魔法少女リリカルなのは Second Life 作:雪都 叶夢
世界は一つ。並行世界は無く、今現在のこの世界だけが実在している。故に、異世界は
だが、それは何故だ?
誰も並行世界に行ったことは無い。故に其存在はたとえ有ったとしても、無いものとされている。知識がない故に是を否としている。
そうは考えられないだろうか?
だが、もし仮にそうであったとしても、誰がその是非を説けるのだろうか。
それが説けるならば、あるいは、異世界に渡った者だけなのだう。
一つ、仮定をしよう。
もし、異世界から来た、と言う人がいたら、君はそれを真実だと受け止めることができるだろうか?
それは不可能だろう。
虚実も多者が唱えれば真実となる。
つまりはそういうことなのだろう。
たとえ、異世界から来たと言えども、それが一人ならば、それは真実とはならない。むしろ法螺吹きと罵られさえするだろう。
人間とは莫迦な生き物だ。真実を真実と思うことができないのだから。そうやって真実を闇に葬り去ってゆくのだろう。
さて、仮定の話はこのへんにして現状を確認してみよう。
「これはどういうこだ?」
ついそう言わざるを得ない状況に立っている。
何もない真っ暗な空間。
それなのに自分の身体ははっきりと見え。
どこを見てもそれ以外は何もない。
初めは誘拐でもされたのかと思った。しかし、考えていく内にそれは無いと至った。おかしな点が多すぎる。
親が特別金持ちでもなければ、誰かに恨まれもしていないはず。
見張りはおらず、拘束もされていない。こんな動き回れる状態で置いておかないだろう。
さらにこの部屋。ざっと歩いてみた。しかし、十分ほど歩いても壁はやってこない。
そしてなにより、こんな明りのない場所で、なぜ、自分の身体がはっきり見えるのだ。普通真っ暗な光のないところでは体なんて、ある、と言うことしか分からないだろう。うっすら見えることはあっても、はっきり見えるなんてことはあり得ない。
故に考える。ここはなんだ、と。
されど、その問いの答えは出ない。いっそ夢でも見ている、これは明晰夢だ、と言うことにしてしまえばいいのだろうが。それも無いだろう。夢の様にぼんやりしているわけでも無い。明晰夢ならば、夢の内容を変えられるとも聞くが、そんなことは決しておこらない。
ふと、上を見上げる。さっき確認した通り、ずっと上まで、あるいはすぐそこまで、闇でおおわれている。そこに例外は無く、どこも平等な黒。いや、違った。もはや遠くなのかそこなのか分からない遠近感のなか、ポツンと白い点が見えた。上から迫るように落ちてくるそれは、徐々に目で何なのか確認できる大きさになって、ようやく気が付いた。それは“人”だと。
「あ、白だ」
つい目が行ってしまったのはその人が履いていたスカートの中。事故だ事故だと思いつつもつい目が行ってしまうのは思春期の男の
それに気付いたのか、その純白パンツの少女は、きゃぁ、と可愛い悲鳴を上げて落下してきた。その真下にいたのが災いとなって、下敷きになってしまう。
「あぅ……見たな~です」
その落下を何もなかった、と言う風に処理した少女は目の前に立ってこちらをギロリと睨みつける。とは言っても幼さの残る顔立ちの少女のためそれは怖さなどは一切なく、寧ろ小動物的可愛さだけが残っていた。
少女を年齢は自分と同じ高校生ぐらいだろうか、と観察していると、ある部分が目に入る。
それは人間の物とは到底考えることのできない。
まるでファンタジーの世界の様な、現実にあるわけのない。
肩甲骨あたりから生えているのだろう。
まるで天使のような純白の。
“翼”だった。
その奇異の視線に気づいたであろう少女は、ニコッと笑顔を浮かべて、こう言った。
「お亡くなりになりまして、おめでとうございます」
「……………………………………………………は?」
その言葉は誰に対して言っても失礼な、と言うか、誰も言う筈のない台詞。死んだことがおめでたい。そんな話はばかげてる。いや、そもそも、死んだ、と言うことに関して、意味が分からない。
そう言えば、とここに来る前に何をしていたのかを全く考えていなかった。
ええと確か、と思い返してみる。
「あれ? マジで死んだの?」
