魔法少女リリカルなのは Second Life   作:雪都 叶夢

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日常と非日常

 翌朝、いきなりの出来事に疲れがたまっていたのか、少々寝坊をしてしまった。とは言っても朝8時。学生の休日などはこんなものだろう。下手をすれば昼間で寝ている、なんて人もいるかもしれない。

 とは言っても、下に降りてみれば、すでに朝食の準備は済ませており、はやては糺を待っていたのかテーブルについてテレビを見ていた。そのはやても糺が降りて来たことに気付いたのか、顔を糺に向ける。

 

「おはようさん。起こしはしたんやけどやっぱ1階からじゃ声届かへんか」

「おはよう。すまん、明日からは気を付ける」

「そやな、朝は毎日7時にとってたんよ。合わせられるか?」

 

 それなら大丈夫だ、とはやてに返しながらテーブルに着く。事実、糺は以前まで朝6時に起きていたのだ。今朝はやはり慣れない環境だったから疲れがたまってしまったのだろう。明日からはそこら辺はきちんと合わせられるはずだ、と糺は考える。

 

「いただきます」

「いただきます」

 

 二人そろって朝食を食べ始める。冷めてしまっているが、それでも十分においしい。

 

「やっぱはやての料理、うまいな」

「そんなことあらへんよ。もうずっと一人やったから慣れとるだけやで」

 

 そんな些細な会話をしながら朝食を食べていく。二人とも話をしながらも、20分と掛からずにすべての料理を平らげてしまった。

 

「はやて、今日はなんか予定あるのか?」

 

 ふと、はやてにそう聞く。糺自身にはこれと言った用事は無いために時間がある。はやてに用があるならそれについて行こうかと思っていたのだ。

 

「んとな、昨日図書館行くつもりやったんやけど行きそびれたから、今日行こか思っててん。一緒行くか?」

「ああ、どうせ暇だから行くよ。本も嫌いじゃないし」

 

 これは事実だ。糺は以前から本だけを与えられていたために同じ本を何度も繰り返し読んでいたのだ。自分と違って自由なその本の主人公たちに胸を躍らせたものだ、と思うが、ふと思う。今の自分はその本の主人公の様に自由ではないか、と。そう思うと少しうれしくもあった。

 

「ほな、行くのは9時ぐらいや思うから準備しててな」

 

 二人そろってごちそうさま、と言って食器を運ぶ。洗うと言ったがやはりはやてには断られてしまった。こうなったら料理作れるようにして少しでもはやてに楽をさせたいと糺は思う。流石にいつまでたってもしてもらってばかりだと少し肩身が狭い思いなのだ。

 

 それから30分後、はやてと糺は家を出る。目的地は市立図書館である。糺ははやての車椅子を押しながらなので顔は見えないが、それでも楽しそうにしているのが分かる。誰かと図書館に行くと言う経験がないためにうれしいのだろう。そんなはやてを見ていると糺までもが楽しみになってしまうと言うものだ。会話をしながら糺は目的地まで進む。

 

 それを見つめる影が一つ。世にも珍しい物を観察するような目でその目は糺を捉えていた。はやての家の上で、仮面を被ったそれは静かに風にかき消されるように小さく一言のみ言葉を発した。

 

「闇の書が目的か?」

 

 その問いの答えはいらない。彼が魔導師だと言うことは分かっているのだから。

 

▽▲▽▲▽▲▽

 

 図書館でははやては数冊の本を持って席に着く。はやて曰く、昼までの3時間はここで過ごすらしい。糺もそれにならって、興味のある本を適当に探し、はやての向かいへ座った。

 すでにはやては本を読み進めており、礼のことは気づかなかったようだ。すごい集中力だと感心するが、糺もそれは人に言えたことではないかもしれない。実際親友には集中力が無駄に良いと言われた記憶がある。

 1時間ほどそうやって過ごしただろうか、ふと顔を上げるとはやても糺をを見ていた。

 

「どうしたんだ?」

「いや、すごく集中しとったから、気づくかなぁって」

「……ちなみにどれくらい」

「ん~5分くらいやな」

「マジか、気づかなかった」

 

 こうして顔を上げたのだって偶然だったのだ、下手したらずっと気づかないままだったかもしれない。そう思うと糺は内心自分に苦笑した。

 

「やっぱり。私も集中してると周り見えんようなる、って言われるけど、糺も負けとらん見たいやな」

「あ、僕もさっきそう思ってた」

「なんや、意外と似た者同士なんやな、私ら」

 

