もしエルシィが勾留ビンを使えなかったら   作:天星

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 本日2話目です。
 飛ばしてないか気を付けてください。




そして運命は動き出す

  ……時はほんの少し遡る……

 

「♪~♪♪ ♪♪~♪♪♪ ♪♪~♪♪~♪♪~♪♪~」

「凄いです! ちゃんと効いてます!」

 

 古悪魔(ヴァイス)の身体に大きな穴が空いた時は少し驚いたけど、相手は宿主という実体から離れた存在だから効きが良いんだろう。

 ゲーム風に言うのであれば、幽霊相手には物理攻撃は効きにくいけど魔法攻撃なら効きやすいみたいな感じかな。

 理屈はともかく、よく効いているようだ。

 いつものように完全に消滅させる事はできなくてもかなり弱らせられそうだ。そうなったらあとは上の方にいる駆け魂隊の人達に任せても大丈夫だろう。

 そう考えて私は歌いつづけた。

 

 

 

 

 駆け魂を真っ直ぐ見据えて、歌い続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だからこそ……私は気づけなかった。

 後ろの方から響いていたはずの風切り音に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!! 姫様!!!」

 

 最初に感じたのは、横からの強い衝撃。

 

 その直後に聞こえたのは、何かが破裂したような嫌な音。

 

 

 振り向いた私が見たものは……

 

 重なるように存在する2人分の人影と、

 エルシィさんの背中から突き出た真っ黒な刃だった。

 

「……えっ?」

 

 何が起こったの? この人は誰? エルシィさんは無事なの?

 混乱したまま、疑問だけが溢れた。

 

「チィッ、せっかく女神を仕留めるチャンスだったのに、まさかエルシィに邪魔されるなんて!」

 

 目の前の少女、ドクロの髪飾りを着け、角を生やし、羽衣を身に纏った少女が喚く。

 

「だけど問題ない。もう一度っ!!」

 

 その少女が再び何かを手にした。そして手にしたそれからはエルシィさんに今刺さっているものと同じ黒い刃が現れる。

 

「今度こそその魂を消滅させ……」

 

キィィン

 

「……は?」

 

 空っぽになった手と、スタンロッドを振り抜いた私とを交互に見た少女が間抜けな声を漏らす。

 考える必要なんて無かった。コレは敵だ。

 まずは……仕留めてから考えよう。

 

「っ!? 何この魔力!? 女神じゃないの!? あんたは一体っ!?」

「うるさい」

 

 無心にスタンロッドを振るう。

 電気はもちろん流しているけど相手が気絶する様子は無い。

 

「痛っ、何コレ電気!? 何でそんな物騒なものを持ってるのよ!!」

 

 1発で効かないなら何発でも打ち込むだけだ。そのうちに効くだろう。

 

「くそっ、人間風情が、女神風情が、悪魔を舐めるな!!」

 

 羽衣の切れ端がいくつか飛んでくる。拘束でもする気だろうか?

 だけどね、羽衣さんってナノマシンの集合体なんだよね。

 人間なら気絶する高圧電流を流されて果たして正常に機能するのかな?

 

バチバチィッ!

 

「はぁ!? 羽衣を切り落とした!? ふざけんじゃないわよ!!」

 

 あんなの師匠の拳の方がずっと速い。当てられないわけがない。

 

「あーもう! 仕方ない。覚えときなさいよ!!」

 

 そんな捨て台詞を吐いて飛び立った。

 そして勿論、逃すつもりは全く無い。

 

「飛行魔法!? 一体どうやって……」

「……堕ちろッ!」

 

 スタンロッドで羽衣を切り裂くと飛行手段を失った少女は墜落した。

 すかさず追撃し、フルパワーで電気を流す。ロッドだけじゃ足りないなら、スタンガンも同時に使えばいい。

 

「きゃぁあああああ!!!!!」

 

 目の前の少女は悲鳴をあげて、今度こそ気絶したようだ。

 よし、これで倒した…………

 

 

「……って、そうじゃない! エルシィさんは!?

 いやでもこの人も放っとくのはまずいし……と、とにかく桂馬くんに連絡!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、桂馬と一緒に駆けつけたハクアの手によって襲撃者は勾留ビンに勾留され、短剣を受けたエルシィは桂馬の家まで運ばれた。

 その間エルシィは目を覚ます事はなく、刺さったままの短剣が放つ不気味なオーラだけが脈動していた。

 

 

 

 こうして、運命は動き出す。

 冥界と天界、そして人間界の命運を分ける戦いが、始まろうとしていた。







 フィなんとかさんはあっさりと捕縛。最初は怪我を負いながらも逃げ出す予定だったのですが、ブチ切れたかのんちゃん相手に逃げられるわけがなかったという。
 理力と魔力がそなわり最強に見える系のヒロインだから仕方ないね♪

 以前にかのんちゃんの指先の速度の試算をしたとき、ある読者様から『そのかのんを不意打ちとはいえ倒したフィオーレって実はすごかった・・・?』というコメントを頂いたので本当に強くする案もあったのですが、この辺の展開はだいたい決まってたので結局断念しました。ゴメンナサイ。


 では、おそらく最後から3番目になる例の企画を……上げようかと思いましたが、どうせすぐに情報が更新されてまた新しく上げる事になるのでやめました。
 女神編前の最後に回答したいという方は以前上げた『R5』の方にお願いします。

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=189515&uid=39849
(再掲)

 誰が女神の宿主か、皆さんはもう分かりましたか?


 さて、次回から女神編ですが……女神編の序盤は説明が非常に、非常に多いです。
 1ヵ月近く待たせた上にそこから数日説明で終える……というのはちょっとアレなので早速明日からキリの良い所まで投稿していきます。

 では、また明日。

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