……攻略6日目……
今日はエルシィさんとの入れ替わりを解除して行動する。
何かかのんちゃんとして活動するの久しぶりな気がする。替え玉ならともかく本人が何言ってるんだって話だけど、実際に6日振りなのだからしょうがない。
仕事の合間の時間に例の件について岡田さんに相談する。
「岡田さん、ちょっと時間ありますか?」
「ああ、今日はそっちのキャラなのね。何かしら?」
キャラ……? まあいいや。
「この前オーディションに受かった将棋のアニメ。確か『ヒカリの将棋』でしたっけ?
あの作品を監修してるプロの方とのアポを取る事ってできますか?」
「え? まあ不可能では無いと思うけど……どうして?
将棋を教えてもらうつもりなら……」
「いえいえ、私の友達の友達に凄く強い人が居るので奨励会に推薦してもらいたいんです」
「奨励会っていうとプロの事よね? 推薦が必要なの?」
「えっとですね……」
あの岡田さんも流石に将棋の世界についてはそんなに詳しく無かったらしい。
奨励会に入るにはプロの推薦が必要な事、ついでに正確には奨励会はプロではなく、あくまでプロの候補生への推薦であることを説明しておいた。
「そういう物なのね。それならそのお友達の為に何とかしてあげたいとは思うけど……
下手な実力の子を紹介したら先方の機嫌を損ねてしまうかもしれないわね」
「そこら辺は大丈夫です。県大会で2連覇してる人が『プロでもなかなか見れないレベル』って太鼓判を押してます。
あと、最悪直接話せなくてもこれを渡せれば大丈夫だと思います」
私が取り出したのは3枚の棋譜。そして私が書いておいた手紙だ。
手紙には『七香さんに推薦を下さい』という事を凄く丁寧な文章にして書いてある。
「う~ん……」
「ど、どうでしょうか?」
「……分かったわ。何とか渡しておく」
ふぅ、これで目的は完了だ。
後は普通にアイドルの仕事をこなすだけだ。
「ところで、あなたに将棋好きの友達なんて居たの?」
「え? はい、できたのはつい最近ですけどね。
例のアニメの為に将棋の勉強してたら知り合ったんです」
「って事は、あなた自身はそこそこできるのかしら?」
「どうでしょうね? 一応今は優秀な師匠に教えてもらってる所ですけど」
「……顔良し歌良し性格良しの上に将棋も指せるアイドル……いける!!」
「いや、最後脈絡無さ過ぎないですか!?」
「何を言ってるのかのん、使えるものは使い切らないと!
早速棋力の判定をしましょう! 適当なプロに連絡を!」
「ちょ、岡田さん!?」
そのスキルは果たして本当に人気に繋がるのだろうか?
その後、岡田さんは『将棋だけじゃなく囲碁にもチャレンジしてみましょう!』とか何とか言ってたけど何とか阻止した。流石に手を広げすぎです、岡田さん。
……その日の夕方頃……
「かのん、塔藤先生から連絡が来たわよ」
「早っ!! え、岡田さん? 棋譜は速達で送ったんですか?」
「いえ、スキャナーで取り込んでメールで送っておいたわ」
あ、なるほど。それなら早く連絡付きますね。
いやでも返信が早すぎるのでは?
「そ、それで、先生は何て言ってましたか?」
「明日の都合の良い時間に榛原さんって子とあなたも一緒に来てほしいって。
スケジュールは何とか空けておくからその時間に何とか呼んで」
「分かりました。後で連絡しておきますね」
塔藤先生とはかのんちゃんとして会いに行く事になりそうだね。
勿論その場には七香さんも来るわけだけど、どうしようかな?
初対面である風に装っても良いけど、同一人物だと明かしておいた方が受け答えが楽になりそうなんだよね。
……まあいいや。その時に考えよう。
「それで、何時頃ですか?」
「午前6時よ」
「早すぎますよ!? それって先生からの了解は取れたんですか!?」
「『明日だとその時間帯しか空いてないんですけど……』って感じでダメ元で尋ねてみたら笑いながらOKを出してくれたわ」
「ほ、ホントですか? い、一体どんな人なんでしょうか?」
「良く分からないけど、あの送った棋譜が相当気に入ったみたいよ。良かったわね」
プロをその気にさせた桂馬くんと七香さんが凄いのか、それとも先生の執念が凄いのか……
とりあえず、七香さんと桂馬くんに連絡だね。
明日起きられるかなぁ……
「あ、あと、あなたの棋力の判定もついでに頼んでおいたから♪」
あ、はい。そうですか。
って言うか本当にプロに頼んじゃったんですね。主将さんでも十分だと思うのですが。
はぐれ魂の影響を利用しようとしたり、大作映画の為ならアイドルを脱がせようとする岡田さんは商魂逞しいと思いました♪