魔法少女リリカルなのは Second Life 作:雪都 叶夢
はやての家に居候をして、否、はやての家族になってすでに2週間の日が流れた。その家での生活にはすでに慣れ始めていた。
初日はともかく、それ以外は6時に目が覚めてしまう糺だったが、暇な時間をもてあそばせるわけにもいかない、と言うよりも、暇が嫌だった糺は、今では毎朝ランニングに出かけている。いまだ見たことのない場所も走って見れるし、トレーニングにもなると糺は大手を振って毎朝1時間走っている。
「ただいま」
「おかえり。もう朝ごはん出来てるでぇ」
今日も時間どうりに帰ってきた糺を迎えるはやて。その姿ははたから見ればすでに夫婦の様な光景だったが、当の二人はそれに気づいていなかった。
今日も二人そろって食事を始める。もう何日も続いている光景だ。
あれから2週間たったわけだが、ジュエルシードの方はと言うと、礼自体あれ以来ジュエルシードの方には行っていない。行こうと思ってもすぐに事態は収拾してしまうため、もしくはちょうどはやてと一緒にいた時だったため行くことが出来なかったのだ。だが、逆に一人で収集出来るようならと別段なのはの方に行かなくてもいい気がし始めているのは確かだった。
「糺、今日も午後から図書館行こう思うんやけどどないする?」
食事も今食べ終わると言う時にはやてにそう言われる。図書館と言えば、昨日も行ったばかりだった。とは言え、特にすることもないので、やることと言えばそれくらいになるのだろう。だが、糺としては、流石に2日も続けて汝官も本を読み続けられる精神力は無い。
「あー、僕はじゃあ、適当に散歩でもしてくるよ。午前中はいつもどうり?」
「そやね。糺は2階よろしくやね」
やんわりと断っておく。
そして午前中の予定は掃除である。毎日やるわけではないが、流石に2日に1回はやるべきだろうと言うことになっている。はやては1階、糺は2階と、早く終わったらはやての手伝いである。
食事も終わり、食器を洗う。これは最近になって糺も洗うことになっていた。はやては最初、一人で洗うと言い張っていたが、妥協案として一緒に洗うことを提案したら渋々ながら了承してくれたのである。今では、すでにノリノリで洗ってはいるが。
「うっしゃ、これで終わりやな」
「だな。じゃあ、掃除しますか」
食器洗いを済ませた二人は掃除に取り掛かる。たかが2日と侮るなかれ。使っていなくとも結構ゴミと言うものは溜まりやすい物なのだ。
▽▲▽▲▽▲▽
午後になり、糺は出かける。行くところは決めてはいないのだが、すでにこの辺りはほとんど見終わっているので、少し遠出でもしようかと考えていた。とは言うものの、半日なので、隣町までが良いところだろう。
「さて、走りますか」
そう呟いて走り出す。空は真っ青に晴れ渡り、散歩日和と言うものだ。しばらく行くと海も見える。この海鳴市は森もあり、海もありと自然豊かな街なのだ。
のんびりとした様子で走ること数十分。そののんびりとした空気はコマンの一声によって壊される。
『マイロード、ジュエルシードです。ここから近いですが、行きますか?』
ジュエルシードが発動する。そしてその直後、あたり一面に結界が発動する。
「これは行くしかないでしょ。コマンドメンツ、セットアップ」
『イエス、マイロード』
すぐさまセットアップして、ジュエルシードのもとへ飛ぶ。比喩でもなく、文字通り、背に翼の魔法を生やして。既に結界内のため糺は全力で、その中心へと急ぐ。
そしてジュエルシードが発動した地点に行くと、そこにいたのは、
「ね、猫!?」
大きくなった猫だった。おそらく願いをかなえるジュエルシードが、捻じ曲がって願いを叶えることは無く、正しく願いを叶えた結果なのだろう。願いは大きくなりたい、だろうか。
そして、次に見えたのはなのはと、もう一人の金髪の魔導師の戦闘だった。
互いに睨み合い、すきもなく構えている。だが、それでもそのなのはともう一人の魔導師との力の差は歴然で、負けるだろうと言うことが容易に予想された。それほどまでにもう一人の金髪の魔導師は堂々として、その魔導師と言うものが様になっていた。
糺はその戦いに邪魔したら悪いと、物陰に隠れて見ていることにした。
