あの出来事からもうすぐ一年になろうとしていた
訓練が終了したあと鈴は風助と一緒に修行をするようになり基礎体力に関しては訓練生で並ぶものがいないほどとなり近距離戦闘も代表に食らいつける程のレベルに達していた
「鈴ちゃん、本当にIS学園に行かないの?」
「はい、候補生になりましたけどそこで満足してません。私の目標は代表です!」
実力を認められて代表候補、専用機が与えられた鈴であるがそこで慢心しておらずまだまだ向上心がありIS学園行きを断っていた
美鈴は自分たちのことを気遣っているのではと思いそのことについて述べていたのだが鈴はそれをきっぱりと否定した
「それに、負けたままじゃ気がすまないので」
その言葉に美鈴は首を傾げる
「風助に私の酢豚が一番美味しいって言わせるまではここを離れる気はありません」
気がこもった言葉に美鈴は合点がいった
この一年近くで鈴の料理の腕(酢豚のみ)はかなり上達したが、子供の味覚はやはり親のが一番なのだろう美鈴の酢豚のほうがうまいと言われ続けてきた
一度でもいいから自分の酢豚のほうが美味しいと言わせたいという負けず嫌いな精神が出てきているのだ
だがその決心は敢え無く崩れ去っていく
『緊急ニュースです!世界初ISの男性操縦者が発見されました!名は織斑一夏!繰り返します……』
「………」
「IS学園に行かない?」
「行きます」
想い人がいて行かない理由がどこにあるだろうか自分のプライドなど恋に比べるまでもなかった
時が経ち鈴が日本へと旅立つ当日空港には訓練生の同期やご近所さんや親しい人々が見送りに来ていた
だがその中には同居人の風助の姿がいなかった
「ごめんね、鈴ちゃん。風助また道に迷って何処かに言っちゃったの」
「気にしてませんよ。あいつの方向音痴は今に始まったことじゃありませんし」
「へクッチ!」
と二人が話している時風助はくしゃみをしあたりを見渡していた
「まずいな、完全に迷ったぞ。せっかくりんのために書いたのに無駄になっちまう」
手にしているものに視線を向けてぼやく
(こっち……こっちに……)
「ん?」
もう一度周囲を見渡すがあたりには風助以外の人間はいない
(こっちに……こっちくれば……間に合う……)
風助はその言葉を信じて声の言うとおりに足を運んだ
「じゃあ、母さんそれにみんな行ってくるね」
別れの挨拶を済ませて飛行機に乗ろうとした瞬間聞き慣れた声がした
「お〜い!鈴!」
間に合ったのかと安堵し声の方へ顔を向けるとその場にいた全員が硬直した
お世辞にも上手とは言えない字で、“がんばれりん“と書かれた垂れ幕を手にした風助は女性にしか乗れないISを纏い手を降っていた
凰鈴音 日本出発延期決定