魔法少女リリカルなのは Second Life   作:雪都 叶夢

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百戦錬磨の力

 はい、と返事をされてしまったものの、全く持って先のことを考えていなかった糺はつい硬直してしまう。それはとっさに返事をしてしまったはやても同じく、プロポーズの様な言葉にプロポーズのように答えてしまい、赤面して固まっていた。そしてお互いの顔を見て、

 

「「っぷ、あはははは」」

 

 二人そろって笑い出した。はたから見ればそれは恋人のように、兄妹のように見えるかもしれない。だがこの二人は紛れもなく先ほどであったばかりの二人なのだ。

 

「ははは、あーあんなこと誰にも話したことあらへんかったのに、なんでやろな。つい話してもうた」

「僕もあんな恥ずかしいことを……」

 

 それでもその居心地の良さは二人とも感じており、だからこそ誰にも言えない心の内を言えたのだろう。

 

「いや、私はうれしかったんよ。……それで、さっきのもしよければやけど、ホンマに家住まへんか?」

「え? いいのか? さっき出会ったばっかのやどこの馬の骨とも知らん男を?」

「ちゃうちゃう、さっき出会った命の恩人や。悪いわけあらへん。それに言ったやろ、寂しいって。私は大歓迎なんよ」

 

 じゃあ、お言葉に甘えて、と糺はお世話になることにした。しかして糺は衣食住の住を手に入れたのであった。

 

▽▲▽▲▽▲▽

 

 はやての家。一戸建てで一人で住むには十分すぎる、寧ろ大きすぎるそれはいまだに使わない部屋は多く残っており、糺の部屋を作ってもらうには十分すぎる物だった。車椅子でも住みやすいようにバリアフリーになってはいる物の、2階へはいけないようで1階しか使っていないようだ。糺は空き部屋のある、むしろ空き部屋しかない2階の1室を使わせてもらう。使わないだけあって誇りが物凄いため掃除すべきだろう。だが今はまず部屋の確認だけして、はやてのもとへ向かう

 

「2階、すごい事になっていたぞ」

「アハハハ、2階行けんから掃除できへんもんな。私の担当医の石田先生がたまに来るんやけど、最近来てへんからなぁ」

「んじゃ、掃除するか」

「え? 頼んでええん?」

「自分が暮らす部屋がほこりまみれじゃ絶対に病気になる」

 

 それもそうやな、とはやては返して掃除道具が入っている場所を示す。とりあえず、バケツ、雑巾、ホウキ、チリトリをもって2階へ上がる。この汚れ具合から見るとかなりの長丁場になりそうだと一人苦笑いをするが、それでもやらないなどと言う選択肢は存在するわけもなく、掃除を始めるのだった。

 知識で掃除と言うものは知っていたものの、実際に掃除などしたことがなかった糺は悪戦苦闘しながらも掃除を進める。

 

「ああ~これは肩がこるな」

 

 などと何とも年寄り臭い台詞も吐きつつも2階を隅々まで掃き終わる頃にはすでに日は山の向こうへ暮れて行きそうだった。そこへ、

 

「糺君! ご飯出来たでぇ! ひとまず食べて休憩しようや」

 

 1階からはやての元気な声が響いてくる。正直色々と限界だったりしているためその言葉は助かった。分かった、と軽く返事をして、一旦区切りをつける。

 

 食卓へ着いた時には既にそこには美味しそうなご飯が並べられていた。とても小学生が作ったとは思えないような料理に素直に、うまそうだな、と感想を述べる。はやてはその反応にまず満足したのか満面の笑みを浮かべる。

 

「そうやろ。料理得意なんや。さ、食べてな」

「ああ、いただきます」

 

 おかずを一口頬張る。その味はもちろん見た目に違うことなく美味しく、つい涙がこぼれる。

 

「ど、どうしたんや!? 不味かったんか!?」

「いや、美味い、今まで食べたことがないくらいうまいよ……」

 

 涙を見たはやてがおろおろする。糺は涙を止めたいが、それは出来なかった。今まで、生前食べるものなどはすべて不味い物ばかりだったのだ。どこかの残飯の様な、失敗作の様な、ゴミの様な食べ物しか与えられなかった糺にとってそれは初めて食べた料理と言っても過言ではないのだろう。そのあまりの美味しさに涙が止まらなかったのだ。

 

「大丈夫かいな、急に」

「ああ、大丈夫だ。心配してくれてありがとう」

 