じっととどまったまま動かない二人。その拮抗を崩したのは、金髪の魔導師だった。自分の杖を鎌状にした魔導師はなのはに向かって突進をする。素早い動きで足元をすくうように刈るが、なのははそれを飛んで避けることが出来た。その離れた距離を埋めるように、魔導師は遠距離攻撃を繰り出し、その隙に激突する。
「なんで……? なんで急にこんな!」
絞るようになのははそう問うた。その問いにもう一人の魔導師は、つぶやくような力ない声で一言。
「答えても、たぶん意味がない」
そのまま鍔迫り合うようにして距離を取る。なのははまだ魔法を使い始めて間もないだろうに、すでにその魔導師とやりあうことが出来ていた。
最初の位置に戻った二人はどちらも遠距離の魔法をためる。一瞬でも気を抜いたほうが、負ける。はたから見てもそんなのは分かったはずなのだ。それでも、なのはに合ったのは油断だろうか、一瞬、動いた猫に気を取られたのがいけなかった。目を離したスキにと、魔導師は魔法弾を撃ち込む。その爆風でなのはは宙を舞った。
「って、やべ!!」
その戦闘に見入っていたために一瞬おくれたが、それでもなのはを受け止めるだけなら余裕だろう。展開しっぱなしだった飛行魔法でなのはの下に行き、落下するなのはを受け止める。
「誰? あなたもこれを?」
急にあらわれた糺に対して魔導師はそう問いかける。それに対しても糺はいたって冷静な口調を装う。
「人に尋ねるときはまず自分から、ってな。君の名前は?」
「そう、ならいい。倒すだけ」
そう言って名乗ろうとはせずに、糺に向き合う。もうすでに戦闘をしようと言う構えだった。糺もなのはを地面に寝かせ、刀を取り出す。
「僕は糺。真掛糺だ。君は?」
「……フェイト・テスタロッサ」
名乗られたのだから名乗り返さないといけないとでも思ったのだろう。先ほどは断られていた名をすんなりと教えてくれる。武器を向けてくる時点で悪いやつだ、と言う人もいるだろうが、糺は悪い子ではない、とそう感じた。根っからの悪人ならわざわざ名乗り返すわけがないのだ。
その場に再三の静寂が訪れる。その静けさも針でつつけば壊れてしまうようなもの。直後響く地を蹴る足の音でその均衡は崩れる。それは糺の足音だけしかなく、
「フォトンランサー」
フェイトはその場で魔法を撃つ。先ほどなのはを昏倒させた魔法。直撃はヤバい、と直感が知らせる。幸いにもそれは直線にしか進まない。右に一歩ずれて避ける。しかし、これは流石戦い慣れていると言ったものだろう。
「そんなの、お見通し。サイズスラッシュ」
避けた先にはすでにフェイトがデバイスのバルディッシュを構えて切りかかっていた。魔力で威力が上乗せされたその鎌は十分に脅威であり、威力は申し分ない。両手の刀をクロスしてその刃を受け止める。一瞬の静止の後、二人は後ろに飛び退く。どちらの顔にも慢心も油断もない。ただあるのは、勝利への執念とでも言おうか、そう言う類の気迫だけだった。
「やるね」
「無駄口は、いらない」
『
バルディッシュの声と共に回転する刃が飛ぶ。いきなりの攻撃にとっさに防ぐが、目の前にはフェイトが迫る。なのはにも使った戦法。単純だが、それ故に強い。それも受け止めるが、その勢い、威力は抑えきれなかった。その力が流れるままに木に激突する。この戦い、ここにきてようやく一撃が決まった。それでもその一撃は決定となるような一打ではなく、このまま戦いは続くのだろう。
またしても先に動くのはフェイト。糺は先手に出ることは無く、すべてに対処しているようだ。先ほど同様、フォトンランサーを飛ばしてくる。だが、二度同じ戦法は使えない。それは戦いの鉄則。糺も同じように魔法弾を生成し相殺させる。だが、それこそ罠だったのだろう。気づくべきだった。
「撃ち抜け、轟雷」
『
機動力を活かす戦い方をするフェイトにとってこの魔法は足を止める必要があるために多用はしない。だが、多用しないだけで、この魔法は足を止めるだけの価値があるのだ。その太い光線の様な魔法は糺に直撃。土埃が舞う。それでもこの戦いの結果を予想するにはたやすいだろう。フェイトもこれで勝った、そう思った。だが、土埃が晴れ、見えたのは無傷で立つ糺の姿だった。
「ああ、ホントはちゃんとした魔法使わないつもりだったのに。強いなぁ、フェイト」
