魔法の世界にこんにちは   作:ぺしみんと

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UA5000いきました。読んでくださった方々に多大なる感謝を。

それと今回はちょっと長めです。



11話 共に闘う

「あなたは!?」

 

「リンディさんに頼まれてきた。助っ人だよ」

 

 茶髪が聞いてきたので、簡潔に答える。てかあなたはカミジョーさんじゃないですか。魔導師だったんかい。

 

 まあ今はそれよりも、

 

「お前が、闇の書の管制人格か」

 

 銀髪に赤目、リンディさんから聞いてた通りの特徴。間違いない。

 

「……お前は、主の友人だな」

 

 ははっ、ばれてーら。白カネキくんスタイルにしてきた意味ねえな。まあ奴にばれても問題はない。顔を隠してるのは後々の為である。

 

「やがみんは、どうしたんだ?」

 

「……主は今、夢を見ている。全てが叶う、優しい夢を」

 

 それなんて無限月読。輪廻眼が相手とか、まじで辛い。

 

「えっと、あなたは、リンディさんに頼まれてきたんですか?」

 

 カミジョーさんがこっちによって来る。

 

「ああ。でも期待すんなよ。俺はカミジョーさんより弱いからね」

 

「え、ええ……? わたしの名前、高町なのはだよ?」

 

「で、どうすりゃ良いんだ? カミジョーさん」

 

「なのはだよぅ……」

 

 名前なんて今はどうでもい……待て、今、予想だにしていない名前が出てこなかったか?

 

「高町なのはだと?」

 

「あ、はい! そうです、なのはです」

 

 まじか。これ、恭也さんの妹か。言われてみれば桃子さんに似てる気が、ってそれどころじゃないわ。

 

「どうすんのさ、この状況」

 

「えっと、とにかく、闇の書さんを説得するので、力を貸して下さい!」

 

 ……説得ね。世界がやばいってのに説得とはやっぱりカミジョーさんじゃないか。

 

 闇の書に向き直り、ジェイドを構える。

 

「……お前も、抗うというのか」

 

「ああ。世界を滅ぼされるわけにゃいかないんでね」

 

 当たり前だろう。

 

「もう、何をしても無駄だ。諦めろ」

 

 諦めんなよ! 諦めんなよ、お前!! どうしてやめるんだそこで! もう少し頑張ってみろよ!!

 

 思わず熱くなってしまいそうだが、ここは堪える。

 

「お前達も主のように眠りにつけ……そうすれば、全ての望みが叶う夢を見ることができる」

 

 闇の書が続ける。それに対し。

 

「いつかは寝るよ。でもそれは今日じゃない!」

 

 高町は強く反発する。

 

「眠るのは、明日! 夢は、自分で見る!!」

 

 俺も叫ぶ。

 

「何をしようと無駄だというのが分からないのか」

 

「……お前が何をしても無駄だって言うのなら」

 

 闇の書の言葉を否定するように、宣言する。

 

「――まずは、その幻想をぶち殺す!!」

 

 

 

 

 

 

 

 古夜となのはが闇の書に突貫する。

 

 なのはは突撃槍と化したレイジングハートで、古夜は二幻刀を使い二刀流で、闇の書と戦う。

 

「はあっ!」

 

 なのはの突きを闇の書は片手で受け止める。

 

『神槍「スピア・ザ・グングニル」』

 

『禁忌「レーヴァテイン」』

 

「うぅらぁっ!」

 

 血のように真っ赤な槍と、燃え盛る剣。二つの武器を古夜はもう片側から叩きつけた。

 

 燃費無視の全力攻撃。しかしこれもプロテクションに阻まれ、有効打とならない。

 

「はああっ!」

 

「ホリゾンタル・スクエア!」

 

 諦めず、何度でも攻め立てる。

 

 空中を飛び回り、跳び回り、何度も衝突する。だが、届かない。

 

 闇の書は静かに魔法を唱える。

 

「……ブラッディ・ダガー」

 

 古夜のスピア・ザ・グングニルと似た、紅蓮の短剣がなのはと古夜を襲う。

 

「くっ!」

 

「ちっ!」

 

 避けきれず、いくつかが着弾してしまう。強烈な攻撃に後退を余儀なくされる。

 

 古夜となのはが闇の書から離れる。

 

「……うっわー、何あれ。ドン引きするレベルの強さなんだけど」

 

 顔を引きつらせながら古夜が呟く。

 

「なんとか、バリアを越えないと」

 

 闇の書を見据え、なのはが言う。

 

「そういや、高町もカートリッジ使えんのかよ。そのデバイス、ミッド式だろ?」

 

「え? あ、はい。レイジングハート自身の要望で、搭載してもらったんです」

 

