「……」
風助は目を覚まし左右を見渡す
「よく寝たぞ」
目に映るのはまだ見慣れぬ自分の部屋と同居人
ベットから出て制服に着替え部屋から出て行き迷うこと十分、寮の外に出た風助は深呼吸をした
「んー、気持ちいい朝だぞ」
周囲はまだ薄暗い早朝だが、新聞配達をしていた風助にとっては遅く起きたほうである
「ちょっくら散歩でもするか」
風助はただ外の空気を吸いに来たのだったが思いの外気分が良くなりこのまま戻る気にはなれず少しばかり歩こうと思った
「こっちから海の香りがしたしこっちに行ってみるぞ」
そう言い足を運び少し経つと海が姿を現した
少々低い崖の下には砂浜があり風助は柵を乗り越え飛び降りた
「よっと!」
途中岩につかまり勢いを殺し無事着地し、周囲を見渡す
「うん!明日からここで修行でもするか!」
以前鈴と修行していた山と同じく自然あふれる環境が気に入りこっちでの修行場にすることにした
「あら、おえりなさい」
部屋に戻ると同居人の楯無が出迎えてくれた
首にはヘッドホンのようなものが装着されていた
「この耳栓があったから出かけたことに気付かなかったけどどこに行ってたの?」
「ちょいと散歩してただけだぞ」
そうは言うがあの後風助は、一時間以上迷い、最終的に学園を一周分走り回っていた
「そう、じゃあ始業まで時間もないし早く食べちゃって」
テーブルには皿が2つ置かれており一つは一切れの食パン、もう一方は五斤の食パンが盛られており風助は迷わず五斤の食パンを手に取り齧り付いた
楯無と一緒に教室の手前まで行きそこで別れて教室に入るとあからさまに不機嫌な鈴が目にとんできた
「おい、鈴どうした?んな不機嫌な顔して」
「あの馬鹿が、あたしとの約束ちゃんと覚えてなかったのよ」
メキメキと音を立てて拳を握る鈴に風助は相当怒ってるのがわかった
「全く、あんたの爪の垢でも煎じて飲ませてやりたいわ」
風助が父親との約束を律儀に守り修行をしていたことを知っている鈴は一夏に見習って欲しくもあった
「なに言ってんだ?俺だってしょっちゅう約束忘れてんぞ」
「え?そうなの?」
「おう、春麗や蘭芳の約束忘れて、その埋め合わせで買い物に付き合わされてんぞ」
風助の言葉に鈴はあることに気付いた
「ちょっと待ちなさい、あんたが日曜、二人と遊びにいってんのって全部がその埋め合わせってこと?」
「おう」
風助の言葉に鈴は小刻みに震えた
「一番忙しい時間帯に居なかった理由がそれか!」
両頬をつまみあげ思い切りのばした
「いててぇぇ!!!」
「全くあんたらは!でもなんでおじさんとの約束は忘れなかったの?」
キョトンとした表情で風助は答える
「当たり前だぞ、大事な一との約束は絶対に忘れねぇぞ」
風助がそういうのと同時にチャイムが鳴り教室中が慌ただしい雰囲気に包まれ、鈴もそれ以上の追求ができなくなった
昼食時、風助は真耶と一緒に食堂に来ていた
「お!風助ちゃん待ってたよ!」
注文をしようとしていたら調理師の女性の方から声をかけられた
「あんたの為に特別メニューを作ったんだけどどうだい?」
「特別メニュー?」
首を傾げる風助に調理師の女性は答える
「名付けてブリュンヒルデ盛り」
出てきたのは山盛りのおかずに丼2つのセットであった
「これで昨日みたいにお代わりのし過ぎで怒られることもないし一回でお腹いっぱい食べれるしどうだい?」
風助は満面の笑みを浮かべた
「ありがとう!おばちゃん、じゃあお礼によ……」
「風助は、もう食べ終わったのかしら?」
昼食を食べ終わり食器を返却しに行ったのだが食事中一度も風助を見かけなかった鈴は少しおかしいと思った
「ごちそうさまでしたってあんた何やってんのよ」
「皿洗いだぞ」
鈴は返却口で皿を洗っている風助に面を喰らう
「おばちゃんたちが俺の為に特別メニューを作ってくれたから礼代わりに皿洗いしてんだぞ」
「あたしらはいいって言ってんだけどどうしても礼がしたいって聞かないからね」
食堂の従業員たちは微笑みながらそういう
「でも悪い気はしないんだよね。なんかこう息子ができたみたいで」
その言葉に同意するようにまわりも頷いていた
「皆さんがいいならあたしもこれ以上何も言わないですけど」
「俺も別にきにしてねえぞ」
鈴はクラス別トーナメントにむけて訓練をするため風助に付き合うわけにもいかないし風助も中国で皿洗いもしていたので大丈夫だろうとそのまま去っていった
「さてと、授業も終わったしどうすっかな」
放課後、手持ち無沙汰になった風助は校内を適当にふらついていた
周りを見てみると部活動に励む生徒やISの訓練をする生徒が目に入るが風助は別段興味が湧くことはなかった
そうやって適当に歩いてると男性が若干辛そうに荷物を運んでいるのを目撃した
「おっちゃん、何してんだ?」
「ん?あぁ、君は二人目の男性操縦者の風助くんだったかな」
男は振り返って風助の事を思い出したかのように確認した
「おう、これはお花さんの肥料か?」
風助は、男が運んでいた物を見て尋ねる
「そうだよ、業者に頼むこともあるけど基本的に植物の世話は私がやっているんだよ」
「なぁ、俺もやってもいいか?」
「え?」
「俺やることねぇし、植物のお世話するの好きなんだけど駄目か?」
男は少し考えこむが、風助の屈託のない顔に折れ
「じゃあお願いしようかな」
了承した
こうして風助は昼は食堂の皿洗い、放課後は用務員の手伝いをして過ごすことになる
次回更新も月曜か火曜になりそうです