そこにあった記憶は急に心臓と頭が苦しく、痛くなった記憶だった。その後の記憶は無く、そのまま死んでしまったと言うことが考えられる。だが、その意識を戻したのがここでだったと言うことも考えられる。
「それは無いですよ」
突如思考に割って入ってきた少女にギョッとしながら、その何でも知っていそうなほど深い真紅の瞳を見つめ返す。
「……どういう、ことだ?」
声が震えていた。訳のわからない状況、訳の分からない空間、訳の分からない少女。それを前に動揺しているのか。それとも、この自分と大差ない少女におそれに近い感情が沸き起こっているのか、それは既に判断の付かないくらい混乱していた。
「ここは死後の世界。そして私は転生を司る神、トラングレイシアです。気軽にトランとでも呼んでください。死者、
先ほどの様な年相応の少女の面影はそこにはなく、凛と澄ました顔立ちで少女、トランは言った。だが、それでも繕っている感はぬぐいきれず、どうしても違和感だけが残ってしまう。たとえ容姿、顔を凛としていてもそれが演技ならばどうしても雰囲気にそれが出てしまう。だから、なのだろう、つい糺は言ってしまう。
「あ、演技はしなくていいです。と言うか冗談は良いんでここどこですか?」
「むぅー! せっかく神様っぽくしたのに!! て言うかここはホントに死後の世界で、私は神様だよ!!」
あっさり素に戻したトランは激高するように怒鳴る。それでもやはり先ほど同様。
言葉では疑っていても糺は既にこの少女が神様と言うのはあながち間違いでもないと考えていた。背の翼、思考を読んだこと、これまでトランが見せたことは信じざるを得ないから。
「にゃ、信じてくれたみたいだね!」
にゃ、ってなんだよ、とは思うがツッコまない。また話がずれていくと直感が言っている。だから糺は話をあえてスルーし次に持っていく。
「で、神様がどうしたんだ。天国は無いのか?」
「え? 天国なんてないよ。まぁ、知らないのも無理はないか」
そう言ってトコトコ歩き、数歩いったところで手を大きく開いた。さながら大の字の様に。
「説明しよう!! 人間は死んだ後は誰一人、例外もなく、老若男女、誰もが平等に、転生をするのだっ!! 転生後の世界、は自由に決められ、誰ともカブることは無い。一人一人を人間の数だけ存在する並行世界に放り込むのです」
聞いたことがあるだろう。人生はまるで自分が主人公の
その突拍子のない説が今神の手によって肯定されたのだ。
「そう、君の今までの人生は、他の誰とも知れない主人公の物語の役者だったと言うわけです。一度役者を終えた人は転生を許可され、違う人生を、主人公としての人生を送る。ただ、先の見えない物語だから、結末がハッピーエンドかバッドエンドかはその人の努力次第」
つまり、今までの人生同様、幸せになれるか不幸になれるかはその人次第。いつの世、どこの世界でもそれは変わらないようだ。
いや、違うのか。役者と言うことは台本があり、その人の人生は決まっていた、と言うのだろうか。その例外が転生者、主人公。糺の死は生まれたときに既に決まっていた、運命論という奴だったか。
なら、と糺は言う。
「そんな周りが役者の世界には行きたくない。僕は運命を呪っていたんだ。運命に支配されていると分かったらもうそんな世界に意味も、価値もない」
大きな目をさらに広げ、口もだらしなく開いて、トランの顔は驚愕で満たされていた。トランにとってそれはあり得ない、今までに例を見ない反応だったのだ。誰しもが両手を上げて喜び、それなら、と生前出来なかったことをしようと喜びに満ち溢れている。故に死んだことがおめでたい。そう言ったのだ。
それなのに、この男はそんなものに価値は無い、そう言い切ったのだ。驚くなと言う方が不可能だろう。
そしてそれは驚きを次第に越えていき、ついには。
「ふ、ふぇええぇえん」
赤い瞳から大粒の涙が零れ落ちた。
「お、おい、なぜ泣くんだ?」
「ふぇ、だって、だって、神様の最初の仕事失敗……ふえぇえぇえん」
要するに神様になって初めての仕事、つまり糺の転生を失敗したと思って泣き出した、と言うわけらしい。若干呆れつつも、この絵はかなり不味いだろう。見てる人がいないと言っても、男が女を泣かせている絵なんてみたくは無い。
