出発前にかのんが軽く触れていたように、クラス全員が参加する競技も存在する。
なので、僕が立候補した競技は二人三脚だけだがそれ以外にも出場しなければならない競技が存在する。
例えば……男子が全員出場する棒倒しとかな。
……何でこんな前時代的な競技があるんだろうな? ホント。
で、これも前に触れて……いや、触れてないか? そう言えば触れてなかった事だが……
うちの学校は元々女学院だったんで男子の数が極端に少ない。具体的な比率で表すとおよそ1対5だ。
……まさかとは思うが女学院の時代からあったんだろうか? この競技。
例えば、うちのクラスはいつも居ないかのんを含めても30人だが、男子は僕を入れて5名だ。とてもじゃないが棒倒しなんてできやしない。
なので、原則としてクラス対抗の体育祭の中でもこれだけは学年対抗で行われるのだ。
うちの学年の4クラスで20人のチーム、それが各学年で3チームなので合計60人。こんな男女比でもかき集めればなんとか形になるようだ。
『お前ら! 気合はバッチリか!』
「「「「「「おおおおおーーー!!!!」」」」」」
2年のリーダーらしき人物が椅子の上に立って何か喋っている。うるさい。
まあいいや。今のうちにPFPを避難させておこう。割れたら大変だからな。
えっと……ああ、丁度いい所に居た。
「吉野、ちょっといいか」
「え? あ、うん。どうしたの?」
「今から棒倒しなんでコレ預かっててくれ」
手に持っていたPFPを渡し、懐から予備を渡し、予備の予備を渡し、予備の予備の予備を……
……中略……
……の予備を渡し、これで完璧だ。
「け、桂馬君……こんなにどうやって持ち歩いてたの……?」
「ん? 手で持ち歩いていたが?」
「明らかに手だけじゃないよね!?
って違う! そういう問題じゃないよ!!」
『明らかに人間の範疇を越えておるのぅ。落とし神とはよく言ったものじゃ』
「ん? 確かに僕は落とし神を名乗っているが、お前に言った事があったか?」
『郁美が言ってたのを聞いたぞよ!』
「……ああ、なるほど」
そう言えばあいつには名乗ってたか。
まぁ、何はともあれ準備完了だ。
棒倒しなんて所詮は必勝法がほぼ確立されているゲームだ。気楽に行こう。
……数分後……
「ぐはっ!!」
あれ? おかしいな。棒倒しなんて楽勝のはずなのに……
……あ、しまった、これ、
自信満々にグラウンドに出て行った桂馬君はアッサリと散っていった。
だ、大丈夫なのかなぁ……
『……あ奴、どうしてあんなに自信満々だったのじゃ?』
「さ、さぁ……」
桂馬君が私に預けたPFPを鏡代わりにしてアポロと話す。
テレパシーみたいなのでも話せるけど、何かに姿を映した方がお互いに話しやすいのだ。
『じゃが、これはチャンスじゃな』
「どういう事?」
『忘れたのか? 妾の専門は医術じゃ!
妾の力を使って桂木を介抱してやればググッと距離を縮められるぞよ!』
「……距離はともかく、手当てはしてあげたい。お願いできるかな?」
『うーむ、恋愛は妾の復活にも繋がるから麻美には頑張ってほしいのじゃが……無理強いはできんのぅ。
む、競技が終わったようじゃな。助けに行くと……』
「神にーさまー!! 大丈夫ですかぁ!!!」
行こうとしたら、エリーさんに先を越されたようだ。
えっと……どうしよう。
『何をボサッとしておるのじゃ。
麻美も行くのじゃ!』
「そ、そうだね。行こう!」
その後、エリーさんと一緒に桂馬君を保健室まで運んだ。
何かボロボロになってるけど、大丈夫なのかなぁ……?
ちょっと短いけどここまでです。
原作9巻カバー裏を見ると2-Bの席の数はかのんの席も含めて30。
体育祭の得点ボードを見る限りではクラスの数は3学年×4クラスで計12クラス。
よって、高等部の生徒数は360人。
中等部も同じとすると合計720人です。
しかし、原作1巻では男子の数約200、女子は約1000との事です。合計は約1200。
これはまぁ、単純に学年毎に生徒の数が結構違うって事なんでしょうね。
ただ、人数差がある設定にすると何かと面倒なので人数はそのままで男女比だけ1巻の設定を採用したいと思います。
しっかし改めて見ると相当偏ってますね……どっかの監獄とか兵器の訓練所とかに比べれば大分マシですけど。
必勝法がほぼ確立されてるゲームの元ネタは某有名なギャルゲーの2作目。
あのゲームでは何故か主人公が戦略の指揮を執るので適切な指示を出してやれば大体勝てる……らしいです。
なお、仮に