 そう笑って対応する。それでも涙は止まっておらず、おかしな顔になっていたことだろうと糺は思う。

 数分後ようやく涙は止まり、はやてと談笑しながら食事を済ませた。先ほどまで泣いていたようには見えないほど晴れた表情をしている糺にもう心配はないとはやても思って安心しているのだった。

 食器洗おうか、と糺は言うがはやて曰く「方付けも含めて料理や」と言うことで片づけもはやてがすることになった。すこし、悪い気もしたが、こちらも2階の掃除がまだ終わってないのでそちらに再び取り掛かる。ほうきは終わっているので残すのはあと雑巾がけだ。だが、掃除で一番大変なのは何を隠そうこの雑巾がけ。2階で雑巾掛けしなければならないのは部屋3つに長めの廊下と言うきわめて重労働だと言えるだろう。

 全てを掛け終わる頃にはすでに9時を回っていた。

 そこにズンと何かがのしかかるような衝撃を受ける。得体のしれないそれは何か不気味だった。

 

『マイロード、なにやら強大な魔力が暴走しているようです』

 

 今までは無言を貫いていたコマンの声が入る。しかし、急にそんな魔力と言われても糺には何のことなのかさっぱり分からない。どういうことだ、とコマンに尋ねる。

 

『まずは現場に行きましょう。さぁ、ハリーハリーハリー!』

「わ、わかったよ」

 

 やや性格が変わっているコマンに急かされるように2階から降り、はやてに断りを入れて外に飛び出した。

 

『さぁ、目的地は動物病院付近です』

 

 コマンの案内の元その目的地に行く。そこにはすでに人知を超えたものが待っていた。

 黒い暴れる物体。

 スライムの様な無形のそれは目と口しかなく、猛スピードで突進していた。その目的と思われるのは一人の少女。

 

『マイロード、どうしますか? 助けますか? スルーですか?』

 

 ここまで来て何を言っているんだと糺は思う。目の前に襲われている人がいるのに助けないなんて糺には考えられなかった。たとえそれが偽善だと言われようともやらない善よりはましだと思うのだ。

 

『分かりました。そのための私です。パスワードを繰り返してください』

「は? パス?」

『繰り返してください。

 我、古来より受け継がれし裁きの手なり。契約の元その力を解き放て。歴史は時に、想いは空に、十の掟はその手の中に。コマンドメンツ、セットアップ』

「意味は分からんが、まあいいだろう。

 我、古来より受け継がれし裁きの手なり。契約の元その力を解き放て。歴史は時に、想いは空に、十の掟はその手の中に。コマンドメンツ、セットアップ!」

 

 刹那、まばゆいばかりの光に包まれる。黒い物体も、それに襲われる少女も同時に糺の方を見る。

 その光が消えた先にいたのは紛れもなく糺。だが服装がまるで変っていた。白いロングコートを着込み、手には手袋をはめている。街中にこんな服がいたとしたら誰もが2度見してしまうことだろう。それほどまでに異端な服装だった。

 

『さぁ、マイロード、倒してしまいましょう、ダブルセイバーフォームです』

二刀(ダブルセイバーフォーム)

 

 そう糺が言うと足元に白い光の線で三角の魔法陣と思われるものが現れ、その中から2振り1対の刀が出てきた。どちらも小太刀のため長さは等しく、それでも成長しきれていないその身体には不釣り合いだった。

 

「君も魔導師なのかい!?」

 

 少女の方に乗る動物が大声を出す。糺の位置からは遠くてよく見えないが、イタチか何かだろう。少女の方は信じられないものを見たかのように固まっている。

 黒い物体は標的をその少女から糺に移した。何もしないものよりは、害意のあるものから先に、と言うことなのだろう。電柱をも折った突進を繰り出す。

 だがそれを前に糺は恐怖など微塵も感じていなかった。それは立て続けの出来事に感覚がマヒしてしまったのか、それとも……

 

『来ます』

 

 コマンの声の直後、糺のいた場所に黒い物体が激突した。それはコンクリートを割り、地を抉っていた。が、そこに糺の姿は無く、彼はすでに上空へと逃げていた。

 その物体が地に激突したことを確認すると次はそれに向かっていき、両手の刀で切り付ける。元の力だけではそれはかなわなかっただろう。だが、今は魔力で体を強化しているため、やすやすとその一対の刀を振ることが出来ていた。

