空条承太郎と奇妙な女神の守護者達   作:( ∴)〈名前を入れてください

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第10話

 

「暇だぜ…かったるい」

 

そんな事をボソリと呟きながら承太郎は授業を聞く。教科書に懇切丁寧に説明が書かれている事を更にわざわざ説明し、無駄な事をベラベラと教師が喋る姿はやってられない。もっと効率良く授業を進められないのかと思うが世の中にはここまでしなきゃ分からねぇ奴もいるもんだと思い直しその考えを封殺する。

 

「(俺みたいな奴が出席してると言うのにちとクラスの連中が休み過ぎていけねぇな)」

 

今日の承太郎のクラスの出席率は約7割であり、周りの席を見れば今日は休みなのか所々に穴が出来ている。これ以上休む者が出れば授業をする場合では無くなって自習となるだろう。「後何人で自習だったのに」と嘆く者がいれば「こんなに休んでいる人が多いなら休めば良かった」と後悔する者の怨嗟の声が所々から聞こえてくる。台風が来れば学校が休みなると休みになるから大抵の学生は喜ぶ、それと似たような精神状態が彼等の中にはある。『自分には関係ないから』近くで殺人事件が起ころうとも実際に体験しなければその恐怖に気付かない者なんてザラにいるのだ。

 

「(フケるか……)」

 

そう思い席を立とうとすると綾瀬がこちらを悲しそうな顔で見ており、その顔に負けて立つのを止める。承太郎の扱いが非常に上手い綾瀬である、大切な人の悲しそうな顔にめっぽう弱い承太郎だからこそ通用する手段、間違いなくホリィから教わっている。

席に座り直し綾瀬にシッシッと手を振ると、嬉しそうにこちらに笑顔を向け紙に何かを書き、承太郎の机の下へポイッと投げる。

 

『授業中に外に出ようとしたら駄目だからね!』

 

拾った紙を広げ、そこに書かれている言葉に呆れてしまう。何度授業中にフケたか分からないのに、その度に綾瀬は注意を促してくる。お節介な奴だ、そう思いながらその紙の余白に返事を書いていく。どうせ暇だったんだ、最初に送ってきたんだから最後まで付き合ってもらうぜ。と思いながら書いたのを小さく折ってスター・プラチナを使い綾瀬の席の近くまで近付き机の上に放り投げる。

 

「ーーーーーッ!」

 

「どうしましたか、綾瀬さん?何か分からなかった所でも?」

 

急に机の上に飛んできた紙に身体をビクッとさせ驚いてしまう綾瀬に先生が不思議そうに質問する。「なっ…なんでもありません」と返事をする綾瀬を見ながらノートにクラスの光景の模写を始める。凄まじい速度、まるで写真のように克明にノートに描かれていく。

 

「(蓮にでもこの絵をくれてやったら…いや、綾瀬の姿を中心にした方がアイツは喜ぶか……)」

 

才能のスタンドの無駄使いここに極まれり、最初に効率がなんだと言っていたお前は何処に行ったのかと言わんばかりに綾瀬の姿を中心にクラスの光景の絵が描かれていく 。人間暇になったら何でも始めるのだろう、凄まじい速度で動く承太郎の腕、スター・プラチナは普通の人に見えないという事をあの戦いで理解した承太郎は自分の腕の中にスター・プラチナの腕を入れて今絵を書いている

 

つまり今、承太郎の腕は凄まじい速度で動いていると言う事だ。それも本人はぼうっと前を見ながら絵を見ること無く一発書き、芸術家がこの光景を見たら顔を真っ青にして泡を吹き出すだろう。そんな凄い事を承太郎はスタンドを使って行っているのだ。

 

「(それにしても…返事を書くのが遅いな……そんな困る事を書いた覚えはないんだがな)」

 

そんな事を考えながらも書かれていくクラスの光景。やる事が無いから始めた事だがこの空条承太郎、やると言えば必ずやる男、この作品を仕上げる事を決める。

 

そんな中綾瀬からの返事の紙が机の下に投げられる。キリが良い所で一旦絵を書くのを止めて書かれている事を読む。

 

『すまねぇな、ちと煙草が吸いたくなってよ』

 

『ダウト。絶対に授業が面倒になっただけでしょ』

 

