もしエルシィが勾留ビンを使えなかったら   作:天星

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スポーツフェスティバル編
プロローグ


 ついに体育祭の日がやってきた。

 1週間ほど前は女神の調査がうんたらかんたらで出る必要があるみたいな事を言っていたが、麻美がアッサリとアポロの事を教えてくれたので無理に出る必要も無くなった。

 そういうわけで、今日は休もう。アレだ、ほら、丁度テロリストと遭遇して銃で撃たれたんだよ。いやぁ、傷が悪化するといけないから休むしか無いな! あー残念だな。

 仕方ないからゲームしよう! 何? そんな事したら撃たれた傷(嘘)が開く? フン、ゲームしてて怪我が悪化するなんてあるわけが無いだろう。

 

「フハハハハハハ!! ゲームに没頭できる日常、なんて素晴らしいんだ!!」

「……そんな事だろうと思ったよ」

「っっ!?」

 

 突然後ろから声が聞こえたので慌てて振り返る。

 そこに居たのは、かのんだった。

 

「な、中川!? どうやってここに!?」

「羽衣さんに鍵を複製してもらったんだよ。

 普段ならともかく、今回は明らかに桂馬くんが悪いから使わせてもらったよ」

「ぐっ、まさかお前は僕を体育祭などというものに連れていこうとしているのか!?

 麻美があっさり吐いてくれたから行く必要が無くなったというのに!!」

「いや、麻美さん以外にも女神候補は一応居るわけだし……

 それ以前に、サボるのは良くないよ」

「お前だってしょっちゅう学校をサボって……ってのは流石に暴論か。

 だがしかし! 僕はここから動くつもりは無い!」

「……そんな事を言うんだったら『コレ』の実験台になってもらっちゃおうかなー」

 

 そう言いながら中川が取り出したのは伸縮する固そうな棒だった。特殊警棒……か?

 いや、僕の本能がコレは何か別の物だと告げている。

 

「……何だその悍ましい気配を放つ棒は」

「スタンロッドだよ。棒の先端から超高電圧の電気を流す感じの奴。師匠との組手でも使ってるんだけど、実際に電気を流した事は1回も無いんだよね~」

 

 そう言いながらにこやかな顔でバチバチと火花を散らす。

 ……どうやら部屋への侵入を許した時点で敗北は確定していたようだ。

 

「……分かったよ。行くか」

「よろしい。じゃ、準備してね」

 

 

 

「あ、そう言えばお前結局体育祭出る事になったのか?」

「うん。全員参加の競技と、師匠のお手伝いにね」

「……そこまで出るなら僕の二人三脚も代わりに出てくれれば良かったのに」

「いやいや、麻美さんもきっと楽しみにしてるよ? 出てあげようよ」

「……どうだかねぇ」

「桂馬くんは攻略を失敗したって言ってたけど、完璧に失敗したわけじゃないんでしょ?

 女神の事もあるんだし、ちょっとは気を遣ってあげたら?」

「…………」

 

 女神……か。

 ディアナによれば、女神は愛の力で復活する。

 そしてより大きな愛の力を手に入れる為に結婚しろと迫ってくる。

 だが、アポロはそこまで積極的に迫ってくるわけじゃない。

 アポロがノーテンキなだけ……ってわけじゃないんだろうな。

 

「……ま、僕にできる範囲でやるか。

 お前も勿論協力してくれるんだよな?」

「えっ、そりゃできる範囲で協力はするけど……私にできる事ってある?」

「……今は無い。が、後で必ず出番が来るだろう。その時は、頼むぞ」

「…………分かった。私に任せて」

 

 6柱の女神全てがこの近くに集められているなら、僕達は何らかの形で必ず関わる事になるだろう。

 何故断言できるかって? それは勿論、現実(リアル)は悪い意味で信頼できるクソゲーだからだ。

 

 

 

「あ、そう言えばお前の師匠の記憶って操作されてないのか?」

「攻略と全く関係ない行動だったからね。一応、チラッと見られた駆け魂や魔法とかの操作はされてるらしいよ」

 

 

 

 

 

 

 うちの学校には高等部と中等部があるが、体育祭は別々の日に行われる。今日が土曜で、明日には中等部の体育祭が行われるはずだ。

 合同でやるとなっていたらかなり大掛かりなものになったのだろうが、まぁ普通と言える規模に収まっている。

 

 イベントスキップが実装されていないクソゲーな開会式が終わるとクラス毎に集まる。

 集まった連中に対してドS(二階堂)が激を飛ばす。

 

「諸君! 今日1日でこのクラスの存在意義が決まる!

 絶対に優勝せよ!!」

 

 激……激で良いんだよな? ちょっと何言ってるかよく分からないが多分激だ。

 

「あの二階堂という教師も大げさな事を言うのぅ」

「……おいアポロ、人が大勢居る場所で入れ替わるのは止めておけ」

「良いではないか。鏡も無いし」

「……これで良いか?」

 

 PFP(予備)で麻美を映し出す。

 くそっ、片手だと操作しづらいな。

 

『助かったのじゃが……お主、どうしてそのぴぃえふぴぃを2台も持ち歩いているのじゃ?』

「? 何か問題でもあるのか?」

『そんなキョトンとされても困るのじゃが……』

「それに、2台じゃないぞ。2台だけな訳が無いだろう?」

 

 今日は体育祭用のジャージを着ているのでいつもよりは少ないがそれでも沢山持ち歩いている。

 

『……お主、本当に人間なのかや?』

「あの……それ以前にどうやって片手で操作してるの?」

「? 見たまんまだが?」

「見ても分からないから訊いてるんだよ……」

「フッ、おかしな奴らだ」

『お主の方がおかしいんじゃからな!?』

 

 全く失礼な。

 さて、出番まではまだまだ時間がある。少しのんびり過ごすか。







 原作のエルシィのモノローグで『私たちが目指すのは高等部優勝!』みたいなのがあるので中等部も体育祭はやってるんでしょうね。
 ただ、紅組白組とかに分かれてるならともかく、クラス単位で競うのに同時にやる意味はあまり無さそうだし、漫画の絵を確認しても高等部の得点表しか見あたらないので週末のうち片方ずつ行うとしてみました。
 神のみ世界では土曜日は休みではないですが……高校の体育祭なら保護者もあまり来ないから別に良いかな~と。

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