 動く。思った以上に。その感覚に糺は興奮を覚える。いまだかつてこんな運動、こんな戦いなどしたことは無い。それなのに体は動く。まるで真まで幾度も幾度も繰り返してきたかのように。

 糺は思い出す。神の特典を。確か、あの中にこんなのは無かっただろうか。

 

「百戦錬磨」

 

 百戦錬磨とは幾多の実戦で鍛えられること。または多くの経験を積んでいること。つまりこの能力は多くの「経験値」ではないだろうか。そのおかげで戦闘をやすやすと繰り広げられる。特典と言うからには全て何か特別な動作で発動するものだとばかり思っていた。しかし、なるほどと糺は思う。このような常時発動の特典もあるのだ、と。

 

「強い……! 君、封印は出来ますか!?」

 

 イタチから糺にその声が届く。しかしながら、糺には封印とは何のことなのか全くわからない。故に首は横に振っておいた。それを見たイタチは少々がっかりした様子で少女に何か話していた。

 と、ここで、切り飛ばした黒い物体が復帰する。しかししてくるのは単調な突進のみ。動きを読み切ればかわすことも難しくは無い。避けて切って、力の方向をずらす。これならば負けはしないだろう。だが、決め手に欠けるため、それを倒すことが出来ずにいた。

 

「君! ちょっとその怪物押さえつけて置いて」

 

 その声が響く。そちらを見ると先ほどとは違う服を着た少女とその手に持つ杖のようなものが見えた。やることは全く持って予想はつかないが、イタチはやると言っているのだ。どっち道倒すことが出来ないのだから、信じてみるのもいいだろう。そう糺は思い、コマンに尋ねる。

 

「何か押さえつけるのは無いか?」

『バインドならあります』

拘束(バインド)? それで行こう」

『詠唱は分かりますね?』

「えっと、これか。

 天より堕ちよ、鎖の枷の下に」

『Kette Fallen』

 

 その声と共に現れた鎖の様な魔力で黒い物体をからめ捕る。黒い物体はもがくがそれはきっちりとそれに巻きついているため全くほどけることは無い。

 

「リリカルマジカル、ジュエルシード封印!!」

 

 直後、少女のその声が聞こえる。少女の杖から出た光線のようなものが怪物に当たったかと思うとそこには何もなく、あるのは空中に浮かぶ一つの蒼い宝石だけだった。

 一息ついたかのような表情をしたイタチと少女はそのままこちらにやってくる。

 

「ありがとうございました。えっと君は……」

「あなた凄いね!! あんな綺麗に戦って! 私少し見惚れちゃったよ!」

 

 イタチの言葉にかぶせるように少女はそう捲し立てる。例はそれに若干引きながらも、迫ってくる音に気が付いた。あれだけ派手にやっていたんだ。誰も気づかないほうがおかしいものである。

 

「えっと、その前に移動しないか? 警察着そうだよ」

「「えっ」」

 

 二人(?)とも驚いたような顔をした後、少女は一目散に走ってその場を後にした。とはいっても少女、それに運動が苦手なようでその足はお世辞にも速いとは言い難く、すぐに追いついて並んで走る。

 そこから向かったのはその近くにある公園。夜だけあって周りには誰もおらず、静けさがその場を支配していた。

 

「僕は真掛糺。君は?」

「あっ、ごめん忘れてた…… 私は高町なのは。よろしくなの」

「僕はユーノ・スクライア。スクライアは部族名だから、ユーノって呼んで」

「糺君にユーノ君」

 

 えへへ、と笑うなのははさっきあんなことがあったというのにその顔にはまったく同様の色は見れず、何事もなかったかのようだ。これはマイペースというのだろうか、それとも神経が太いと言うべきなのだろうか。

 自己紹介も済んだところで、ユーノが至極真面目な声で話し始める。

 

「あなたたち二人を巻き込んでしまい、済まない。ほんとは僕一人でなんとかしなきゃいけないんだけど……」

「どういうことだ? まったく状況が呑み込めない」

「位置から説明するね。さっきの怪物は、ジュエルシードと言って、もともとは人の願いをかなえるために作られた|古代の遺産≪ロストロギア≫なんです。それを僕たちスクライア一族がこことは違う世界で発掘したんです」

