部室から出ていく桂馬くんを見送って、残ったみんなに視線を向ける。
自分は関係ない……と思い込んでいる結さんは平然としており、ちひろさんはオロオロしている。
残り3人の様子は……言うまでも無いだろう。
ちひろさんが遠慮がちに声をかけてきた。
「あ、あのさ……」
「何かな?」
「えっと、その……かのんちゃんも駆け魂ってのに取り憑かれたんだよね?」
「うん。そうだよ?」
「平気なの? 今の話聞いてて……」
「結構前から知ってたから」
「そうじゃなくて、最初に聞いた時の話だよ」
「う~ん……あの時の自分の様子なんて全然覚えてないけど、平気じゃあなかったよ」
私は記憶操作を受けていないらしいので不自然に忘れてるって事は無いけど、そもそもあの時は自分の状態を冷静に記憶できるような状態じゃなかった。
つまり、平気ではなかった。それは確かだ。
「平気じゃなかったけど……桂馬くんが側に居てくれたから。
桂馬くんなら絶対に助けてくれるって、そう思えたから」
「桂木なら……か。何となく分かる気がするのが微妙にシャクだね」
「あはは。何となく分かるよ」
一応ちひろさんも桂馬くんの事は認めているようだ。
なんだか嬉しいな。私の大好きな人が認められている事が。
さてと、桂馬くんに任された仕事を果たすとしよう。
沈んでる皆を立て直させるのは私の役目だよね?
「さぁ皆、顔を上げて。
駆け魂の事はもう解決した事だよ」
「そりゃそうだけど……頭では分かってるけど……なんかこう……」
「うん、まぁ、言いたいことは分かるよ」
駆け魂が私の中に居た時の感触は鮮明に……とまでは行かずともある程度覚えてる。
多分だけど、女神の宿主たちよりは良く覚えてるんじゃないかな。
……あ、違う。私よりもよく覚えてそうな宿主が一人居る。今は関係ないけど。
「言いたい事は分かるけど……私に比べたらずっとマシだよ」
「えっ? どういう事?」
「……だって、私の時はまだ駆け魂が中に居る時に何の心構えもなくいきなり言われたから……」
アハハハハと乾いた笑いをこぼしながらあの時の事を思い返す。
エルシィさん、私、あの時の事忘れてないからね?
「? どうかなさいましたか姫様」
「ううん~、何でもないよ~」
エルシィさんのポンコツっぷりには助けられた面もあるからあんまり強い事を言う気は無いけどね。
ちょっと睨むくらいは別に構わないよね♪
「はい。それじゃあ……質問ゲームを続けようか?
知識面の話なら桂馬くんに答えられる事であれば私でも大体答えられると思うけど」
「そんな台詞が自然と出てくるのですか……これはまた……」
「? どうかしたの結さん」
「……いえ、何でもありません。私は構いませんよ。次はどなたでしたっけ?」
「結さんの質問が終わって、その前は……麻美さんだね。何か質問ある?」
「えっ、うーん…………パス。
あっ、違う。アポロにパス」
『というわけで妾からの質問じゃ。正直に答えてもらうぞよ』
鏡の中のアポロさんが私に向かってビシッと指を突きつけてきた……ようだ。
角度がついてるせいで若干見づらい。
「うん。私に答えられる範囲でね」
『それでは質問じゃ! お主は桂木の事をどう思っておるのじゃ?』
「? 世界で一番大好きな人だよ?」
『っ!? お、お主、よくそんな事を真顔で言えるのぅ……』
「? だって、事実だし」
『そういう問題ではないわい!
ぐぬぬぬぬ……だ、だがしかし! 本人の前ならば簡単には言えぬはず……』
「? 昨日同じような事を桂馬くんに言ったけど」
『ぐはっ!!』
鏡の中のアポロさんが大げさな動作で机に突っ伏した。
どうしたんだろう? 何か変な事言ったかな?
『うぐぐぐ……手強い。こやつを超えねばならぬのか?
い、いざとなったら愛人もとい愛神という手も……いやいや、気持ちで負けていてはダメじゃ!』
アポロさんが何かブツブツ呟いているようだ。
まあいいか。次行こう。
アポロさんは何故かどうしてもネタ枠っぽくなってしまうという。
ユピテルの姉妹の倫理観は一体どんな感じになってるんでしょうね? より具体的にはハーレムルートについてどう思ってるか。
ディアナが断固否定派なのは議論の余地はありませんが、他は一体どうなのか。
原作17巻や20巻では女神様たちが集合して桂木の取り合いみたいな事をしたり、6股かけた事を怒ったりしていますが、これは彼女たち個人の感性によるものなのか、それとも『宿主の為に』という感情が働いて日本社会の法律や倫理に合わせた反応をしているのかは謎です。
神話なんかを考えるとハーレム上等な女神が居ても不自然では無さそうですが……
ウルカヌス様とミネルヴァはかなり強く主張していたのでおそらくはハーレム否定派、マルスは……恋愛に夢を抱いてそうだから多分否定派。
メルクリウスは『興味ない派』な気がします。
あとアポロは『消極的肯定派』でも問題無さそう。ノーテンキな性格と原作の出番の少なさが主な原因。真相は不明。
原作ではそんな感じなんじゃないかと。
なお、本作ではミネルヴァが『関係ない派』になっています。フラグが立ってないので。
フラグが立ってない原因は……桂馬に恋愛してた人が身近に居て、しかもそんな素振りを見せずに真面目な態度だったからですかね。
追記
神話の女神様は一途で浮気を許さない方が多いというご指摘を読者様から頂きました。
なお、そのせいでブチ切れてまとめて殺害してしまいバッドエンド一直線になるとか。容認はある意味ハッピーエンドフラグ。
神話はあんまり詳しくないからなぁ……時間がある時に調査してまた追記するかもしれません。