思い返してほしい。この確かに言葉通り、糺は今までちゃんとした魔法、と言うものは使っていなかった。だがここにきてその自分で決め守っていたルールを破ったのだった。
「……ふざけないで」
「え?」
「ふざけないで!!」
その声と共にフェイトの周りには数十と言う
怒るのも無理はないだろう。それでは今の今まで、必死に戦ってきた自分が馬鹿のようではないか。本気でやらずに、ただ遊んでいただけだと言うのか。
その怒りがその魔法に現れたのだろう。占めて38もの
糺の足元には白い魔方陣が展開される
「
先ほども凌ぎ切った魔法とは別のもの。乱れ襲う弾丸1発1発をすべて見切る。まるですべての弾丸が糺を避けて通っているかのように。その魔法のからくりとはいたって単純。すべての弾丸の内、危険なものだけを魔力を纏う刀で風を切る如く打消し、細かな、弾丸は体を回転させて避けるのだ。体に纏う魔力で押されるように、弾丸はその周りを綺麗に避けていく。そして数秒後、全弾打ち切ったフェイトの前にいるのはすべて躱しきった無傷の糺。
「すご……」
思わずその言葉がフェイトの口から出てしまう。だが、そこで魔力が尽きたのだろう。糸が切れるようにフェイトはその場で倒れてしまった。
「えっと、僕の勝ちかな?」
とりあえず、と糺は封印用の魔法弾をジュエルシードを取り込んでいる猫に当て、それを封印する。そしてその足でフェイトの下へ行き背負う。流石にこの場所に放置と言うわけにもいかないだろう。
「お疲れ様。流石だね、糺」
不意にユーノから声を掛けられる。すっかり忘れていた糺としては少々気まずいものがあった。
「おお、ユーノ。巻き込まれなかったか」
「僕は大丈夫だよ。それよりジュエルシードを」
「……え?」
「……え?」
あまりの図々しさに言葉を失ってしまう。何を血迷ったのであろうか、このイタチ、差も当たり前のように人の功績を奪おうとしたではないか。別段糺としては必要でもない訳だが、ここまであからさまだと逆にやりたくなくなるのが人間と言う物だろう。
「ん~、なんかなのはだとフェイトに取られそうだから僕が預かっておくよ。じゃ」
それらしい言い訳をして飛行魔法を使って、その場を離脱する。後ろでユーノの声がしたが、糺はそんなものには耳を貸さなかった。
▽▲▽▲▽
ジュエルシードを入手後、糺はフェイトを連れて近くの公園まで来ていた。本当は家にでも連れて帰れたらいいんだが、あいにく糺はフェイトの家を知らないためそれは出来なかった。
時間はまだあるとは言えど、帰りはここらを通っているバスになることだろう。
適当にフェイトをベンチに座らせる。変な愛誠になっていないかを確認してから糺も座る。ここで変な大勢になっていたら起きたときにあちこち痛くなる
はっ、と意識が覚醒するころには既に日は傾き、空は夕焼けに染まっていた。もうフェイトは帰ってしまっただろうかと、隣を見ると、そこにはじっとこちらを見つめるフェイトがいた。
「うわっ、まだ居たのか」
「失礼、です。連れてきたのは、そっちのはず。お礼したかった」
明らかにむっとしたフェイトに、そんなの別に良かったのに、と返す。
「あ、さっきはごめんな。まさかあんなに怒るとは思わなかった。……本気でやらなかったわけじゃないんだよ。まだ戦い慣れてないからさ、魔法に頼らないでやってみたかったんだ」
「そうだったんですか? でもこちらこそすいません。あの魔法…… 怪我しませんでしたか?」
あの魔法、と言うのは
「まぁ、魔法で避けたから大丈夫だったよ」
「えっ!? あの魔法、避けたんですか? ……普通は無理ですよ……」
驚きを隠せないフェイトは、変なものを見るような目で糺を見る。糺は魔法も教えるつもりは無かったので、もう苦笑いをするしかなかった。
「じゃあ、はいこれ。お詫び」
そう言ってポケットから取り出したのはジュエルシード。蒼い宝石のようなそれは、先ほどのような暴走状態にならないように封印してある。それを見たフェイトは驚いたような顔で、驚いたような声を上げる。
「えっ? いいの? 君を攻撃してたのに?」
「いいよ。どうせ僕は使わないし、てか使い方知らないし。それに君は悪い子じゃないみたいだからね」
