もしエルシィが勾留ビンを使えなかったら   作:天星

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01 アイドルのお友達

 というわけで、明日は学校に行って春日さんと話してみる事になった。

 あと、折角だから授業も出席しておきなさいとの事だ。授業を受けられるのは久しぶり……でもないか。私名義では久しぶりだけど。

 

 で、春日さんについてだけど……うちの学校の3年生であるという情報しか分からない。

 明日学校で聞き込みをする事もできるけど、それだけに頼るのは不安だし、そもそも私じゃ満足に聞き込みできるかも怪しい。

 なので……こうする事にした。

 

「もしもし?」

『もっ、もしもしっ!? か、かのんちゃんどうしたの!?』

「ちょっと教えてほしい事があって電話させてもらったんだ。今大丈夫?」

『うん! 全然完璧に大丈夫だよ! 私に分かる事なら何でも訊いて!!』

 

 同じ学校に通うお友達に電話させてもらった。

 軽音部の非公認の部長代理ことちひろさんにね。

 前に会計として出向いた時に番号を交換しておいたんだ。

 情報通のちひろさんなら、春日流羅新活殺術の伝承者たる春日楠さんを知っている……かもしれない。

 ……知ってると良いなぁ……

 

 

「……っていうわけで、春日楠さんって人を探してるんだけど、何か知ってる?」

『うーん、イケメン男子ならともかく、女子の名前は……あ、いや、何か聞いたことある気がする』

「ホントに?」

『アレは確か……あ、そうだ。私の知り合いの知り合いの知り合いの子の話なんだけどね』

「う、うん……」

 

 ホントに大丈夫なんだろうか、その話。

 

『女子空手部なんだけど、今の……って言うか去年からの部長が凄く厳しい人らしくてね。

 その人が部長になってからたった2日で他の部員が0になったらしいよ』

「2日で!? どれだけ厳しかったんだろう……?」

『私の知り合いの知り合いの知り合いによれば『地獄の存在を知る事になった』とか『絶望という言葉の意味を知った』とか、そんな感じの事を言ってたらしいよ』

「うわぁ……

 それで、その部長さんっていうのが……?」

『そう、春日さんって名前だったはずだよ。

 会いたければ放課後に女子空手部の部室に行けば会えるはず』

「あれ? でも3年生はもう引退してる時期じゃないの?」

『よう分からんけど、受験勉強よりも鍛える方が大事なんじゃない?

 部員は部長しか居ないんで春日さんの他に部室を使う人も居ないから、そのまま使わせてもらってるらしいよ』

「なるほど……分かった。ありがとね」

『これくらいならお安い御用さ! じゃあ、またね』

「うん、またね」

 

 ふぅ……やっぱり友達って良いな。また今度電話したい。

 よし、知りたい情報は知れたから、明日に備えて今日はもう寝よう。

 

 

 

 

 

 

 

 

  ……翌日 昼休み……

 

「はぁ……騒がしいな」

「かのんちゃんが来てるからトーゼンでしょ!」

 

 今日は朝から騒がしかった。かのんの人気は凄まじいな。

 

 昨日の夜のうちにかのんが登校する事は知らされていた。そしてその理由も。

 正直な所、かのんがこれ以上鍛える必要があるのかは疑問だ。人に向かって容赦なくスタンガンを放てる時点でそんじょそこらのチンピラが相手なら負ける事は無いだろうに。

 でもまぁ、本人がやる気なら僕が口を挟む事では無いだろう。影ながら応援させてもらおう。

 

 っと、それよりもだ。道が塞がらないうちに屋上に直行だ。

 

 

 

 

「今日も良い天気ですね~。

 少し風が肌寒い感じです」

「あーそーだなー」

 

 いつものように、エルシィと2人で屋上に来た。

 今日はいつもと違って下の方が騒がしいが、気にする事は無い。

 ……が、僕達の後に続いて突然ガチャリと音を立てて開いた扉は気にした方が良さそうだ。

 振り返ると、そこには麻美が居た。

 

「はぁ、はぁ……よ、良かった、追いついた」

「どうしたんだ? そんなに息を切らせて」

「あの、私じゃなくて……」

 

 そこで言葉を切ると一瞬だけ全身が光った。

 顔には特徴的なペイントが現れ、目つきも変わっていた。

 

「妾の用事じゃ。麻美にはちょっと頑張ってもらったぞよ」

「おいおい、ちゃんと後でお礼言っとけよ?」

「勿論じゃ! で、えっと……あれ、なんじゃったかの?」

「オイ!!」

「え~、あ、そうじゃそうじゃ。お主らのクラスのアイドルについてじゃ!」

「……あいつがどうかしたのか?」

 

 補足説明しておくと、かのんの事はディアナと同様にアポロにも喋っていない。

 軽音部での一件の影響で知り合いという事に(かのんの台詞を引用するなら『取引相手』という事に)なっているが、それだけだ。

 

「うむ。あの者じゃが……妙な気配を感じるのじゃ」

「妙?」

「そうじゃ。妾の勘違いでなければ冥界の魔力と天界の理力の両方を感じたのじゃ」

「理力? ああ、魔力の天界バージョンみたいなものか」

「そんな感じじゃな。どうじゃ? 凄く妙じゃろう?」

「ふむ……」

 

 悪魔の力と女神の力の両方を感じた……ねぇ。

 

「……なるほどな」

『あの……桂馬君はかのんちゃんと知り合いなんだよね?』

「……まぁな」

『魔力とか、理力とか、良く分からないけど……どう考えても只者じゃないよね?

 桂馬君は何か知ってるの』

「そうだな……お前が気にする必要は無いとだけ言っておこう」

「何なのじゃ隠し事なんぞしおって。妾との仲であろう?」

「どんな仲だよ一体」

「細かい事は気にするでない!」

「……はぁ。

 んで、話はそれだけか?」

「だけじゃ!」

「よし、じゃあサッサと飯を食うか」

「いただきま~す!」

「あっ、妾も混ぜてほしいのじゃ!

 と言うか、お主らが女神である妾を誘うべきであろう!!」

「そんなコト知るか」

「むぅぅぅう!!」

 

 で、結局3人で昼食を食べた。

 あぁ、平和だ。もうしばらくのんびりしていたいよ。







 かのんの妙な気配については本編でも後書きでもあんまり突っ込みすぎるとうっかり口を滑らせてしまいそうなので触れないでおきます。
 どういう事なのか存分に悩んでください♪
 あとアポロかわいい。

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