モロバレである。流石は承太郎、蓮、司狼の問題児3人をまとめ上げる強者この程度の嘘は通用しないのか、これには流石の承太郎も苦笑いをするしかない。

 

「(やれやれ…お見通しって奴か。取り敢えずこれを書いたら授業も終わりだな)」

 

もう直ぐ退院する筈のアイツの退院祝いはコレだなと苦笑いしながら絵を書き上げる。そして書き上げたと殆ど同時にチャイムがなり昼休みが始まる事を告げて来る。承太郎は漸く授業が終わったと早々と教室を出て屋上へと向かう。そんな承太郎を追い掛けるように綾瀬が背中を追い掛ける。

 

「ちゃんと授業受けたね。エライエライっ!」

 

「お前は俺のお袋か」

 

「うーん。お姉ちゃんになら、なってあげても良いけど……」

 

綾瀬の言葉を聞き流し、屋上で煙草を吸いながら街を眺める。屋上から見える街は何時ものと何一つ変わらずそこにある。だがこの街の中は今、首切り殺人鬼の恐怖の中に包まれている。そして自分は犯人も分かっているしどうにか出来る力を持っている。

 

「(…だがどうするべきか分からない…か)」

 

自分がどうするべきなのか。綾瀬を信じてこれからを放置するのか?涙を飲んで綾瀬を再起不能にするか、毎日夜になったら綾瀬をストーカー宜しく追いかけて凶行を止めるか?凶行をさせない為に何処かに監禁するか?

 

「(馬鹿馬鹿しい…出来る訳ねぇだろうがッ!)」

 

どれもかれも出来やしない、出来る訳が無い。だがやらなきゃまた誰かが犠牲になる…綾瀬がまた人を殺すかもしれない。しかもそこに綾瀬自身の意思など無く、まるで操られた人形のように人を殺す。それを考えただけで頭が沸騰する程の怒りに身体を震わせそうになる。

 

「(もしも綾瀬が誰かに操られているのだとしたら…そいつは人を何だと思ってやがるッ!)」

 

もしもそんな奴がいるのならばソイツは『吐き気を催す邪悪』だ。女を子どもを力ない奴を食い物にする外道野郎…

 

そいつこそ倒すべき『悪』だ

 

「承太郎…」

 

綾瀬香純は考える。自分の大切な友達、空条承太郎の事を、たった2年の付き合いだが彼女は彼の事を良く知っている。

無愛想で寡黙で突っぱねたような返事をしたりする癖に他人を友達を大切にする心優しい男。

 

彼は無愛想で寡黙な男だ。だが彼が何も考えてない訳ではない、承太郎との2年の付き合いの中で彼がどんな人間なのかは分かっているつもりだ。

 

誰かが心底困っていたら手助けをせずにはいられないけど決して表立って助けに行く事はしない。何時も斜に物事を構えているように見えて誰よりも正しく物を見ている男。

 

綾瀬香純は考える。友人が今街を見ながら怒りに震えている理由を。『諏訪原市連続首切り殺人事件』戦後史上最も凄惨な事件がこの街で起きている。その事件の奇っ怪さ、被害者は全員首を切り捨てられて殺されているという手口。結構な時間が経過しているのだが、犯人は分かっていない。それが承太郎にとって耐え難い事であるのは分かる。犯人の手によって大事な人を、あの優しい母親が危険に陥る可能性を考えると、それは承太郎にとって許し難い事だろう。

 

空条承太郎は寡黙な男である。自分の事を口に出す事はしない、だが彼の犯人に対する怒りは彼の姿を見るだけで伝わって来る。吸ってる煙草を噛みちぎりそうな程強く噛み、血管が浮き出る程強く手摺りを握りしめている姿。どれだけの怒りを溜め込んでいるのだろうか。

 

だからこそ綾瀬香純は友達である空条承太郎から今は離れてはならないと思う。もし、今承太郎を1人にしてしまえば次は3人がバラバラに離れてしまうかもしれないと本能的な所で彼女は感じたのだ。

 

「ねぇ承太郎。今日の放課後、蓮のお見舞いに行かない?」

 

「……そうだな」

 

「絶対だからね!」

 

そんな屋上での一幕

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