もしエルシィが勾留ビンを使えなかったら   作:天星

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62 ちひろの質問・ディアナの質問

「それじゃあ次の質問を受け付けるぞ」

 

 攻略順であれば、麻美の次は栞……は当然居ないからその次の結だな。

 

「結、何かあるか?」

「私も対象だったのですか!? 何も考えてませんよ」

「じゃあ後回しって事で。次のターンまでに考えるか、もしくはパスしてくれ」

「……一応考えておきます」

 

 さて、結の次は……

 

「小阪ちひろ。貴様だ」

「私も質問して良かったのね……考えてないって言うか色々とわけ分かんなくて情報をまとめてる最中だから結と同じように後回しでいい?」

「構わん」

 

 ちひろの次の攻略相手は……そうそう、七香だ。

 だが、その間に結構なイベントがあったな。一応順番を割り振っておこう。

 

「ハクア、何かあるか?」

「お前に対する質問があったら昨日の夜に言ってるわよ」

「それもそうだな。じゃあパスで……」

「ちょ、ちょっと待って! ちょっと気になったんだけど……」

 

 割り込んできたのは先ほど質問を後回しにしたちひろだった。

 何か考えついたのだろうか?

 

「どうした?」

「最初から自然な感じで堂々と居たから訊くのを忘れてたけど、そのヒトって誰?」

 

 ……実に良い質問だ。ハクアの存在を知ってる奴はそこそこ居るが、正確な立ち位置等を知っているのは僕達3人とメルクリウス、あとハクア本人くらいじゃないか?

 

「よし、じゃあハクアの質問枠でそっちに答えてもらおう。

 ハクア、自己紹介頼む」

「自己紹介か。ん~…………

 ……まず、私の名前は『ハクア・ド・ロット・ヘルミニウム』よ。

 皆からはハクアって呼ばれてるわ」

「が、外国の方? 日本語お上手ですね」

「え、分かってくれる? 結構苦労したのよこれ」

 

 外国っていうか異世界だな。

 そう言えば言語も違うのか。あのエルシィが流暢に話すんですっかり忘れてた。

 

「コホン。私の立場としては、駆け魂隊の地区長……もとい、元地区長ね。

 ザックリと言うとエルシィの上司みたいな立場だったわ。と言っても仕事内容はエルシィと大して変わらないけど」

「エリーと同じ? って言うことは、桂木みたいな人と一緒に女の子を恋に落とす仕事を……」

「違うわよ! コイツと一緒にしないで!」

「ひっ! ご、ごめんなさい」

「あ……こっちこそごめん。事情を把握してなかったらそりゃそういう感想になるわよね。

 『恋愛』を使うのはあくまでも桂木の得意分野。私の協力者(バディー)は別の手法を使ってるわ」

 

 そう言えばこいつの協力者については全く知らないな。

 ハクアが紹介しないって事は……少なくとも白馬の王子様みたいな完璧超人ではないな。性格か外見、どちらかに重大な欠陥があるとみた。

 

「こんな所かしら? ちひろさんだったわね? 何か質問ある?」

「えっと……大丈夫です。ありがとうございました」

「そんな堅苦しくなくてもいいんだけど……まいっか」

 

 これでハクアのターン終了。

 次は確か、七香、スミレ、月夜、長瀬と来て夏休みに入って……

 

「……天理。お前のターンだ」

「あっ、じゃあ……」

『では私から。あなたと、そこの中川さんは今現在同居しているのですよね?』

「それは質問……ではなく確認だな。その通りだ」

『どういう事なのですか! どうしてそんな事になっているのですか!!

 肉親でもない男女が同じ屋根の下で過ごすなど、は、はしたないです!!』

 

 これは質問と言うより文句なんじゃないだろうか?

