もしエルシィが勾留ビンを使えなかったら   作:天星

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記憶操作の範囲

「お疲れ、桂馬くん」

「最後はほぼ結の独壇場だったからあまり疲れてないけどな。

 それより、ちゃんと討伐できたか?」

「うん。ディアナさんが一発で捻り潰してたよ」

「……流石は女神だな」

 

 それでもまだ不完全な復活なのだろうか? 完全復活したら本当に神様になりそうだ。

 いやまぁ、元から本人が神だと言ってるんだが。

 

「自分で思っていたよりも力が戻っているようです。

 天理と結婚してくれれば更に強くなれます」

「お前、隙あらば結婚を勧めるな……」

「当然でしょう。結婚とは愛が最高に高まった証、生涯添い遂げると誓った証です!

 これ以上の『愛』は存在し得ないでしょう」

 

 『結婚は人生の墓場』なんていう嫌な話もよく聞くけどな。

 ゲームにおいて結婚式はエンディング中のエンディング、王道のエンドだが……だからこそそう軽々と起こす事はできない。

 あくまで最低条件だが……

  1、子供の頃からの因縁!

  2、ドラマチックな状況でのプロポーズ!!

  3、教会でのキスをバックにHAPPY ENDの文字をドン!!!

 これくらいできるほどの仲であれば、墓場などにはならないだろう。

 何だと? そんなのは不可能? フッ、これだから現実(リアル)は。

 

「それより、今回の約束、忘れていないでしょうね?」

「週末に遊園地に行くんだろ? 勿論忘れてない」

「そうですか。安心しました。ではまた週末に」

 

 そんな台詞を言い残して去っていった。

 ……家が隣だから僕達が向かう方向も同じなんだが……少し休んでから出発するか。

 

「あ、そう言えばさ」

「どうした?」

「今回の件、地獄への報告ってどうするんだろう?

 エルシィさんが居ないからやり方が分からないんだけど……」

「……数日遅れるくらい問題ないだろう。きっと」

「そうだと良いけど……」

 

 

 

 

 

 

 

 というわけで、数日後。エルシィが帰ってきてからだ。

 ん? 天理とのデートはどうしたって? それは後で語らせてもらおう。

 

「よし、報告完了です!

 いや~、凄いですね! 私が居なくても駆け魂を見つけて討伐までこなしちゃうなんて!!」

 

 お前の存在価値がかなり薄れてきているんだが……そこは理解しているんだろうか?

 してないだろうな。明らかに。

 

「エルシィさん、報告完了って事は記憶操作は明日までに終わる?」

「え? そうですね……多分明日までには終わってると思いますよ~」

「分かった。じゃあ明日は私が学校に行くから替わって」

「え? はい! 分かりました!!」

 

 今回の件を利用して少し気になっていた事の確認ができそうだな。

 結の記憶……『攻略対象ではないが、それに近しい人物の記憶』がどうなるのか?

 僕もかのんも気になってたんだよ。

 

 

 

 

 で、更に翌日。

 

「確認してきたよ。結さんはほぼバッチリ覚えてた」

「やはり、そうか」

 

 あくまで一般人として結と接触したから消去の必要無しと判断しただけかもしれんが……地獄の記憶操作ってやっぱり雑だな。

 

「結の記憶は失われなかったんだな?

 と言うことは……」

「麻美さんの妹、郁美さんの記憶もほぼそのままの可能性が高いね」

「ああ」

 

 以前、かのんが軽音部の部室に行った時、麻美がかのんに対して質問をしていた。

 僕達も疑問に思ったのだが……よく考えたら麻美を攻略した場所であるガッカンランドにはかのんも来ていた。しかも珍しく変装無しで。

 だから、ガッカンランドに呼んだ僕と、そこに居たかのんが知り合いだったと知って何らかの繋がりを感じたんじゃないだろうか? 偶然同じ場所に居たというだけではなく、何かがあったと。

 

 補足しておくと、攻略場所にガッカンランドを選んだのは僕だ。かのんのスケジュールに合わせて僕が郁美に頼んで場所を変えてもらった。

 郁美にまで記憶操作が及んでいたならその辺の記憶はほぼ間違いなく消し飛んでいるだろうが、まともに記憶操作されてないなら麻美が郁美から聞き出した可能性は高い。

 

 予想通り、記憶操作が雑だっただけのようだが……郁美に女神が居る可能性まで一応有り得たからな。確認できてよかった。

 記憶操作の範囲が概ね確定できれば、その影響を考える事が可能だ。

 郁美の記憶から麻美がどのような影響を受けるのか……じっくりと考えながら進めていこう。

 

 

 

 

「そう言えば、そろそろ体育祭だね。桂馬くんは……」

「当日に腹痛と頭痛と喉の痛みと高熱に襲われて休む予定だ」

「……凄い予定だね」

 

 うちの体育祭はクラス毎に得点を競っていく方式だ。

 テキトーに得点が少ない競技に出るフリをして仮病で休ませてもらおう。

 

「それより、お前は参加するのか?」

「私? うーん、どうなるかなぁ。仕事次第だね」

「……飛び入り参加したいなら僕が病欠した枠に入るといいさ」

「そ、それはどうなのかな……?」

 

 体育祭……同じクラスの連中に女神が居るかの調査ができる機会ではあるのか?

 ……面倒なんでパスしたいが……機会があればやっておくか。







 以上で美生編終了です!
 今回は最初にどんな状況からスタートさせるかそこそこ悩みました。
 結局は原作通りに貧乏な状態でしたが、没落してない設定でスタートさせる案がありました。
 心のスキマを捏造するのが大変だったので没になりましたけどね。
 終着点は何も考えずに突き進んでいたらこんな感じになりました。
 結さんは世界が違ってもプレイヤーキャラなのだろうか……?

 次回は……天理さんとのデートを書きます。何にも考えずに突き進んでいたらいつの間にか発生してたイベントですね。
 原作みたいにハクアさんは居ないのでオリジナルになります。上手く書けると良いですけど。

 更に次は体育祭でもやっておきます。流れは全く決まってません!!

 その次が楠編ですかね。一体全体どういう流れになるんだろうか……

 では、また次回お会いしましょう!!

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