もしエルシィが勾留ビンを使えなかったら   作:天星

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07 プラン

 今日も桂馬くんと一緒に朝ご飯を食べて一緒に登校する。

 そう言えば、誰かと一緒に登校したのって何年ぶりだろう? ちょっと覚えてない。

 

「……そう言えば、ちょっと質問したいんだが」

「え? どうしたの?」

「素朴な疑問なんだが、何で僕の家に泊まろうと思ったんだ?

 他に頼れる女友達とか居なかったのか?」

「え? あ~…………はい」

「……そうか、悪い事を訊いたな」

「え? いや、そんな事ないよ?」

「そうか」

 

 そう言って桂馬くんは再びゲームを始める。

 ゲームしてて誰かにぶつかったりしないのかな? 少し心配だ。

 

「ところで、攻略は順調なの?」

「攻略対象にそう訊かれたのは初めてだな」

「あ、ゴメン」

「謝る事じゃない。順調だよ。

 今週末で決着を付けるぞ」

「今週末ね」

 

 長いのか短いのか良く分からない所だ。

 

「それまでに何かしたほうが良いの?」

「いや。

 強いて言うなら普段通りに過ごせって事だな。エルシィになり変わってる以上は普段通りって言い方もどうかと思うが」

「分かったよ。

 週末は何をするの?」

「鳴沢市のデゼニーシーで遊園地デートだ。

 他に希望があれば別の場所でも構わんが……」

「ううん、大丈夫だよ」

 

 ロケ以外で行くのはかなり久しぶりだ。

 桂馬くんと遊園地デートかぁ。凄く楽しみだ。

 

 

 

  ……そして週末……

 

 

「きょ、今日も良い天気だね桂馬くん!」

「……おい、緊張しすぎだ」

「あぅぅ……」

 

 待ちに待った週末がやってきたわけだけどさ、デートって何を喋れば良いの!?

 台本があればスラスラ言えるのに。

 

「あ、そうそう。その服似合ってるぞ」

「え? あ、ありがと」

 

 昨日家に帰ってきたエルシィさんに協力してもらって私のマンションから回収してきたお気に入りの服だ。

 気合入れすぎて引かれたらどうしようかと思ってたけど杞憂だったみたいだ。

 ……お世辞かもしれないけどさ。

 

「さて、まずは駅に向かうぞ。

 全く、現実(リアル)では移動だけで金がかかるな」

「え、もしかしてお小遣いが少ないとか?

 私がお金払おうか?」

 

 私の為に遊園地まで行くんだし。

 

「いや、構わない。金ならM資金があるから問題は無い。

 単純に現実(リアル)のクソゲーっぷりを愚痴っただけだ」

「そ、そう」

 

 M資金って何だろう?

 

 

 

 

 そんなこんなで電車に乗って隣の鳴沢市へと向かう。

 初めての2人での下校の時に『電車での登校と徒歩での登校では違う』みたいな事を言ってたけど、実際に2人で乗ってると確かに雰囲気が違う気がする。

 座ってのんびりと会話する事ができる……みたいな利点もあると思うけど、赤の他人がそこそこ近くにずっと座っているという事にもなって……

 

「何となく……話しにくい」

「ん? どうした?」

「ああ、いや、あの……やっぱり2人で歩いてたいなって」

「……徒歩でデゼニーシーに行くのか? それは流石に面倒だろう」

「いや、そうじゃなくって!!」

「冗談だ。雰囲気とかそういう意味だろ?」

「そうそう。最近はずっと2人だったから、知らない人がずっと近くに居ると落ち着かないっていうか……」

「理解はできるな。ゲームでそういう類の事を言うヒロインは沢山居るからな」

「あ、理解できるってそういう……」

「赤の他人なんて無視して生きた方がどう考えたって楽だろう」

「桂馬くんにとってはそうなのかもしれないけどさぁ……」

 

 桂馬くんってそういう所がさっぱりしてるというか……

 正真正銘、現実(リアル)の事をクソゲーだと思ってるよね。女の子の事だけじゃなくって、現実(リアル)の事ほぼ全部。

 学校でもずっとゲームしてて誰とも話さないし。

 ……って言うか、見慣れ過ぎて見落としてたけど今もゲームしてるし!

 

「あ、あの、桂馬くん、えっと……」

「ん? どうかしたか?」

「えっと……いや、何でもないよ」

「? そうか」

 

 デート中にゲームしてるってどうかと思うんだけど……まあいいか。桂馬くんだし。


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