 だな、と二人はまた笑いあう。それっきり会話は無くなってしまったが再び各々手に持つ本に目をやり始める。1時間ほどですでに半分まで読み終わった糺は、はやてはどれくらいだろう、と思い一寸目をやる。そこには二つに分かれた本の山。糺が座ったときは一つの山だったから、分けてある1冊はもう読み終わったんだろうか。

 

「なんや、どうしたん?」

 

 そう思いながら少しだけのつもりが見つめ続けていたようだ。はやては糺の視線に気づきそう言う。

 

「いや、もう1冊読み終わったのかなって」

「ああ、そやで。もう本読むの早よなってな。こんくらい朝飯前やで」

「へぇ、すごいな。僕はまだ半分くらいだ」

「十分やないの。普通の人はもっと遅いんちゃうかな」

 

 そんな会話を途中途中に入れつつ本を読んでいるとあっという間に残りの2時間はたってしまった。結局はやては持ってきていた3冊と言う量の本を3時間で読んでいた。平均から見ても早い方だろう。糺は3時間で1冊ちょうど読み終えたところだった。

 12時になり腹も減ったと言うことで糺とはやては図書館を後にする。

 

▽▲▽▲▽▲▽

 

 昼食を食べ終え、午後からは二人は別行動になった。はやては病院に行くらしい。足の病気のせいで何日かに1回通ってるとのことだ。糺はその間暇になったため、この街をぶらぶらと散歩をするつもりだった。

 

「あ、忘れてたけど、着替えとか買わないとなぁ」

 

 独り言をこぼしながらも目的を決める。どっちかと言えば散歩のついでに買い物、と言うふうになっているようだ。ショッピングセンターのある中心部へと歩きつつも周りをもの珍しそうに見て回る糺。こんなふうに出歩くのはまだ多くは無いため、興味を引かれることばかりだ。

 日常と非日常の境と言うものは、この世界に来てから非常にもろくなった、と感じる。もっとも前の世界での日常は酷いものだったが。

 今の今まで普通に歩き、普通に散歩をしていた。しかし次の瞬間あたりは一変した。景色は変わらない。されど、雰囲気はガラリと変わる。人間が自分を除いて誰もいなくなったのだ。一寸の混乱の後、頭上から声が響く。

 

「貴様の目的は闇の書か?」

 

 声のした方を見上げるとそこには仮面の男が立っていた。否、浮かんでいたと言う方が正しいかもしれない。空中にとどまるそれは、糺に対し殺気を飛ばし、今にも襲いかかってきそうなほどだ。

 その仮面の問いは、問いであるにもかかわらず問いではなかった。答えようと答えまいと殺す。そうその仮面の殺気は言っている。

 

『マイロード』

「ああ、コマンドメンツ、セットアップ。二刀(ダブルセイバーフォーム)

 

 コマンに急かされるように展開し、その仮面と対峙する。白いロングコートを着込む糺の手には既に両手には刀が握られており、いつでも戦える準備をした。しかし次に言葉を発した仮面は驚いた様子で声を上げる。

 

「その魔法陣にデバイス…… ベルカの十戒だと…… 貴様それをどこで?」

 

 そんなことを聞かれても、もちろん糺は知らない。だが、ここでそう素直に答えるのも癪だった。糺は仮面を挑発する。

 

「そう言うことは勝ってから聞くものじゃないか?」

 

 戦士なら、戦い、拳をぶつけ合い、問答をするのが道理。糺が言ったのはそういうことだ。その返しに意表を突かれたのか、仮面の男は軽く鼻で笑い、拳を構える。

 

「フッ、良いだろう。行くぞ!!」

 

 それを合図とばかりに、両者、ぶつかり合う。仮面の男は無手だったがそれを魔法で強化しているようで切れることは無い。1撃2撃3撃と入れていくが、相殺し、相殺され、どちらも有効打を与えられない。

 

「フッ、挑発するだけのことはあるようだな」

「それはどうも」

 

 憎まれ口をたたき、距離を取る。両者ともに接近戦闘(クロスレンジ)のためこの距離だと攻撃は出来ない。そう糺は考えたのだが、

 

「攻撃できないとでも思ったか。何のための魔法だ! フープバインド!」

「しまっ……!!」

 

 その声と共に現れる3重の輪によって体が固定される。足は固定されていないものの手が動けないために攻撃も防御もできない。バインドこそ簡単なため楽に抜けることはできるがそれでも多少の時間はかかる。動けないスキに、と言うように仮面は接近し攻撃を加える。

 

「……くうっ!!」

 