どうやってなだめようか。
そんなことをこんな状況でも冷静に考えているところで、今度は違う声が響いてきた。
「ふぉっふぉっふぉ、トランちゃん、なんで泣いているのかね?」
次の瞬間目の前に神様の代名詞ともいえる白く長い髭を生やした白い服の老人がいた。おじいさんと言うにはいささか若い気もするが、実際の歳よりも老けて見えるのはその綺麗に染まっている白髪の性なのだろう。
「ふぇ、おじいちゃん、ごめんなさい……この人が……転生してくれない……」
「って、僕の性なのか!?」
そんなトレンの言葉を聞いたその神様は、糺を睨みつける。
「貴様……なに可愛いトレンちゃん泣かしとんじゃ、死なすぞ……?」
その言葉に蛇に睨みつけられた蛙の様にそれだけで動くことは出来なくなってしまう。これは本当に殺されるかもしれないと、覚悟していた時に意外なところから助け船がやってきた。
「やめてよぉ、おじいちゃん。悪いのは私なんだよう。説得できなかったんだから怒るんだったら私にして」
血のつながりは無いだろうと思われる、蒼と翠のオッドアイの神様はそれだけでおろおろとしてしまう。
「この人が、異世界に転生したくないと言うんです。役者しかいない世界なんか価値がないって……」
そうトランが簡潔に説明すると、その神様の目つきがまた変わる。それは物を見定めるような、何でも見透かされるような少々不快に感じられる目線。見られているのはもちろん糺。背筋が凍ることを感じながら。
「ふむ、糺と言ったな。なら、いっそ物語の決まっている世界に転生するか? 道筋はあるが運命に縛られていない無法地帯じゃ、が、だからこそ運命を変えられる。運命が嫌いならそれを変えればいい。そうは思わんかの?」
確かに、と思ってしまう。それが真実なら運命なんてものは無く、無理だと思えてもどこかに無理ではない道が存在する可能性のある世界。それなら、と思ってしまう。
だがそれがいけなかったのだろう。忘れてはいなかった。だが、考えないなどは不可能だろう。心の奥底を見るのだから隠すなんてことは出来ないのだ。
この心を読む神様に。
「よし、決まった様じゃの。後は任せたぞ、トラン」
「は、はい! 助けていただきありがとうございます」
「ふぉっふぉっふぉ、気にするでない」
と、そんなやり取りの後、神様またしても突然消えていった。
「さて、ここからが本題です。まさか説得でここまで時間がかかるとは思ってませんでした。なのでここからは時間巻き巻きで行きたいと思います」
「ちょ、まだ誰もいいとは言って……」
「ふぇ、ダメなんですか……?」
また泣きそうになるトランに、うっ、と
「あ゛あ゛ったく、もういい、好きにしやがれ!」
漫画ならパァッという効果音が付きそうなほどの笑顔にしたトランは、気を入れ直したように涙を拭いて続きを話す。
「では、まず世界ですが、こちらの管轄の世界だと既に1択省きます。転生につきまして、特典と言うものが渡される決まりとなっております。ただしこれは生前の生き方でどれほどの物かを決められます。具体的に良いますと、生き方、寿命、死因、善行、悪行、それらをひっくるめて、それらに合った能力が渡されます。こちらも転生されるまでわかりませんが、大丈夫でしょう」
一気に言われた感が物凄いが、量的にはさほどでもない。行く世界は任せるとして、特典、と言うものは生前の行いで善し悪しが決まると言うことだった。
「あ、あとコレ渡しておきますね」
そう言って渡されるのは剣のような形をしたキーホルダー。これはなんだと思いつつも受け取る。
「これは向こうの世界での必須アイテムと言っても過言ではないので持っていてください。では、これで説明を終わりますよ。分かりましたか?」
「ああ、たぶん」
「なら良しです。生前酷かった分、その世界では楽しく過ごしてくださいね。最強、なんて目指すのも面白いかもしれませんよ。では行ってらっしゃい」
「な! トランはなんで僕のことを……」
そこまで知っているんだ、と言い終わる前に糺の意識はどこかへ飛んだ。
いかがだったでしょうか?
中々に地の文が難しい……
アドバイスなんかをいただけたらうれしいです。