魔法の世界にこんにちは   作:ぺしみんと

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遅くなって申し訳ございません。日間の一桁台まであがっててびびってました。
読んでくださった方々、本当にありがとうございます。

章管理してみました。


Act.5 『blank』
26話 中一の夏


 中学生になった。

 かといって、何かが変わるわけでもない。周りは男だらけになったけど。これ結構変わってますね。

 

 相良とは予想通り、別のクラス。サッカー部に入るとか言ってた。

 

 ……ちょっと相良に魔法を教えて超次元な必殺技を使わせてみたくなった。ちょっとだけ。

 

 実は、士郎さんがコーチをしてるサッカーチームに入ってたらしい。あの人がコーチだと、疾風ダッシュくらいは出来るようになりそうだよね。

 

 俺は勿論帰宅部ですよ。修行優先だもん。何か最近はやらなきゃ落ち着かなくなってきた。

 

 

 

 

 

 季節は流れて、夏。

 

 真っ直ぐ家に帰ろうかと思っているとケータイが鳴った。どうやらメールのようだ。

 

 ちなみにこのケータイは中学生になった記念にリーゼ達からプレゼントされました。最新モデルですよ。ガラケーだけど。

 最新でもスマホじゃないって言うのはなかなか懐かしいものがあるよね。

 

 閑話休題。

 

 メールを確認すると、相良からだった。

 

『待って下さい』

 

 絵文字も顔文字も無しの敬語の文。お前キャラ間違ってないか?

 

 

 

 

 

「よっしゃ! 行くぞ!」

「メールとのテンションの差が」

 

 校門前で相良と合流して、河川敷に向かう。

 

 今日は皆で花火大会に行くのである。

 

「ヤベエよ! 久しぶりの美少女五人組とのエンカウントだよ!」

 

 テンションが高い。すごくうるさい。

 

「すずかちゃんみたいにお淑やかさがある浴衣が王道だけど、アリサちゃんやフェイトちゃんみたいな金髪の子の浴衣もミスマッチ感があって良いよな! なのはちゃんにはやてちゃんは可愛く着こなしそうで見るのが楽しみだな! 美少女五人組だけじゃなくて、忍さんや美由希さんの浴衣も大人の魅力があがががが」

 

 やかましかったのでアイアンクローをかまして黙らせた。

 

 

 

 

 

 花火大会の会場に到着。

 そこで丁度、美由希さんを見つけることができた。

 

「どうも美由希さん」

「あ、晃一君に透君! 皆来てるよ!」

「美由希さん! 浴衣、似合ってますね!」

「ありがと。浴衣に着替えるなら、あっちでレンタルしてるから」

 

 折角なので、浴衣に着替える。

 

 俺はこっそりバリアジャケットを使ったので、かなり早く着替え? ることができた。

 

「着替えるの早くねぇ?」

「着なれてるから」

「そっかー」

 

 何も知らない相良に適当に嘘を言うとあっさり信じた。

 こいつ、勉強はできないわけじゃないのに、わりと⑨なんだよな。

 

「お! 来たな晃一君!」

 

 そこには浴衣姿のはやて達が。クロノ達ミッドチルダの奴らも居る。

 

 とりあえず男が固まってる所へ行く。

 

「よう、久しぶりだな」

「そうだね、久しぶり」

「相変わらずのようだな」

 

 クロノとユーノにご挨拶。

 

 この二人はよく来られたな。はやて達よりもはるかに忙しいだろうに。

 

「卒業パーティーの時は来られなかったからな。何とかなのはの様子を見に来たいって、ユーノが」

「何とか妹の様子を見に来たいって、クロノが」

 

 擦り付け合わないで下さい。

 

「クリスマスパーティー以来だな、ユーノ! クロノ!」

 

 相良が二人に言う。

 

「そうだな、元気そうで何よりだ」

「久しぶりだね、透」

 

 クリスマスパーティーの時しか会ってないはずなのによく物怖じせずに話せるな。

 こいつのコミュ力はそれなりだと思う。

 

 そのまま少し話していると、ふと、相良が言った。

 

「そういやさ、クロノさんはフェイトちゃんの兄さんだけど、ユーノって何者なの?」

「高町家のペット」

「その悪意に塗れた紹介は止めてくれないかな……」

 

 相良の疑問に即答する。強ち間違いでもなかったっていうのが恐ろしいよね。本人が当時のことを話したがらないので詳しいことは知らないが。

 ふざけてる俺の代わりに、クロノが答える。

 

「ただの高町のパートナーさ」

「ちょっと。悪ノリしてない?」

 

 (人生の)パートナーですね、分かります。

 

 俺とクロノの話を聞いて、ぷるぷる震える相良。

 

「くそぉ! 羨ましいな! どっちも!!」

「え? どっちも?」

 

 素でびびった。

 こいつ、こんなに業が深かったのか。

 

「だって、女の子に甲斐甲斐しく世話してもらってみたいじゃん!」

「飼われるならバニングスじゃないか?」

「君は何で便乗してるんだ」

 

 いやだって、なんだかんだ言って面倒見良いし。ペットにはデレてそう。

 

 そんなことを話す俺たちを呆れた目で見るクロノとユーノ。

 

「仲が良いんだな」

「仲が良いんだね」

 

 揃って言われた。お前らも大概だよな。

 

 

 

 

 

 

「どや! 似合ってるやろ!」

 

 はやてが浴衣を見せびらかしてきた。

 

 はやてが着ているのは白を基調とした浴衣。帯は黄色だ。淡い紫で撫子の柄がシンプルなデザインにアクセントを加えている。

 

「似合ってる似合ってる」

「もう少し感情込めてや」

 

