空条承太郎と奇妙な女神の守護者達   作:( ∴)〈名前を入れてください

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第14話

闇を優しい月の光が優しく照らし出す。見る者に安らぎを与える月の光は何故だかその光を見れば嫌悪感を感じてしまい、本来ならば心地よい筈の辺りを吹き抜ける夜風には吐き気を催すような、まるで血を腐らせた腐臭が混じっている。そんな普通では無い夜の中を1人の男が狂笑を放ちながら駆け抜けていく。彼の声に篭っている感情は『歓喜』どうしようもないほどの喜びがその声には篭っている。まるで子どもが誕生日に玩具を買って貰えるような目的の物を手に入れれる歓喜の狂笑。病的な程真っ白な肌と混じりっけの無い白髪は、見れば彼が太陽の光を浴びる事を拒絶しているような感覚に陥るだろう。

 

「クハッ!おいおい晩餐杯猊下から『遺体』の居所が分かったと言われてみれば所有者は『スタンド使い』だぁ!?」

 

「遺体を所持したスタンド使いなら退屈はしねぇ!マレウスの奴が単独行動はするなと言ってたがこれに関しては話は別だ!」

 

「アイツらは俺の獲物だ!」

 

「クハッ…クハハハハハハハハハッ!」

 

顔を悪鬼のように歪ませながら笑みを浮かべ男は走り続ける。そして胸ポケットから1枚の資料を出しそこに書かれている事に目を通し、高笑いのような狂笑は絶叫に近しいものへと変化していく。

 

報告書

 

遺体の所持者、杜王町に1名いる事が判明。対象がスタンド使いである事は判明しているが能力に関しては一切不明、強奪の際は複数での行動を推奨する。

 

「ハッ!馬鹿馬鹿しい。複数なんぞ折角のスタンド使いとの戦いに無粋じゃねぇか!」

 

男はこれから始まるであろう戦いの予感に武者震いをし更に走る速度をあげる。さてこの男、一体どれだけの速度で走っているのだろうか?書類に目を通すくらいなのだからそこまで速くないと考えるのが当たり前だろう。普通に考えて人間の出せる限界速度は大雑把に見積もっても15〜35キロが限界といった所だろうか?そこから書類に目を通すくらいの余裕を持つならばそれよりも速度を下げて約10キロ、走りながら読む事を得意とする者ならば15キロくらいの速度で走っても問題ないのかも知れない。ならばこの男が出している速度はどの程度のものだろうか?普通に考えて10?それとも走りながら見るのはあまり出来ない15?これらは彼が出している速度では決して無い

ならばもっと遅いのか?いやそれは違う…速すぎるのだ。その速度を例えるならばアクセル全開のドップラー効果を出しながら走るスポーツカー如く凄まじい速度をあげながら彼は走っている、それも荒れ狂う海の上を平然と走っているのだ。数百キロで海の上を走る人間は当たり前だがこの世には存在しない。ならばこの男は人間では無い、そう考えるのが当たり前だろう。

 

人外の領域にいる存在、彼はまさしく『化物』なのだ。

 

だが彼は知らない、これから彼が向かう場所に住まうスタンド使いが別の世界では『杜王町に潜む影』として恐れられた最凶のスタンド使いの1人であると言う事を

 

「待ってやがれ…スタンド使い。俺、ヴィルヘルム・エーレンブルクがテメェを吸い殺してやる」

 

彼等の戦いはまだ少し先の話

 

「れーんっ!元気にしてたー?」

 

「…やれやれだぜちったぁ静かに出来ねぇのかテメエは」

 

蓮が病室へ戻り残り少ない病院ライフを過ごしていると綾瀬と承太郎が見舞いに来る。ペアで来るのは予想外な二人が来てくれた事に少し驚く蓮だが、承太郎と綾瀬、この二人は決して仲が悪い訳では無い。寧ろ綾瀬の人柄もあってかなり仲の良い部類だと言えよう。だがこの二人が学校外で二人きりになって行動する所を初めて見た言っても良い蓮にとってはある意味これは予想外の訪問だった。

 

「…俺は綾瀬に行こうと誘われただけだ。そんな変な顔をするんじゃねぇ」

 