 1発殴られることによる激痛。ただ殴られる物よりも魔法で強化してあるために数段重く痛い。しかし2発目、以降を避けることが出来、その間にバインドも抜けだす。

 瞬時に5メートルほどの距離を離し、刀を両腰の鞘に収める。刀の中で最速の技。敵を殺すための居合を出すために。足元に白く三角の魔法陣が広がる。

 

居合(イアイ)飛閃(ヒセン)‐!」

 

 その5メートルも離れた場所からの居合。普通ならそれは届くはずもなく、されどそれは普通なら、である。この居合は一()の斬撃をも()ばす居合。故に()()。その刹那の斬撃は5メートルと言う距離を瞬く間に喰らい、仮面に迫る。

 

「ホイールプロテクション」

 

 タッチの差だった。一瞬速かった仮面の盾が斬撃を受け止め消した。だが、糺はそれを見越して、次の技に入っていた。既に展開された魔方陣からは、先ほどよりも強い光があふれている。

 

演舞(エンブ)突煉(トツレン)‐!!」

 

 その距離を今度は自ら動き一瞬で詰める。そこから間髪入れず、そのスピードのままの4連撃。止められるはずがない。先ほど防御を展開したばかりで今はその直後なのだ。とっさに両手でガードするも空中では踏ん張りが利きにくい。仮面はその4連撃をくらい、地に叩き落された。

 

「クッ、やるな」

 

 だが、そのダメージが無かったかのように立ち上がる仮面の男。その力の差はどちらが強いわけでもなく、拮抗していた。これは大技を使うしかないか、と思った糺だが、仮面はその身をひるがえした。

 

「お前には聞きたいことがあったが時間のようだ。闇の書、とは関係ないようだしな」

 

 それだけ言うとその場から転送したのだろう、一瞬で消えてしまった。それと同時にその場に張られた結界は跡形もなく消え去り、戦闘をした跡はきれいさっぱりと消えてしまった。

 一息ついた糺だったが、今の自分の姿を見てあわてる。この奇異な姿でいるのは見つかってしまってはまずいと、特にはやてに見つかってしまっては。すぐさま地面に降りて、そのバリアジャケットを解除する。

 

「全く、なんだったんだ? 闇の書とかベルカの十戒とか」

『ベルカの十戒についてはお答えできます。それは私の名から取った古代ベルカ時代の通り名です」

 

 全く返答を予期していなかった独り言にコマンが答える。

 

「え? お前って昔からあったのか?」

『はい、私が消滅しかけたところをトラン様に拾われたのです。その時の主はもうすでに亡くなりましたが、その時に私は主と共に“十戒の騎士”を名乗っておりました。私の名と能力から取られたようですね』

「えっと、お前の能力って?」

『今はどうか知りませんがあの時代には世界最多の戦闘体型を持っておりました。その数10。今まで使っている初期の無手(ノーマル)と刀の二刀(ダブルセイバー)の他にも数多くの体型があるのです」

「へぇ、じゃあれか、どんな敵が来ても大丈夫だぞ、と」

 

 何とチート臭い、と糺は思ったが、それでも自分の持つものなので文句は無い。たった2日でこんなに騒動に会うんだから、手札は持てるだけ持つに越したことは無いのだ。

 その話をしているといつまでも先に進めないような気もしたので糺はその辺で話を打ち切り、当初の目的だったショッピングセンターへと向かった。




叶「さて、今回はいかがだったでしょうか?」
糺「いいかげんな文字数は相変わらずだな?」
叶「そ、そこは気にしたらいけないだろう? 頑張れば続けられるけど、この後特に何もイベントないしここで切っていいやん!?」
糺「その変な方言どこのだよ……」
叶「ま、まぁ今回は強さこれくらいかなぁと思って書いたんですが、強すぎた?」
糺「仮面が? 僕が?」
叶「君が。でも仮面って実際どれくらいなのかよく分からないんだよな」
糺「まぁ、何とかなるんじゃない?」
叶「いや、ならんだろ。さて次回。時間軸は一気に吹っ飛ばします」
糺「いや、ダメだろそれ!?」
叶「実際、無印ははやてとの絡み少なくてさぁ、やる気が……」
糺「え? 叶夢ってフェイト押しじゃなかったっけ?」
叶「フェイトも好きですが何か? ただ、いかんせん人物少なくて、合間の話が思いつかん」
糺「そこはがんばれよ……」
叶「次回『もう一人の魔導師』」
糺「そこまで飛ばすのか……」
叶「お楽しみにっ!!」
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