桂馬くんとのキス。
それと同時に心の中のモヤモヤが抜けていく感覚。
後ろへ振り向くと駆け魂らしきドロドロしたものがそこに居た。
「さて、後は頼むぞ」
「うん、任せて」
さっきまでと比べて凄く心が軽い。
さっきまでも、そして今もずっと桂馬くんの事ばかり考えてるはずなのに、何だかすっごく軽くなった。
桂馬くんの言ってた通り依存、だったのかな?
おっといけない、考えるのは後! 今は目の前の駆け魂を何とかしないと!
「エルシィさんはまだ来てないの?」
「あのバグ魔、こんな時に遅刻なのか!?
……そうだ、拘束魔法だ! アレを使えば呼べるはずだ!」
「えっと……えいっ!」
それっぽく念じるとペンダントから何かが飛び出して駆け魂を拘束する。
『グゥォォォォォオオォォ』
「くっ、うぅぅ……」
「大丈夫か?」
「ちょっと、キツい、かも……」
拘束魔法を維持するのが結構キツい。
駆け魂が暴れてるせいかな?
「中川、拘束魔法を維持したまま歌えるか?
この場所なら防音してなくても問題ない!」
「……やってみる!」
呼吸を整えながら頭の中で使う歌を選別する。
……まだ記憶は残ってる。いつ消えるの?
歌を歌い終わったら?
だったらそれまでの間、ありったけの愛を込めて、歌おう。
「♪~♪♪ ♪♪~♪♪ ♪♪~♪♪~♪~♪~♪♪~
♪♪~♪♪~♪♪~ ♪♪♪♪~♪♪~♪♪~」
駆け魂が弱っているのか、拘束魔法から伝わる抵抗が徐々に減っていく。
「♪♪~♪♪ ♪♪♪♪~♪~
♪♪♪♪~♪♪♪ ♪♪♪♪~♪~♪♪♪~」
「ただいま到着しました! 結界を張ります!」
「遅い! 何をしていた!!」
「す、すいません!!」
「♪~♪♪ ♪♪~♪♪♪ ♪♪~♪♪~♪♪~♪♪~
♪♪~♪♪~♪♪~ ♪♪♪♪~♪~♪♪~」
歌ってる間にエルシィさんの結界が張られる。
もう拘束魔法を解いても良さそうだ。
「♪♪~♪♪ ♪♪♪~
♪♪~♪♪♪~♪♪♪♪♪♪~♪♪~♪♪~♪♪~」
歌うのを途中で止めたら、どうなるのかな?
ひょっとすると記憶は無くならないのかもしれない。
……でも、私は歌い抜かなくちゃならない。
「♪♪♪♪♪♪~♪♪ ♪♪♪~♪~♪~
♪♪~♪♪ ♪♪~♪♪ ♪♪~♪♪~♪~♪~♪~♪~♪♪
♪~♪♪♪ ♪♪♪♪~♪~ ♪♪~♪♪~」
だって、ここで歌いきれなかったら、桂馬くんの信頼に応えられなかったら、
桂馬くんの許嫁なんてなれないから!
「♪♪♪ ♪♪♪ ♪♪♪ ♪♪~ ♪~♪♪~」
私は、奇跡がある事を信じてるよ。
「♪♪♪ ♪♪♪ ♪♪♪」
そう、これは私のらぶこーる。
「……あなたに」
歌の一番を歌い終えると同時に駆け魂は消滅した。
「お疲れさま。よくやってくれた」
「うん、私、がんばっ……」
あれ? 何か、めまいが……
「おい、中川!?」
意識が、遠のく……
……そっか、もう終わりか。
次目覚めた時、きっと私はもう居ない。
……でも……
きっと、また会おうね。桂馬くん。
ハーメルンの規約上、歌詞の掲載はできないんですよねぇ……
まぁ、単純に歌詞を書くのも微妙だったのでこれはこれで良いですね。きっと。
ちなみに曲名まではセーフですが、言わなくても十分ですかね。