その宝石をフェイトに握らせる。驚きはしたものの、フェイトは蚊の鳴くような小さな声で。聞き逃しそうなほど小さな声だったが、糺にはしっかりとその言葉は届いた。
「ありがと、ございます」
「うん、じゃあ帰ろうか」
公園にある時計を見ると、ちょうどそろそろバスの来る時間だった。立ち上がって、バス停の方へ行く糺だったが、後ろにいるフェイトは一向に動こうとしない。どうしたんだ、と聞いてみる糺。しどろもどろになりながらも、フェイトはそれにも答えた。
「えっと、ここに来るときは飛行魔法で来たんですが、魔力が尽きてしまいまして、もうできないんですよ。あの、それで、お金も持ってきていないので、ここに泊まろうかと……」
糺は財布をポケットから取り出して中身を見る。今日はそこまで、というか全くお金を使うつもりは無かったので多くのお金は入れてきていなかった。しかし、これなら二人分のバス代ぐらいなら出せるだろう。
「分かった。僕がおごってあげる。こんなところに可愛い女の子置いて行っちゃったら何かと危ないからね」
「えっ!? 可愛いって、そんなわけないよ」
「アハハ、僕は河合って思うから。っと、バス遅れるから早く行こうか」
そう言っていまだに座るフェイトの手を握って連れて行った。
▽▲▽▲▽▲▽
夕焼けは既に薄暗く、空の半分ほどはもう夜空だった。昼と夜の移り変わり。世界がひっくり返るそんな瞬間。以前見たそんな空が綺麗で、糺はこの空が好きだった。来るときはあれほど走ってきた道をバスはその何倍ものスピードで走っていく。それにそって景色は様々に移り変わる。
そんなことを考える糺だったが、これは一種の現実逃避でしかない。後ろから凄い視線を感じる。そして頭の中には声が響く。念話と言う奴だろうか。糺には使ったことは無いので分からないが、うっとおしいまでにその声は響く。
「<糺、ジュエルシードはどうしたんだい?>」
それは紛れもなく、先ほど糺がおいて行ったユーノの声だった。ちなみに視線と言うのはなのはだろう。フェイトと一緒にいる糺を問い詰めたい、と言ったことだろうか。
失念していた。糺は嘆く。帰りが一緒になることは少し考えれば分かっただろう。なのはのジュエルシードへの対応から考えて糺と同じ町に住むことはほぼ確実なのだ。さらにここのバスと言うのはそれほど多くない。30分に1本、下手をしたら1時間に1本と言うレベルなのだ。それだけで被る可能性は十分高いだろう。それに加え、なのははフェイトと同じように気絶していたのだ。誤差はあれど、フェイトと同じくらい眠っていたと考えるべきだ。そうなればおのずとこの時間に鉢合わせると言う可能性は格段に上がる。
はぁ、とつい溜め息がこぼれる。
「<ジュエルシードはもう持ってないよ。この子に渡した>」
「<な、何を考えているんだい、君は!?>」
その声と共になのはの肩にいるイタチからキュッと言う鳴き声が聞こえる。それほど驚いたようだ。だが、糺は思う。それのどこに不思議がる事があるだろうか、と。
「<確かに、この子はなのはを攻撃したかもしれない。でもな、僕はお前、ユーノよりもこの子の方が信じられるんだ>」
「<なっ!?>」
ユーノが何か反論があるような声を上げるが、だってそうだろう、と糺は続ける。
「<そんな動物の皮被って正体を教えてくれない奴よりは、真っ向から戦った奴の方が信じるに値する。確かお前言ってたよな? 自分たちがジュエルシードを
「<でも、それは……>」
「<でも、じゃないよ。これは今現在の状況確認だ。理由があるかもしれないが実際問題、事実だろ?>」
「<……はい。そうです……>」
「<まぁ、心配するな。この子が悪いことをするようなら僕が止めるし。それに断言する。この子は悪い子じゃない。あんな近接でやりあったんだ。きっとなのはも同じようなこと考えてるんじゃないかな?>」
その言葉でこの会話を打ち切る。だが、問題と言うものは次から次へと入ってくるものだ。後ろでじっと見ていた視線が外れたかと思うと、何やら話し声が聞こえる。そしてあろうことか、糺の反対の席になのはがやってきたのだ。
「糺君っ、ユーノ君に聞いたよ! ジュエルシードどうしたの?」
またそれか、と糺はついげんなりして答える。
「ユーノに話したからそいつに聞いてくれ……」
