もしエルシィが勾留ビンを使えなかったら   作:天星

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 本編の続きを期待した方はゴメンナサイ。ただのおまけです。

 感想欄で読者様からアイディアを頂いたので。
 時系列としては天理との話し合いが終わってかのんが帰った後になります。
 あくまでおまけなので本編には(あんまり)影響しないです。
 相当急いで作ったのでクオリティは気にしないでください。あくまでおまけです。
 ではどうぞ。




おまけ もし遊園地に某洋菓子店が出店していたら

「さて、次はあっちに行くか」

「うん!」

 

 迷い無い動作で桂馬君が私を案内してくれていた。

 流石は慣れてるだけの事はあるね。

 

 そんな感じで過ごして、丁度3時頃だったかな。その店を見つけたのは。

 

 

『はい、大安売りだよー! 全部のケーキが300円引きだよー!』

 

 

 メガホンか何かで増幅されたその声は私たちが通ろうとした広場の隅っこから聞こえてるみたいだった。

 と言うか……ケーキ300円引きってどういう事? 400円のケーキが100円になっちゃうよ?

 

「桂馬君、あのお店って……」

「前回行ってここを通った時には無かったな。新しくできたのか、特定の時間限定なのか……」

「今の時刻は……ああ、3時だったんだね。おやつの時間限定って事?」

「分からん。興味があるなら行ってみるか?」

「うん、行ってみよう。300円引きっていうのも少し気になるし……」

「フン、どうせ元値がボッタクリ価格で、値引きって言葉で客を釣ってるだけだろう。

 1300円の所を1000円とかってな」

「そうかもしれないけどさ……とりあえず行ってみよう?」

 

 とりあえず行ってみる。そうすれば分かるはずだ。

 

 段々と見えてくる屋台みたいなテント、

 

 大きなガラスのショーケース、

 

 そして……ポツンと1個だけあるケーキ。ホールじゃなくて1ピースの。

 ショーケースが無駄に大きいせいで逆に寂しい事になってる。

 

 そして、値札……

 

「……1個、70000円……?」

「予想以上のボッタクリだったな!?」

 

 ななまん、ひく、さんびゃく、は……69700円。

 値引きって言葉で吊るっていうレベルじゃない。どう考えても高すぎる。

 

「おやお客さん、どうですか一つ」

 

 値段に固まってる私たちに店主らしき人、黒っぽい服でタバコを吸ってる怪しい人が声を掛けてきた。

 

「あ、あの……高すぎませんか? 普通400円くらいですよね……?」

「おお、よくぞ訊いてくれました。この値段には深い理由があるんですよ。

 うちの店は今は3人兄弟だけでやっているんですよ」

「? それが何の関係が……?」

「ケーキ製造の諸経費に生活費、学費に税金、バターの高騰に他のスイーツ店の増加、僕らを取り巻く状況はケーキのように甘くは無い。

 僕の弟の試算によれば、僕達に必要な金額は1月あたりなんと30万! 1週間だと約7万です!」

 

 7万? その数字って……

 

「というわけで、この値段なんですよ」

「1個のケーキで1週間分稼ごうとするなよ!!!」

 

 店主さんの暴論に桂馬君が鋭いツッコミを入れた。

 もしかして、ここは店じゃなくてパフォーマンスか何かをしているだけなんじゃないだろうか?

 

「ほら、今ならキャンペーン中なんで300円引きですよ?」

「0.4%値引いたくらいで変わらんだろうが! 消費税の1/10以下だぞ!!」

 

 ……と、とりあえず、別の場所に行こう。時間が勿体ないし……

 そう思った時だった。

 

「こらぁ!! なにフザケてるんですか兄さん!!」

「ごはぁっ!!」

 

 突然誰かがやってきて、怪しげな店主さんをぶっとばした。

 

「イタタタタ……突然何ですかセージ君。カルシウム不足ですか?」

「何でこんなバカでかいショーケース借りてるのに1つしか作らないんですか!!

 1種類だけっていう時点でそもそもあり得ないのに!!」

「こんなちゃんとした設備も無い場所でしっかりしたケーキがたくさん作れるわけ無いでしょう」

「じゃあ何でここに出店したんだよ!!」

 

 ……一瞬通報しようかどうか迷ったけど、どうやらお知り合い同士のようだ。

 と言うか、さっき『兄さん』って言ってたから、ただの兄弟喧嘩みたいだ。

 

「ああもう!! ああ、すいませんお客さん、このバカな兄さんが失礼な事を言わなかったでしょうか?」

「ああ……問題ない。フザケた事は言っていたが失礼な事は言ってなかった」

「フザケた事は言ってたんですね……ホントすいません。

 あ、そうだ。お詫びにこのクレームブリュレを……」

 

 弟さんはそう言いながらショーケースの中からケーキを取り出した。

 クレームブリュレって言うんだね。

 

「いいのか?」

「どうせこれ1個だけ売っても、普通の価格で売るだけなら大赤字なんで構いませんよ。ハハハ……」

「……流石にタダで貰うのはな……定価だとどのくらいなんだ?」

「うーん……腕だけは良い兄さんの技術と、遊園地っていう場所を考えると1000……は流石に多すぎるか。700円くらいですかね」

「そうか。なら400円だけ払おう。300円引きだとそこの店主が言ってたからな」

「えっ、いいんですか!?」

「ああ。これで」

「は、はい! ちょっと待ってて下さいね。包みますんで」

 

 そんな感じで、弟さんが慌しく包んでくれた1個のケーキを持って私たちは広場を後にした。

 

 

 

 

 

「……ねえ桂馬君、何でわざわざ買ったの?」

「ああいうスッとぼけた奴に限ってゲームだと重要キャラだったりするからな。

 このケーキも実は凄く美味いかもしれん」

「そうかなぁ……タバコ吸ってる怪しげな店主さんが作ったケーキだよ?」

「何だ、気付かなかったのか。アレはタバコじゃないぞ」

「えっ? じゃあ何なの?」

「線香っぽい匂いがしたが……何なのかは分からん。

 それより、食べたらどうだ?」

「桂馬君は食べないの?」

「僕は甘いもの苦手だからな」

 

 そう言えばそうだった。

 それじゃあ……頂こうかな。

 

「はむっ………………

 っっっっっ!?!?!? お、美味しい!! 凄く美味しい!!!!」

「そ、そんなにか?」

「うん! 今まで食べたどんなケーキよりも美味しいよ!!

 桂馬君も食べてみたら?」

「そこまで言うならそうするか。スプーン2個目は……無いか。ちょっと借りるぞ」

「うん……ん?」

「…………確かにケーキにしては美味いな。店の名前くらいは覚えておくか。

 ほら、返す」

「え、う、うん……」

 

 あの、桂馬君……? これって、間接……

 

「ん? どうした?」

「い、いや、何でもないよ。これはちょっと後で食べる事にするよ」

「そうか。んじゃ、次行くか」

「う、うん……」

 

 

 この後、ケーキとスプーンがどうなったのかは……皆さんのご想像にお任せします。







 何とか書けた!!
 1時間くらいで急いで書いたんで天理にかのん成分が混ざっちゃってるけど気にしないでください。

  補足
 神のみは土曜が休みじゃなかったりスマホがなかったりする世界なので消費税は5%としておきました。8%だったら『(割引額は)消費税の1/20じゃないか!』ってなってましたね。
 まぁ、7万に対する400は厳密には0.4%じゃないので結局『約1/20』みたいな表現になりそうですが。

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