 むー、と不満顔。

 

「まあ、前よりも大人っぽく見えるな」

 

 何というか、皆成長したよね。小学校低学年の時からすると背もかなり伸びた。少し、感慨深いものがある。

 

「ほんまに!?」

 

 少し褒めると一瞬で笑顔になった。チョロいな。

 

「晃一君も似合っとるね、浴衣」

「ん、ありがとさん」

 

 女の子に褒められるのは、悪い気はしない。

 

「お父さん! リインはどうですか!」

 

 浴衣姿のツヴァイが飛び付いてきた。

 ツヴァイの浴衣はピンクが基調の子供向けのデザイン。

 

「うん、かわいいぞーツヴァイ」

「えへへ~」

 

 何この子可愛い。てかちょっと待て、何かさり気なく爆弾を投下されたような気が。

 

「おい晃一。お父さんってどういうことだ?」

 

 気が付いたら、後ろに相良が。え、全く気付かなかったんですけど。

 

 あ、こいつリイン見るの始めてか。

 

「お前お父さんってどういうことだ誰だその子お前の子なのかかわいいなおい羨ましいな畜生おおおお!!!」

 

 ちょっ、うるさっ。

 

「銀髪ってなんだお前あの人の子なのか知ってんだぞ修学旅行の時の警察のお姉さんと仲良くなってたじゃねえか銀髪ってことはあの人の子かそうなんだな!!?」

 

 待って君なんでリスティと親しいこと知ってんのさ。

 

 誤魔化すのが大変だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 露店巡りをする。

 

「お父さん焼きそば食べたいです!」

「はーい、あっちねー」

 

 ツヴァイを肩車しながら、移動して歩く。

 八神家の血筋故か、食べるのが好きなんだよね。

 

「お父さんが板に付いているね」

「それはあまり嬉しくないのだが」

 

 笑顔で言う月村にそう返す。

 だって、彼女できたことすらないんだぜ?

 それなのにお父さんとか、少し虚しく空しくなる。

 

「晃一君! 射的あるで射的!」

「狙撃だったら高町じゃないか?」

 

 あいつは砲撃か。

 

 折角なのでやってみる。

 

「やっぱり当たってもなかなか倒れないね」

 

 高町が苦笑しながら言う。

 俺や高町は当てることはできた。ただ倒れるかとなると別なわけで。

 

 ちょっと悔しいな。

 

「高町。狙撃が巧くなるおまじない教えてやるよ」

「?」

 

 

 

 

 

「なあ、なのはちゃんめっちゃ景品とっとるけど、何あれ?」

 

 はやてが聞いてきた。

 

 そんな高町の様子はというと。

 

「ステンバーイ……」

 

 うん、凄い集中力。

 

「あんたなのはに何教えてんのよ……」

 

 

 

 

 

 

 俺は少し飽きたので戻ると言うと、月村も付いてきた。

 はやて達はまだ露店を見て回るようだ

 

「あ、晃一君! 丁度良かった!」

 

 戻るとすぐに、忍さんにそう言われる。

 

「ごめん、ちょっと席外したいんだけど、皆居なくてさ。少しの間、雫のこと見ててくれない?」

「え」

 

 有無を言わさずに俺に雫を預けて行ってしまった。

 何今の答えは聞いてないけどねスタイル。

 

 仕方ないので面倒を見る。

 

「ごめんね、お姉ちゃんが」

「いやぁ、良いよ」

 

 雫は大人しいので、特に何かする必要は無いし。

 世話をする側には助かる。

 

「あ、花火上がったよ!」

 

 雫を抱いていると、一瞬、辺りが明るくなった。

 月村の言うとおり、花火が始まったみたいだ。

 

「綺麗だね!」

「そうね」

 

 色とりどりの火花が夜の空を彩る。

 あんまりしっかりと花火を見ることなんて無かったなあ。

 

 そんなことを思ってると、

 

「いって!?」

 

 急に痛みを感じた。

 見ると、雫が抱いている腕に噛みついている。

 

 あ、これ血吸おうとしてるわ。

 

 見られちゃ不味いので向きを変えて雫を隠す。

 

「こ、晃一君ごめん。大丈夫?」

「あーいや大丈夫。ビックリしただけだから」

 

 何で月村が謝ってるのだろうか。

 不意打ちだったから痛かったが、慣れればなんでもない。

 

 前々から何回か抱かせてもらってるけど、何か血吸われるんだよね。

 嫌われてんのかな。だったら泣くと思うんだけどなあ。

 

 あれか、血に飢えておる! 的な。

 

 

 

 

 

 しばらくすると、はやて達も戻ってきた。

 随分と幸せな時間を過ごしたのか、相良が菩薩みたいな顔してる。

 

 てか、ん?

 

「あれ? ツヴァイはどうした?」

「え? あ、あれ!?」

 

 戻ってきたメンバーの中で、ツヴァイだけが居ないのに気付いた。

 

「さっきまでおったはずなんやけど……!」

「人混みに流されたかな」

 

 探しに行かなきゃ。

 

『会場の皆様に、迷子のお知らせを致します』

 

 あ、迷子放送。

 

『晃一様、古夜、晃一様。娘さんのリインちゃんがお待ちです。本部の方までお越し下さい』

 

「…………」

 

 何で俺呼んでんだよ。はやて呼べよ。

 

 というか、魔法、使えよ。

 

 皆ある程度は同じ事を考えてたのか、しばし、無言になる。

 

 

「……ほら、行ってきなさいお父さん!」

 

 バニングスお前丸投げしやがったな。

 あんた覚えてなさいよ。

 

 

 

 何か振り回された一日でした。

 




お父さん回でした。

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