もしエルシィが勾留ビンを使えなかったら   作:天星

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正直な所、吉野麻美の次にこの人を持ってくるのは少々アレな気がするけど引いちゃったもんは仕方ない。

では、再開です。


紙の砦に住む少女
プロローグ


 ある日の平日の朝。

 僕は中川(変装済み)と一緒に学校へと向かう。

 ん? エルシィはどうしたって?

 何か『私は姫様の替え玉の道を極めるんです!!』とか何とか言って出かけてったよ。

 料理と掃除で立て続けにミスを連発したから気にしてるんだろうか?

 

「っと、待てよ?」

「どうかしたの?」

「駆け魂センサーはエルシィが持っていたはずだ。

 つまり、学校で駆け魂を見つける事は絶対に無い!」

「え? それなら……」

「つまり、好きなだけゲームができる! 何て素晴らし……」

「センサーならエルシィさんから預かってるよ。あっちよりこっちの方が駆け魂が居そうだからって」

「…………そうか」

 

 あのセンサー、中川でも使えたのか。

 エルシィの存在意義がどんどんと薄れている気がするな。そのうち羽衣も中川が使い出すんじゃないだろうか? 既に似たようなのを使ってるが。

 エルシィも中川の替え玉やってくれてるだけでも十分役立ってはいるが……

 

「あ、そうだ桂馬くん。今日の放課後って時間ある?」

「ゲームが忙しい」

「……えっと、もしよければ勉強教えてほしいんだけど……」

「勉強だと?」

 

 そう言えば、麻美の攻略中にそんな話をした気がするな。お互いに忙しくてそんな時間は無かったが。

 ゲームも大事だが、約束を反故にするのも気が引ける。

 

「仕方あるまい。30分で片を付けるぞ」

「え、それだけで足りるの?」

「学校の授業は無駄が多いからな。効率的にやればそんなもんで済む。

 ちなみに、テストで100点取りたいだけならもっと短くて済むぞ」

「えええっ!? じょ、冗談だよね?

 ……いや、冗談じゃないね。桂馬くんはそんな冗談言わないし」

 

 何で学校の授業はあんなに無駄が多いんだろうな。

 そのおかげで授業中でもゲームできるから文句は無いがな。

 

「……あ、あの~、よければテスト勉強も……」

「時間があればな(ゲームが忙しくてまず無いが)」

「桂馬くんのいじわる!」

 

 

 

 

 

 

  ……そして、放課後……

 

 

 

 

 約束通り、中川に勉強を教える事にする。

 最初は教室でやろうと思ったんだが断念した。

 何故かって? 簡単な事だ。

 仮に、教室でやった場合どうなると思う?

 

  …………

 

「エリー、放課後ヒマ? 近くのコンビニの新商品がさ~」

「あ、ごめんなさいちひろさん。これから神様と一緒に勉強するんです」

「勉強か~。それならしょうがな……って、ええええええっっ!? えええエリーが勉強!?」

「あ、えっと……」

「み、皆! 急いで帰るんだ! 嵐が来るぞ!!」

「えー? これから部活あるのに」

「歩美、部活はいつでもできる。でも悪いことは言わない。今日は止めておくんだ!!」

「う~ん……エリーが勉強するんじゃしょうがないね。今日は止めとこっと」

「あ、あの……救急車、呼んだ方がいいでしょうか?」

「そうか! あさみんそれだ! 急いで110番だ!」

「え? 救急車は119番……」

「ええい両方だ! 頼んだぞ!!」

(……エルシィさんが勉強と言い出すのはここまで異常なんだろうか……?)

 

  …………

 

 とまあ、小阪だけじゃなくて歩美とか麻美とか、その他諸々まで巻き込んだ大騒ぎになりそうな気がした。

 

「さ、流石にそこまでは無いんじゃない?」

「……スマン、少し言いすぎた。

 小阪と歩美はまだ有り得るが、麻美は無かったな」

 

 何か関わる可能性は十分にあるが。

 

「え、前半は有り得るの?」

「どうだろうな。まあ、余計な騒ぎを避けるに越した事はない。

 で、肝心の場所だが……」

「図書館なんてどうかな? 静かで勉強しやすいんじゃない?」

 

 図書館か。2人で勉強する場所としてギャルゲーでも定番の場所だな。

 どんな学校でも大抵存在する図書館(あるいは図書室)だが、うちの学校ではかなり大きめのが併設されている。

 うちの学校、舞島学園は高等部だけじゃなくて中等部もあるかなり大きな学校だからな。それに相応しい設備と言えるか。

 ただ……

 

「図書館に行く事は構わないんだが、実際に行くのは初めてだ。

 勉強しやすい環境かは分からんぞ」

「私も聞いたことあるだけで行ったことは無いんだよね。

 うーん……とりあえず行ってみてから考えようか」

「それもそうだな」

 

 とりあえず行ってみて、無理そうなら家とか適当な場所で勉強すれば良いだけだ。

 

 ただ、もう一つ不安がある。

 さっきも言ったように、図書館は高等部だけでなく中等部も利用する施設だ。

 となると、普段はすれ違わないような人間に近づく事になる。

 駆け魂センサー、最後まで黙っててくれると良いんだが……


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