もしエルシィが勾留ビンを使えなかったら   作:天星

327 / 343
57 歌姫は挑み続ける

 私が告白をしてから、イベントの連続だった。

 前夜祭に始まって、返ってからもハクアさんとの情報交換、夕食の後は理力の訓練。

 やたらと濃い時間だったけど、ようやく自由な時間がやってきたよ!!

 

『これで一通りは完了したか。明日も忙しくなる。そろそろ休むとしようか』

「ふぅ、やっとか。

 ……かのん、風呂どうする? 先入るか?」

「もう遅いしなんだったら一緒に入る?」

「……正気か?」

「桂馬くん。真顔で返事するのは止めて。せめてもうちょっと反応して」

「だってなぁ……お前がそういう事言うのって凄く違和感を感じるんだよなぁ……」

「今までの偽装が巧妙過ぎたせいかな。

 流石に一緒に入るっていうのは恥ずかしいから冗談だけどさ。桂馬くんにももうちょっと恥ずかしがって欲しかったよ」

「そんな事言われてもな」

 

 本気で何か起こる事を期待してたわけじゃないけど、これだけでスルーされるのも何か嫌だ。

 もう少しイベントを続けよう。

 

「うーん……じゃあ水着でも着て一緒に入る?」

「論外だな。風呂場に乱入イベントを起こしたいなら裸かバスタオルの2択だ。

 ……そもそも、お前水着持ってるのか? この家に」

「……確かに、こっちには持ってきてないね。エルシィさんのとかを借りれば話は別だけど、そこまでする気も無いし。

 ハードル高いなぁ……仕方ない。桂馬くんのリクエストにお答えしてバスタオルで乱入を……」

「何故乱入する前提になってるんだ! あくまでもやるならという話だよ!」

「勿論分かってるよ~。

 それじゃあ私から入らせてもらうね。こんな話をした後で私が後だと桂馬くんがのんびりできないだろうし」

「……そうやって油断させる作戦じゃないだろうな?」

「いやいや、そもそも一緒に入るっていうのが冗談だし、わざわざ2回お風呂に入るような事はしないって。

 あ、でも桂馬くんがどうしてもって言うなら……」

「分かった分かった。早く入ってきてくれ」

「うん。行ってくるね~」

 

 桂馬くんへの好意を一切隠さなくても良くなったからすっごく話しやすくなった気がするよ。

 こうやって揺さぶってみて反応を見るのはそれはそれで楽しいんだけど、攻略っていう目的からはちょっとズレてるかな。

 とりあえずは色々と試してみようか。今までやりたくてもできなかった事なんて沢山あるから。

 

 

 

 

 桂馬くんもお風呂を済ませて(当然乱入はしなかった)そろそろ寝る時間になった。

 それじゃ、もうちょっと仕掛けてみよう。

 

「けーまくーん。ちょっとベッドが壊れちゃったから桂馬くんのベッドで一緒に寝かせてー」

「何だその棒読みは。ツッコミ所が無数にあるんだが?」

「何の事かなー」

「ベッドが壊れるのかとか、床に布団を敷くのではダメなのかとか、ダメだったとしてもエルシィやハクアのベッドではダメなのかとかだな」

「紛うこと無き正論だね。丁度私も思ってた事だよ。

 私たち気が合うね!」

「分かってたなら何でそんな三文芝居をしたんだ……」

「うーん、最初は桂馬くんが寝てるときにこっそりと隣に潜り込もうかな~って思ってたんだよ。

 でも、流石にそれはどうかと思ったから許可を取れば大丈夫かなって……」

「そんな事に許可が出るはずが無いとは思わなかったのか?」

「勿論思ったよ。でも、そうやってずっと黙ってたら何も伝わらないから。

 だから今のうちに要求を伝えておいて後で交換条件か何かで合法的に一緒に寝ようかと……」

「無駄に計算高い事やってるな。

 と言うか、そもそも男子と一緒に寝るというのはどうなんだ? アイドルとして」

「そんなの、バレなきゃセーフだよ!」

「バレたらアウトって事だろうが」

「大丈夫。バレてアイドルをクビになったらその時は桂馬くんに養ってもらうから」

「何故そうなった。僕はお前を養う気なんざこれっぽっちもないんだが?」

「そんなっ、ヒドいっ! 許嫁だって言ってくれたのに!!」

「攻略の為に言っただけの言葉を引き合いにだすんじゃない」

「だよねぇ……それじゃ、明日も忙しくなるから今日はもう諦めるよ。

 また今度ね」

「次があるのかよ……」

「当たり前だよ!

 5ヶ月間耐え忍んできた私の執念を甘く見ちゃいけないよ!」

「……最強の味方が最強の敵にっていうのはゲームではよくみる展開だが、実際遭遇してみるとキツいものがあるな」

「……敵扱いされたのはちょっとショックだけど、最強の味方とも言ってくれたからプラマイゼロって事にしておくよ。

 最後に一つだけ、いいかな」

「何だ? うわっ」

 

 私は桂馬くんに思いっきり抱きついた。

 こうしてるだけでも幸せだ。できる事ならこのままキスとかもしたいけど、強引に事を進めると本当に怒りを買うだろう。

 このくらいが、今のボーダーラインかな。

 いつか必ず……いや、近いうちに自然とキスができる距離感まで縮めよう。

 

「……はぁ、まぁ、このくらいならいいか。

 しっかりと寝ろよ。勿論自分のベッドで」

「うん。ありがと。それじゃあまた明日。お休み!」

「ああ。お休み」

 

 顔色一つ変えない……か。桂馬くんはやっぱり手強いな。

 それじゃ、また明日からも、頑張ろうか。







というわけで、マルス編から始まってた『舞校祭前日』はようやく終了です。
途中でハクアとかリミュエルの話が入ったとはいえかなりの分量になってますね。

あとはストーリーとしてはヴィンテージとの決戦で終了ですね。
ただ、何回か言っているように筆者はバトル描写が死ぬほど苦手です。なのでその辺はテキトーにそれっぽく書いて終わりになります。
その代わりといってはなんですが……修羅場イベントが発生しそうです。
そっちの方は全力で頑張るので戦闘は勘弁して頂けたらと思います!
神のみはバトル漫画じゃないもんね! 仕方ないね!

では、いつになるかは分かりませんが……また次回お会いしましょう!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。