 と言うかこの女神、天理の言葉をサラッと遮ったな。

 ……まぁ、天理からの質問は次のターンでいいか。

 

「僕とかのんの同居の理由か……きっかけは……ああ、そうだ。爆弾騒ぎだったな」

「ああ、そんな事もあったねぇ。懐かしいなぁ……」

『ば、爆弾? どういう事ですか?』

「私の家の、って言うかマンションの前と、あとテレビ局の前で地面が抉れてるっていう通報があってさ。

 私個人を狙ったテロか何かなんじゃないかって話になったんだよ。

 だから、当時一番仲がよかった人に泊めてもらえるように頼んだの」

 

 なお、当時のその爆弾騒ぎの犯人は飛行時の速度制御を失敗したエルシィだ。

 あいつ、最初っからロクな事してないな。

 

「で、その夜にかのんに駆け魂が居る事が判明した。

 その後、さっき言ったように『許嫁ルート』での攻略となり、なるべく近くに居た方が良いという理由で正式に居候になった。

 そして、今に至るわけだ」

『……ちょっと待ってください。その理屈だと駆け魂を追い出した後も居候を続ける必要は無かったのでは?』

「その通りだな。それでも続いた理由は恐らく2つだ。

 まず1つ。今後の駆け魂狩りの為にも互いの連携が大事だったからだ。夜に反省会とかも何回かやったな」

 

 他にも様々な恩恵を受けていたな。結なんかは殆どかのんが攻略してたし。

 

『もう1つの理由は何ですか?』

「……かのん。僕はもう1つ理由があると確信しているんだが、どうなんだ?」

「……もう1つの理由は私が桂馬くんを攻略する為だよ。

 時間と秘密の共有は許嫁ルートの肝だからね」

 

 かのんの記憶が最初からあったのなら、そういう事になるだろうな。

 恋愛アピールなんてせずとも、ただ一緒に居るだけであっても、その時間の重みは攻略においては非常に強力な武器となり得る。

 

「……以上だ。そういったそれぞれの思惑があってこの同居生活は続いている。

 理解したか?」

『…………理解はしましたよ。納得するかどうかは別問題ですが。

 はぁ、分かりました。次の質問を考えておきます』が。







 新悪魔たちは軽々と日本語を喋っていますが、獄語が存在している以上は共通言語が日本語という事はまず無いはず。
 となると、ハクアが極東支局に配属されるまでは日本語が喋れなかった可能性も……?
 学校で日本語の授業を選択していたからこそ極東支局に配属された……みたいな想像も可能ですが、西の方の配属を希望していたハクアがそんな科目を取るとも思えません。
 そういうわけなんで、ハクアは一夜漬けで日本語を習得した可能性も十分有り得そうです。

 ただ、そうなるとノーラみたいないかにもコツコツした努力が嫌いそうな奴が何で流暢に喋れてるのかが気になります。
 リスニングとスピーキングだけは翻訳魔術みたいなのがあったっていう解釈が妥当なのかなぁ。
 ただ、それはそれでエキサイト翻訳の如くハチャメチャな文章に翻訳される不安があります。
 地獄の技術力に期待してある程度は防げているとしても細かいニュアンスまでしっかりと把握する完璧な翻訳は無理、と言うか不可能なんじゃないかと。(技術的な壁ではなく言語の表現力の壁で)

 そういう事で、心のスキマを的確に埋める為にも翻訳魔術に頼らない現地語の習得は必須技能とまではいかずとも優先して取るべき技能だと思います。
 一夜漬けは流石に無理でもハクアならしっかりと努力して日本語を習得してそうです。


 なお、エルシィは日本史で『優』を取るほどの日本マニア(但し江戸時代まで)なので日本語をある程度知っていてもそこまで不思議ではありません。
 設定的には原作でも本作でも東の方の生まれでしょうし、ドクロウ室長が優先的に教えていそうなので日本に関する事ならハクアより優秀だった可能性も有り得そうです。
 原作ではテストの問題を読む事すら苦労していますが、スピーキングとリスニングだけなら可能性はあるかと。
 まぁ、仮にそうだったとしてもハクアに追い抜かされるまでの一瞬の栄光ですが。

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