「良いなあ、俺も使いたいねえ、カートリッジシステム」

 

 古夜は少し考える素振りをした後、ふと零した。

 

「……いっそのこと、ベルカ式デバイス手に入れようかなあ」

 

『この状況で私をいらない子宣言とは、マスターはよっぽど死にたいようですね』

 

「いやいやいや違う違うって。ジェイドを中・遠距離に集中させてもう一個近接特化のを持ちたいなって」

 

「……今は、そんなこと話してる場合じゃないんじゃ……」

 

 突然変な掛け合いを始めた一人と一機に戸惑ってしまうなのは。

 

「ん? ああ、そうだった」

 

 本当に忘れていたのだろうか。

 

「じゃあ、どうやってあの防御を抜くか、だけど」

 

「……私の全力攻撃で撃ち抜きます」

 

 なのはの発言に少し意外そうな顔をする古夜。

 

「……いけるのか?」

 

「私と、レイジングハートなら!!」

 

『抜いて見せます』

 

 言い切るなのはとレイジングハート。その返答に古夜は、

 

「……じゃあ、二人がかりで特攻、だな。燃えてきたぜ」

 

 ニヤリと笑い、ジェイドを構える。

 

「いくぜ、高町」

 

「うん!」

 

 

 

「アクセルチャージャー、起動! ストライクフレーム!」

 

『オープン』

 

 レイジングハートが更に変形、魔力の槍を生み出す。

 

 

 

「俺のこの手が真っ赤に燃える! 勝利を掴めと轟き叫ぶ!」

 

 古夜が右手を掲げて叫ぶ。

 

 

 

「エクセリオンバスターA.C.S!!」

 

「ばあああああくぬぇつぅ……」

 

 魔力が高まる。レイジングハートが翼を羽ばたかせる。古夜の右手に炎が荒れ狂う。

 

 対する闇の書は無言で黒い魔力弾を生み出す。

 

 そして。

 

 

 

「ドライブ!!」

 

「ゴッド……フィンガアアアア!」

 

 激突する。闇の書の魔法となのはと古夜の魔法がせめぎあう。

 

「届いて!!」

 

 なのはが叫ぶ。

 

 

 

 魔力が迸る中、ついに、なのはのストライクフレームがバリアを抜け、古夜のゴッドフィンガーが罅を作る。

 

「ブレイク……!」

 

「ヒート……!」

 

「まさか……!?」

 

 闇の書が目を見開く。

 

「シュート!!」

 

「エンド!!」

 

 古夜がバリアを砕き、なのはが零距離から砲撃を撃つ。

 

 桜色の砲撃が闇の書を包み、爆風が吹き荒れる。

 

 爆発による煙の中から、なのはと古夜が出てくる。

 

「……っ痛~!」

 

「……これでだめなら……!」

 

 自らも傷つきながらも手応えはあった。捨て身の特攻。

 

 

 

 

 しかし、

 

『『マスター!』』

 

「!」

 

「……おおい、まじかよ」

 

 闇の書はほとんど傷ついた様子もなく、そこに佇んでいた。

 

「……永い夜になりそうだな」

 

 古夜がぽつりと、呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 時を同じくして。

 

「ん、うん……?」

 

 古夜となのはが闇の書と死闘を繰り広げている頃、八神はやては、闇の書の中で僅かに意識を回復させていた。

 

「そのままおやすみを、我が主」

 

 だが、闇の書ははやてに眠り続けるように語り掛ける。

 

 心地良いまどろみの中、はやてはぼんやりと考えていた。

 

(……私は、何を、望んでたんやっけ?)

 

「夢を見ることを。健康な体を持ち、家族と共に、穏やかな日々を暮らし続けることを」

 

 はやての思考に、闇の書が答える。まるで子守唄を唄うかのように。はやてが永久に眠り続けるように。

 

「眠って下さい。そうすれば、あなたはずっと、夢の世界に居ることができます」

 

 優しい夢への誘い。

 

 はやては、それに対して、

 

 

 

 

 

「せやけど、それはただの夢や」

 

 断言した。

 

 否定する為か、意識をはっきりさせる為か。どちらにせよ、はやては自分の意志ではっきりと首を振る。

 

「……私な、憧れてる子がおるんよ」

 

 はやてが語り始める。

 

「ちょっと前の私と同じで、一人で暮らしとる子なんやけどな。……小さい頃から一人暮らしのはずやのに全然寂しそうやなかったんや。私かて表には寂しそうな雰囲気は出さんようにしとったけど、あの子はそういうのとは違って、なんていうか、その、自然体なんよ」

 

 はやては続ける。

 

「流石に、学校の子の名前一切覚えてないんはどうかと思うけど……でもな、いつの間にかシグナムたちと打ち解けて、ヴィータにはすっごい嫌われてたのに仲良うなって、ほんまに、すごいと思った」