「違う世界、ということは他の世界もあるの?」

「はい、世界は次元を挟んで無数に存在しているんです。その次元をわたっているときに事故が起きてしまい、全て、21このジュエルシードが……」

「この世界、てかこの街に落ちてしまった、と言うことだな」

「はい……情けない話ですが……だから僕がすべて回収しないといけないんです。僕のせいで迷惑かけるわけにはいきません」

 

 と、ユーノのその決意は固いようで、聞いている分には別にユーノの性とは全く持って思えないのだが、糺だそう言ったところでそれを止めるなどと言う選択肢は全くないのだろう。それなら、と糺は言う。

 

「分かった。巻き込まれた(よし)みだ。手伝ってあげるよ」

「え……? でも」

「でもじゃないよ。ユーノ君一人ぼっちで助けてくれる人いないんでしょ、一人ぼっちは淋しいもん、わたしにもお手伝いさせて。困っている人がいて、助けてあげられる力が自分にあるなら、そのときは迷っちゃいけないって。これ、うちのお父さんの教え。ユーノ君は困ってて、わたしはユーノ君を助けてあげられるんだよね。なら手伝いたいな」

「そうだ、それにそんなこと一人で抱えていたらいつか潰れるぞ。もうユーノとは他人じゃないし、いつでも頼ってくれ。僕にできることなら微力を尽くそう」

「なのは、糺……ありがとう」

 

 そう言ってユーノは深々と頭を下げる。そこでなのははハッとした様子で声を上げた。

 

「いけない! 私断らないで出てきちゃったの! 早く帰らないと」

「ユーノはどうする? 高町の家に行くのか?」

「ユーノ君はうちにおいでよ。家族にもう話しちゃったし」

 

 なのははユーノを抱えるとパタパタという擬音が付きそうなほどせわしなく帰っていった。時間は既に10時。子供が出歩くには遅すぎる時間だ。警察に見つかると面倒なことになると思い、糺はこっそり隠れながら帰路へ着いた。

 

「そう言えば、なんであの詠唱僕が分かったんだ?」

 

 帰宅途中、時間がないために保留にしていた疑問をコマンに投げかける。数秒の空白の後、コマンから帰ってきた答えは、

 

『百戦錬磨、あれは戦闘の経験を得るだったので、もしや私の使える魔法の詠唱を知っているのではないかと思いました』

 

 つまりあの百戦錬磨という特典は、このコマンを使った戦闘の経験を得るもので、コマンが使える魔法、およびコマンで使える技をすべて使えるということだ。

 なるほど、と糺は思う。確かにあの詠唱は気づいた、と言うよりも思い出したと言う感覚に近かった。すでに知っているものだったと言うこと。

 

「んじゃ、他にも色々使えるんだな。……どんなのか分からないし今度試し撃ちでもしようか」

『それが良いかと思います』

「あいよ、じゃ、早く帰るか」

 

 それっきり二人の間には会話は無くなったが、糺はこういう沈黙は嫌いではない。家まではもう少し。早く帰らないと流石にはやても心配するだろうと思い、足取りは心なしか早まっていた。

 

 

▽▲▽▲▽▲▽

 

「遅い!! 何してたんや!!?」

 

 帰ってそうそう糺ははやてに説教をくらっていた。それも玄関先で正座させられて。家を出て行って1時間ちょっと。それだけ見ればそこまで遅くは見えないかもしれない。問題は時刻だ。9時に出て良き、帰りは10時過ぎ。10歳未満の子供が一人で出歩くには遅すぎる時間帯だ。

 

「すいません……」

 

 糺自身自分に非があることは分かっていたので反論も出来ずに平謝りをする。とは言え、説明しようにも到底出来る物ではないのでどっち道謝るしかないのだが。

 

「大体な、一緒に住むと決まった日から、理由も説明せんでどっか行くってどういうこっちゃねん!?」

「断り入れました」

「そう言うことや無いんや!!」

 

 そこまでは強気だったはやての表情が一気に曇る。何かを思いつめたような、そんな表情に。自分は寂しいと打ち明けた時のような表情に。そして意を決したようにはやては言う。

 

「……私、心配だったんよ。糺が帰ってこんのやないか、どっか行ってまうんやないかって」

「そんなわけないだろ。今日ここに住むって決めたばっかだぞ」

「だから余計にな、全然家族って感じや無いやんか。だからこんな繋がり、プツッって切れそうやんか」

 

 はやては家族と言うものに強く憧れる。自分は持っていないものだから。だから、やっとできた家族がうれしくて、うれしくて仕方がなかったのだ。それでも心のどこかにはまだ大きな不安があるのだろう。この家族(つながり)はいつの間にか消えてしまうような、無くなってしまうようなちっぽけなものなんじゃないか、と。