その答えで納得したのか、それでも違う問いを投げかける。とは言うが、違う問いと言うのもあらかた予想がつくもので、なのはが気にかけていることなのだろう。
「じゃあ、その子は誰なの? 糺君のお友達?」
その問いに、絶対にしゃべらないと思っていたフェイトが口を開いた。
「君には関係ない」
それでもそれだけを言ってフェイトは再び口を閉じる。ジュエルシードをめぐる敵だからだろうか。糺とは違い、全くしゃべろうとはしなかった。糺もそんな彼女のことを勝手に教えるわけにもいかずに、
「まぁ、僕の口から言うわけにもいかないし」
のらりくらりとなのはの問いをかわす。
「じゃあ、糺君は? ジュエルシード持って行ったって言ったけど、糺君も集めるの?」
まさかの糺自身に対する問いである。流石にそれにも答えない訳にはいかない。そもそも言い訳の材料がないのだ。
「えっと、僕は集めてるわけじゃないよ。なのはにも、この子にも味方してるわけじゃなくて、中立、っていうのかな? そんな感じだよ」
それは嘘でもなんでもない、紛れもない真実である。別にユーノのため集めようとは思わないし、フェイトが集めてるから手伝おうとも思わない。しいて理由を上げれば、面白いから。最低だ、と言われるかもしれない。だが、糺は思うのだ。こんな身近でこんな不思議で面白い出来事が起きているのに、首を突っ込まないなんてもったいない。こんな仕方のない理由だが、それでも、立派な理由。
「へぇ、そうなんだ」
その答えに満足したのか、なのははそれからは普通の、年相応の会話を始める。糺もそれならと会話をするが、やはりフェイトは黙ったままだった。
それから数分。糺たちの降りるバス停についた。なのははもう一つ先らしいので、ここでは糺とフェイトだけが降りる。言った通り、フェイトの分のお金も払ってバスから降りる。
「さて、君の家ってどこにあるの? 送っていくよ?」
「え? そこまでは良いよ。もう遅いし自分で帰れる」
確かにすでに6時は越えてしまっている。この時間を遅いと言うのかどうかは人それぞれだとしても、八神家の夕食は7時だ。まだ怒られはしないだろう。だけど、確かにお金までもらっているのに、ここから送ってもらうなんて迷惑になりそうで糺にはできない。
「ん。分かった。……じゃあ、一つ質問。なんで君はなのはと話そうとしないんだ? 話せば分かってもらえるかもしれないのに」
「……君には分からないよ。あの子と分かり合えるはずがない。君にはわからないよ」
「まぁ、僕にはわからないよ。だから分かろうと話を聞いてるんだよ、なのはも、きっと」
「っ…………じゃあ私は帰るから。……君がもし敵にまわっても私はまた戦うから。今日のようにはいかない」
「ああ、それは安心して。今日はたまたま。面白そうだったから割って入ってみただけ。なのはがあそこでフェイトに勝ってたらなのはと戦ったし」
そう言うとフェイトは唖然とした様子で目を見開く。それでも理解できないと言った複雑な表情をしている。無理もない。勝った方と戦う、なんてどんな戦闘狂だ、と思うだろう。でも最後には
「クスッ、君は不思議だね」
ここにきてフェイトは初めて笑顔を見せた。いつも無表情のようなだけあって、その笑顔はとても輝いて見える。
「うん、フェイト可愛いんだから、そういうふうにいつも笑ってたらいいのに」
どこの
「あ、あー、じゃあ僕は帰るよ。じゃあな、フェイト」
「うん、君も、今日はありがと」
いまだに下を向いたままのフェイトだがその声ははっきりと聞こえる。こんなふうになのはとも反してくれたらと思う。きっといい友達になることだろう。すでに星が瞬く空を見ながら糺は帰路へ着く。
叶「いかがでしたでしょうか」
糺「相当飛ばしたな?」
叶「書くことない。だって無印だもん!!」
糺「それ、言い訳になんないからな?」
叶「分かってらい!」
糺「あ、分かってたんだ。馬鹿だから分からないかと」
叶「地味にヒドイよな? 一応、産みの親」
糺「そうだな、一応」
叶「自分で一応って言ったけどさぁ、それ強調しなくてよくない!?」
糺「さて次回。『二人の少女と二つの思い』」
叶「あ、さらに飛びます」
糺「間の話、書こうよ……」
叶「で、ではお楽しみに!!」