もしエルシィが勾留ビンを使えなかったら   作:天星

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またいつか

「岡田さん、ありがとうございました」

「良いのよ、お礼なんて」

「でも、採算自体は取れていたんですよね? 私のわがままでごめんなさい」

「良いのよ。いくら採算が取れててもあの会社は無いわ。

 むしろ最初に疑問を持ってくれてこっちがお礼を言うべきよ」

「そうだったんですか? よかったぁ」

 

 ゲーム会社の人との打ち合わせは無事(?)に終わった。

 終わったけど……私のゲームが作られる日は遠のいちゃったかな。悪いゲームが作られるよりはずっとマシなんだけどさ。

 

「あの、私のゲームの話って、あの会社以外にもありましたよね?」

「そうね。何社かから来てたから連絡すれば作ってもらえるとは思うけど……もうちょっと待っててくれない?」

「えっ、はい」

 

 も、もしかして、今回私がわがまま言ったからゲーム開発の件は見送る……とか?

 

「そんな不安そうな顔しなくても大丈夫よ。

 もう少し会社の実績とかそういうのを調査してからでも遅くは無いでしょう?」

「! は、はいっ!!」

 

 いつになるかは分からないけど、桂馬くんに私のゲームをプレゼントできるかな。

 喜んでくれると良いな。桂馬くん。

 

 

 

 

 

 

 その後、今日の仕事を終えた私は桂馬くんの家に帰った。

 何の工夫もせずに直接家に行くと色々と面倒な問題が発生するので、適当な場所にエルシィさんと待ち合わせて透明化して送ってもらってる。

 

「今日もお疲れさまです、姫様!」

「うん、今日もありがとね」

 

 エルシィさんの飛行魔法も使って帰っても良いのだけど、それ使うと50%くらいの確率で地面にクレーターが出来上がるので普段は徒歩で帰ってる。

 ちょっと狭いけど仕方ない。

 

「あ、そうそう! 今日学校で面白い事があったんですよ!」

「へ~、どんな事?」

「えっとですね、姫様の偽名が決まりました!」

「……え? 何があったの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……遡る事数時間、学校にて……

 

「さぁ、さっさと吐きなさい! 姫様って何者なの!?」

 

 ったく、どうしてここまで気にするんだこいつ?

 面倒だから適当にあしらっても良いんだが……放っといたらさらに面倒な事になりそうなんだよな。

 しょうがないから昼休み中に作った設定をぶちまける。

 

「『名前は西原まろん。母方の従妹で訳あってうちに居候している。

  趣味は歌と料理。特に料理は毎朝弁当を押しつけてきて感想を要求するほどに打ち込んでいる。

  こことは別の学校に通っているようだが、本人がそんなに人と仲良くするような性格ではないので友達はあまり居ないらしい』

 ざっとこんな感じだ」

 

 説明するだけならここまで作りこむ必要は無いのだが、このように大量の情報が淀みなく出てくると疑われにくくなる。と言うより疑う暇が無くなる。

 あからさまに矛盾した内容だと流石に疑われるが、これくらいの内容なら全く問題ないだろう。

 

「え、ちょ、え?」

「何だ? まだ文句があるのか?」

「いや、そうじゃなくて……えっと……

 そ、そうだ! どうして誤魔化してたのさ?」

「言うのが面倒だったからな」

「ちょっと? どゆこと?」

「そのまんまの意味だよ。バーカ」

「コラ! バカとは何だバカとは!」

「そのまんまの意味だよ。バーカ」

「だぁああああもう! そうじゃなくて、何かこう……」

 

「神様! そろそろ帰りましょう!」

 

 丁度いいタイミングでエルシィから声が掛かる。

 少しだけ、ほんの少しだけ見直したぞエルシィ。

 

「それじゃ、またな」

「ちょ、タンマ! 最後に一つだけ!」

「……一つだけだぞ?」

「うん。その西原さんとアンタってどういう関係なの?」

「……従兄妹だが?」

「そうじゃなくてさ、その……つ、付き合ってたりするのかなって」

「何だ、そんな事か」

 

 やたらと突っかかってきたのはそういう事か。

 『オタメガ(格下の人間)に彼女ができるなんて許せない』的な事だろう。

 

「あいつはただの同居人だ。それ以上でもそれ以下でもない」

「そう……それならそういう事にしとくわ」

「しとくって何だよ。まあいいや、じゃあな」

 

 

 

 

 

 

 ……以上の放課後の顛末をエルシィさんから聞いた私は家に帰るなり桂馬くんを問い詰めた。

 

「桂馬くん!? どういう事!?」

「小阪があんまりにしつこかったんで適当に設定を作ったんだが……何か問題でもあったか?」

「色々と言いたい事はあるけど……まず確認させて。

 『お弁当を押しつけてくる』ってどういう事!?」

「そこかよ!! 単純にそういう設定にした方が追求されずに済むと思っただけだ」

「……それじゃあ、お弁当が迷惑って事は無いんだね?」

「ああ、そういう事か。お前の弁当は毎日ありがたく頂いてるよ。面倒じゃなければこれからも続けてほしい」

「そっか、よかったぁ。それじゃあ頑張るね」

「無理しなくて良いんだぞ? 仕事で忙しいんだろ?」

「大丈夫だよ。私がやりたいからやってる事だもん。

 ……ところで……」

「まだ何かあるか?」

「……ううん、やっぱりいいや」

「? ああ……」

 

 小阪さんが桂馬くんに突っかかってきた理由ってもしかして……

 ……今は、言う必要は無いかな。勘違いかもしれないし。

 

 

「そう言えば、ゲームはどうなったんだ?」

「とりあえず今回は見送る事になったよ」

「そうか。お前がそう判断したならきっとそれが正しい選択だったんだろう。

 良いゲームを待ってるぞ」

「うん! いつかきっとね」




あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
「かのん回を書いていたつもりがいつのまにかちひろ回っぽくなっていた!」
な… 何を言っているのか(ry




というわけで章末恒例の企画……と言いたい所ですが、今回は短く、次回も短いのでそっちに回します。

代わりというわけではないですが、今後の執筆順序ルール設定という名の作者のご乱心を置いておきます。

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=129878&uid=39849

では次回もお楽しみに~。

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