 

 闇の書は黙って聞いている。

 

「なんていうか、強い子なんやなって。私もこの子みたいに強くなりたいなって、思ったんよ」

 

 その言葉に、闇の書は僅かに目を見開く。

 

「せやからな。このまま眠り続けてはおられんのや。それじゃあ、いつまでたってもあの子のように強くはなれへんから」

 

 八神はやては、意識を完全に取り戻した。

 

「私は、こんなこと望んでへん! あんたも同じはずや!」

 

「……私は」

 

 はやてが闇の書に訴えかける。あなただってこんなことしたくはないはずだと。

 

「……私も、騎士たちと同じです。あなたを愛しいと思っている。……ですが」

 

 闇の書の目から、涙が零れる。

 

「だからこそ、自身が許せないのです。私の中の防御プログラムがあなたを喰らいつくしてしまう。……私には、止められない」

 

 闇の書が懺悔する。自分には、何もできないと。

 

 それに対し、はやては。

 

「……覚醒の時に、あんたのことちょっとは知ったよ。私かて同じや、悲しい思いをしてきた……でもな」

 

 不敵に、それでいて優しく笑った。

 

「今の主は、私や。主の言うことは、聞かなあかん……!」

 

 真っ白な魔法陣が現れる。

 

「……名前をあげる。呪いの魔導書なんて、私がもう、呼ばせへん」

 

「無理です……! 自動防御プログラムが止まりません……!」

 

 はやては目を瞑り、唱える。

 

「止まって……」

 

 闇を祓う、純白の魔法陣が広がっていく。

 

「止まれ……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 闇の書からの攻撃が止んだ。

 

 俺はジェイドを構えたまま様子を見る。高町も急に攻撃を止めた闇の書が気になるようだ。

 

 その時、

 

『そこの、管理局の方……!』

 

 念話が届いた。この声は……!

 

「はやてちゃん!?」

 

「やがみん、生きてたのか」

 

『生きとるわ!! って、なのはちゃんに、こういち君!? ほんまに!?』

 

 あ、名前出ちゃった。まあ、割と余裕そうじゃないか。いやはや良かった。

 

『うん、なのはだよ! 色々あって、闇の書さんと戦ってるの!』

 

 高町が念話で答える。

 

『ごめん、二人とも。何とかしてその子のこと、止めたげて……! 魔導書本体からは切り離したんやけど、その子がそうしてると、管理者権限が使えへんのや……』

 

 切り離した? まじで? やがみんすげえな。

 

『今そっちに出てるのは、自動防御プログラムだけやから……!』

 

 さっきまで戦ってた闇の書の管制人格とは違うってことか? 見た目変わってないけど。

 

 それにこれを止めるってかなり骨なんですが。

 

『なのは! 今から言うことができれば、はやてちゃんもフェイトも外に出せる!』

 

 また別人から念話。あなた誰よ?

 

「ユーノ君、今こっちに向かってる、友達だよ」

 

 律儀に高町が教えてくれる。その友達のユーノ君とやらが教えてくれた作戦は。

 

『目の前の子を、ぶっ飛ばして! 全力全開、手加減無しで!』

 

 おいおい、そりゃあ、また……。

 

「……ふふっ、さっすがユーノ君! わっかりやすい!」

 

『全くです』

 

 笑う高町。ちょっと待て、さっきの特攻は手加減してたっての? あなたも大概バケモンじゃん。

 

 まあ確かに、やること自体は単純明快、実に俺好みだ。

 

 高町が魔法陣を展開させる。全力全開の攻撃の為だろう。

 

「……じゃあ、やることは決まったな」

 

 ジェイドを構える。

 

「高町は全力全開の攻撃。んでもって俺は……」

 

 闇の書の周りから触手が生み出される。

 

「あれから、何が何でもお前を死守、だな」

 

 闇の書自体は動く気配はない、ただ、魔法生物のキメラがどんどん出てくる。

 

「高町、お前は奴だけ見てろ。死ぬ気で守る」

 

「……! わかりました! お願いします!!」

 

 ここが勝負どころだな。

 

「……やるぞ、ジェイド」

 

『わかりました。……どうか、ご自愛を』

 

 切り札を切るならここだ。実戦で使うのは初めてだけど、やるしかない。

 

 高町の前に出る。

 

 

 

 

 

「 『八門遁甲』 第四 傷門 開 !!!」

 

 

 




今回ははやての主人公に対する思いを少し。主人公からしたら誤解だろってところもありますが。

そして切り札使用。仕組みはもちろん本家とは違いますが、その説明は次回。
ええそうです。作者はガイ先生大好きです。

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