて入力しています。
最初は普通に廊下から入ってくる予定だったけど何となく窓から侵入させてみました♪
飛行魔法使えるからこのくらいはらくしょーです! エルシィは気付かなかったけど。
今回の話を書くにあたって原作6巻の期末テスト編を何度か読み返しましたが、原作では敬語を使ってるのがかのんちゃんでそれ以外のメンバーはむしろ敬語使ってないという。
書いた文章(かのんが常語でちひろが敬語)の方が自然に感じたのは本作におけるかのんの変化なのかもしれませんね。あくまで個人的な意見ですけど。
かのんちゃんは歌が本業……のはず。原作2巻のかのん編では歌ってるかヘコんでるかスタンガン構えるかしかしてない。
そうは見えないのはアニメと岡田さんと筆者のせい。