もしエルシィが勾留ビンを使えなかったら   作:天星

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02 注視

「それじゃあ、明日の予定は

 僕は麻美と接触して情報を探る。

 エルシィはその手伝い。

 中川は……仕事か?」

「うん。そうなるね。

 そっちは頼んだよ、桂馬くん」

「うぅぅ~、もっとアイドルやってたかったですけど、仕方ないですね」

「当たり前だ」

 

 コイツ、自分の命が懸かってるっていう自覚があるんだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 教室に着くとエルシィが扉を開けて元気良く挨拶をする。

 

「おっはよ~ございま~す!」

「お~、エリー、今週は元気だね~」

「え~? 私はいつも元気ですよ!」

「はいはい」

 

 こいつクラスに馴染むの早いなぁ……

 悪魔っぽくないから人間に馴染むのが早いんだろうか?

 

 エルシィと仲良く話しているのが例の情報の情報源である小阪ちひろだ。

 いい加減でテキトーな感じのいかにもな現実(リアル)女だが、例の情報をくれた事に関してだけは認めてやろうじゃないか。

 

「そういえばちひろさん、例の話なんですけど……」

「あ~、麻美さんの話? いや、何かの間違いだとは思うんだけどね?」

「まま、そう言わずに。イケメンハンターこと小阪ちひろさんの情報網ってやつの力を見せてくださいよ!」

「そう言われちゃあ断れないね。よし、心して聞きなさい」

 

 何がイケメンハンターだ。

 自分から妙な称号を名乗ってる奴ほどイタいものは無いな!

 

「え~っと、あくまで噂だけど、何か授業中とかにオタメガの事をじっと見つめてるとかなんとか。

 まあ、黒板見ててその途中にオタメガが居ただけかもしれんけど」

「う~ん……有り得ますね」

 

 僕の席は教室のほぼ中心だ。

 それに対して麻美の席は僕の2つ後ろ……最後列で僕と同じ縦列と言った方が分かりやすいか。

 僕を見ていると言うより黒板を見ていたら僕が視界に入っていたという方が圧倒的に説得力がある。

 ま、噂なんて所詮そんなもんだな。

 

「あ~でも、授業中だけじゃなくて昼休みとかも見てるらしいよ」

「えっと……それはつまり……」

「キレイになった黒板を凝視する趣味が無いなら、本当にオタメガを見てるのかもね」

 

 それも何かの間違いだと思うが……

 ふと、視線を上げて教室の前の方を見てみる。

 ……注意を引くような物は見あたらない。

 ……少なくとも、現時点での僕の視点からは。

 

 ……いや、やっぱり何かの間違いだよな?

 

「それよりエリー、今度駅前に新しいドーナツ屋が出来たんだけどさ、今度一緒にいこーぜ!」

「あ、はい! ご馳走になります!!」

「いや、自分の分は自分で払いなよ」

「じょ、冗談ですって!」

 

 その後、小阪とエルシィの対話は他愛もない雑談が続いた……

 

 

 

 

 

 

  ……昼休み……

 

 授業終了のチャイムが鳴ったので視線を手元のPFPから正面へと向ける。

 先生が黒板をキレイにしてから教室を出る。

 その後に、注意を引くようなものは特に見あたらない。

 

「か~みっさま! お昼ご飯食べに行きましょう!」

「……ああ」

 

 エルシィに適当に応えながら自然な動作で後ろを振り向いてみる。

 すると……

 

 こちらを見ている女子と目が合った。

 

「!! …………」

 

 その女子、吉野麻美は慌てて手元の本を起こして顔を隠し、読書に集中するふりをしている。

 

「? どうしました神様?」

「……行くぞ」

「え? はい」

 

 おい、マジなのか?

 『凝視されていた=好きである』という式が常に成立するとは限らないが、『凝視されていた=興味がある』はほぼ常に成立する。

 興味があるという事は好感度が高い、もしくは極めて上げやすい状態にあるわけで……

 ……中川といい今回のこいつといい、最近は初期好感度高い系の女子が流行ってるのか!?

 

「かみさま、どこで食べましょうか?」

「屋上に行くぞ」

「はいっ!!」





こんな早くちひろのセリフを出す事に(ry

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