「んん……」
夢から覚めた鈴は体にまとわりつく汗の不快感からシャワーを浴びながら先程の夢を思い返していた
(あたし、なんで強くなろうとしていたのかしら…)
ただIS適正があり、負けず嫌いな気性が代表候補まで押し上げたと言っても過言ではない
だが風助と行っていた修行はISには全くと言っていいほど関係の無いものである
(それに……)
あの夢の男達の言葉は鈴の胸に深く刻まれていた
(あたしは、甲龍をなんのために使おうとしていたんだろう)
自分は彼らのように高い志など持ち合わせていない
だが鈴はなんとなく感じていた
(風助は、あの人みたいにちゃんと自分の強さをなんのために使うか決めて自分で行動している)
流されるだけの自分とは大違いの弟分の大きさに改めて思い知った鈴
体を拭きながら彼女は決心する
クラス別トーナメント、この中に強者はいないかもしれない。だが戦う事で己の強くなろうとする意義を見つけられるかもしれない
クラス別トーナメント初戦の相手は一夏であった
今、昨日一悶着起こした一夏は居心地が悪そうに顔を歪めているが鈴は心を落ち着かせて自分の胸の内を必死に探っていた
「なぁ、鈴。いつまでもこうギクシャクしてるのもなんか居心地悪いし、この試合で負けた方がなんでも言う事聞くってのはどうだ?」
あまりの空気の重さに耐えきれず一夏は賭けを持ち掛けるが
「好きにすれば。あたしからはなにも無いから」
と素っ気なく答える
「おぉ…」
鈴なら乗ってくると思っていた一夏は予想外の反応に驚いた
二人は開始のブザーが鳴るのを今か今かと待ち焦がれる
低音の開始のブザーが耳に届いた瞬間、鈴は一夏の懐に飛び込んできた
だが一瞬硬直し、その隙を狙って一夏が斬りかかろうとする
それをさせまいと鈴の双天月牙が猛攻撃を仕掛けてくる
「くっ……」
一夏がその猛攻撃を辛うじて防げているのは一夏に隙ができる度に鈴が僅かながら動きを停止しているからである
(本当、この癖どうにかなんないかしらね)
内心、舌打ちをした
中国で風助と修行を過ごしてきた鈴は何度か組手の真似事をしていた事がある
だが勝敗は鈴の負け越しである
その理由の一つが体格の差である
本来ならば上背がある鈴の方が有利のはずだが風助の圧倒的なスピードが体格的不利を起こし上から振り下ろすか下から振り上げる等動作の大きい攻撃を仕掛けるしかなかった
ある時、手応えがあるアッパー気味のパンチを避けられ風助の拳が迫ってきた時、鈴は反撃できる何かがないか必死に考えた
ただ無心で右脚を振り上げたら、風助に見事に当たったのだ
それからと言うもの風助は鈴の右脚から繰り出される蹴りを警戒し鈴も右脚の蹴りを攻撃の組み立ての柱として組み立てていた
だがISに乗る時それが災いとなった
訓練でISを使った近接戦闘を行った際、彼女は相手の隙を狙い癖で蹴りを放ってしまった
その結果ISは鈴の蹴りの負荷に耐えきれずオーバーホールする羽目となり以後ISに乗っている時は蹴りをしないようにしているのだが
(身体に染み付いちゃってんのよね)
無意識にやっているため慌てて中断するために傍目からは硬直しているように見えているのだ
(本当に、イタリアのテンペンスタとかが羨ましいわ)
徒手空拳仕様のISは彼女にとって羨望の存在であり中国政府にもそういったパッケージを作ってくれないか交渉しているのだがいい返事はもらえずモヤモヤしている
一夏の腹を柄部分で殴り飛ばすと距離を取った
この時点で観客達の認識は変わり対等な者同士から強者に挑む挑戦者の構図になっていることは当の本人もわかっていることであろう
一夏は今、目の前にいる鈴がやたらでかく感じていた
いかがですか?
残り二話で風助の活躍が見れます