 そう思うと糺はいてもたってもいられなくなった。この元気な姿は不安の裏返しなんじゃないか、本当の自分を押し殺して元気に振舞っているだけなんじゃないか、と。そう思うと途端にはやてが儚く、すぐに壊れてしまいそうなものに見える。

 そんなはやてを糺はいつの間にか抱きしめていた。

 

「わっ、れ、糺、どうしたん?」

 

 驚いたような声を上げるはやては既にいつも通りで、そんなはやてに糺は言葉を紡ぐ。こんなに小さなはやてを安心させたくて。

 

「大丈夫だ。僕はもうはやての家族だ。どこにもいなくなったりしない。消えたりしないから、安心して。これから同じ家で、一緒にご飯食べて、一緒に笑い合って、毎日を一緒に過ごすんだ。だから僕ははやての家族だ。これからずっと。約束するから」

 

 そう言いきる。はやては何も言わない。それでも震える手の感覚が伝わってくる。そしてはやては顔を上げて、震えた声で。

 

「糺、ありがとぉ」

 

 はやても糺に抱きついたままそう言った。

 

 それから十分後。ようやく収まったはやてと糺はいまだにさっきと同じ場所にいた。

 

「よくも泣かしてくれたなぁ、われぇ」

「えぇぇ~…… 話の流れ、違くね? さっきの話から捻じ曲がってんぞ」

「ははっ、冗談や。まぁ、さっきも言ったんやけど、ありがとうな」

「ああ、気にするな。家族だろ」

 

 そうやな、とはやてと糺は笑いあっていた。そこにはさっきまでのしんみりとした空気は無くなっていた。

 

▽▲▽▲▽▲▽

 

「と言うわけで一緒に寝ようや」

 

 風呂から(もちろん別々に)上がったところで、糺ははやてにそう言われる。その台詞にドキッとしなかったと言えば嘘になるが、その前に言うことがある。この台詞の前に会話をしていたわけでもなく、第一声目がこれである。つまり、言いたいことと言うのは、

 

「いや、何がと言うわけだ。」

 

 と言う使い古されたようなセリフである。そもそも夜、気持ちよく寝るために糺は2階を大掃除したと言うのに、それではまるで意味がなくないと言うものだ。

 

「ダメなん?」

 

 今ので否定したつもりだったのだが、はやてにそう上目使いで迫られるとつい、決意も揺らいでしまう。

 だが、それでも糺は頑なにそれを拒む。

 

「だ、ダメに、決まって、いる……だろ」

「今、迷ったな。交渉の余地ありと見たで」

 

 ……頑なではなかったものの何とか断った。それがはやてに付け入られるスキとなる。糺の返しにニヤリとしたはやては、最後の手段とばかりに、上目使い+涙目;甘えた声で。、

 

「家族やろ?」

「うっ、か、家族でも、だ、ダメ、だ」

 

 何とかはやての攻撃を凌いで断る。はやてはぶうっと口をとがらせる。しかし糺も譲る気はないのだ。そもそも、今まで誰かと一緒に寝るなんてことはしたためしがなく、正直恥ずかしいと言う気持ちが大半なのだった。

 

「じゃあ、もう良い時間だし寝よう!」

「え、ホンマにダメなん?」

「おやすみー」

 

 いまだに食い下がっているはやてを若干スルーしながら糺は二階へ向かう。下からイケズー! と言うはやての声が聞こえたがそれには完全にスルーして寝に入る。その時の時刻はすでに11時を回っていた。

 転生をして1日。ここでようやく、初日にしてはやけに濃い1日がようやく終わった。




はやて「叶夢さん、一言言わせてくれへんか?」
叶「ん? なに?」
は「この文字数なんやねん!!?」
叶「切のいいとこまで持っていきました」
は「で?」
叶「ですからね、長くなっちゃいました、と」
は「で?」
叶「いや、あの、はやてさん? なんか、怒ってません?」
は「いや、私は怒ってへんで。別にまさか最後にあの話入れた後に私をここに出すとか、別に気にしてへんで?」
叶「ヒィッ、デジャブだぁ…… 次回予告」
は「逃がさへんでぇ」
叶「『日常と非日常』お楽しみにっ」ダッ
は「あっ、こら! 逃げんなや!!」
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