「…何笑ってんだよ」

 

「……さぁな何の事だかさっぱり分かんねぇな」

 

無意識的に変な顔をしていたのか、承太郎はニヤリと笑いながら帽子を深く被るそんな承太郎に思わずぶっきらぼうに返事を返す蓮、そしてそれを見ながらサラリと受け流す承太郎。ぶっきらぼうに返してしまうツンデレ同士のシンパシーを発動させながら話をする二人。そしてそんな二人を見守る綾瀬、ここにツンデレボーイズとその姿を見守る母親の布陣が完成した。

 

藤井蓮にとって承太郎と綾瀬とは自分にとって何よりも大切な日常、そんな二人が来てくれるのは嬉しい、だが自分の性格が災いしてそれを素直に表現出来ない男だ。そしてそれは空条承太郎という男も同じである。大切な友人や大切な人を守る為ならば己が幾ら傷ついても構わない。だが、それを口に出す事は決して無い。心の中で思っているだけで彼を知らない人から見ればかなり無愛想な人だと思うだろう、つまり承太郎は自分の気持ちを素直に表に出さない男なのだ。

そしてそんな二人を知っているからこそそんな二人の会話に思わず笑ってしまう綾瀬。

 

「そう言えば…承太郎。これ、ありがとな以外と面白かったよ」

 

「…それはお前にくれてやったもんだ。返してし貰う義理はねぇな」

 

「…そっか。ありがとな」

 

「……やれやれだぜ」

 

承太郎に入院中の暇つぶしとして貰ったゲームや携帯ラジオを返そうとするもつっけんどんにお前にくれてやったんだから返さなくて良いと返事を返される蓮。自分の言葉を曲げない承太郎はこうなれば梃子でも動かない。そう思い有り難く感謝の言葉を返すと何時もの台詞を一言吐くそのまま他所を向いてしまう。そんな承太郎を綾瀬が待ってましたと言わんばかりにウリウリと詰め寄っていく

 

「何時も『……やれやれだぜ』ばっかりじゃなくて『気にすんな』とか『どういたしまして』とか言っても良いと思うんだけどなー」

 

「…フッ」

 

「まさかの鼻で笑うッ!?承太郎が反抗期になっちゃったよー!」

 

何時も通りの二人の姿を見て安心する。この日常が大切だ。これだけは…これだけは壊してはならない。陽だまりのように笑う少女と自分と似たぶっきらぼうに笑う少年は藤井蓮の日常を形成する大切な一つなのだから

 

「(この時間を永遠に過ごせたらどれだけ幸せだろう)」

 

時間は上から下へと流れ落ちる滝と同じだ。決して止まる事は無く、下から上へと戻る事は無い。今を永遠に過ごす事は不可能だ。それを分かっているからこそ蓮は切に願う『今を永遠に過ごしたい、彼等との日常を壊したくない』と

 

「…おい。今何か見えなかったか?」

 

「えっ…特に何も見えなかったけど。蓮は何か見えた?」

 

「チッ……何でもねぇ」

 

だが…既に亀裂の入った物が壊れるのは確定であり逃れる事の出来ない運命

重ねて言うが運命というものは面白いものでちょっとした事が自分のこれからを左右するのだ。承太郎が突如発した言葉の意味を此処に理解出来る者はいない。

だがそれで良い、理解出来ていたのだとしたらその者の運命は更に厳しい方へと変化していたのだろう。

 

「…ちと用を思い出した。先に帰らせて貰うぜ」

 

「明日も迎えに行くからね!サボっちゃ駄目だよ!」

 

「じゃあな。承太郎」

 

2人の言葉を背に受けて承太郎は病室を出て行く。もしも彼等が承太郎と同じ視点を持っていれば分かっただろう。

 

凄まじい速度で部屋に入り彼等を見詰めていた昆虫の事を

 

「テメェ…何もんだ」

 

「俺はDIO様からの命を受けて貴様を殺しに来たのさ!空条承太郎ォ!」

 

スタンド使いはスタンド使いに惹かれ合う。これはスタンド使いの不変の『運命』だ

 

 

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