魔法の世界にこんにちは   作:ぺしみんと

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34話 海鳴市

 

 ティアナ・ランスターとスバル・ナカジマのデバイスが完成した。ミッドチルダ式デバイス、クロスミラージュと近代ベルカ式デバイス、マッハキャリバーだ。

 週末しかいないので俺がいる間に完成させるのは時間的に厳しく、徹夜だった。辛い。でも俺頑張ったよ。

 

「疲れた」

 

 辛いね。何が辛いかって、こっから大学行かなきゃいけないってのがね。さぼりたくなってきた。

 

『さぼるのはいけないと思います』

「分かっとるわ」

 

 金出してもらってるんだからな。グレアムさんに顔向けできなくなっちゃう。

 

 疲れて寝てしまったマリエルさんとフィニーノに毛布をかけ、デバイスルームを出る。二人とも完成したとたん崩れ落ちていた。

 

 若干寝惚けながら歩いていると、高町とテスタロッサの二人と遭遇した。

 

「あ、晃一君、おはよう!」

「おはよう、晃一」

「オハヨウゴザイマス」

 

 おやすみなさいと言いたかった。

 

「デバイス完成したぞ」

「本当!?ありがとう!」

 

 俺の報告に高町が顔を綻ばせる。ランスター妹とナカジマ妹は高町の部下だったっけ。テスタロッサの方にも部下はいるんだったか。

 

 そういえばまだ大分早い時間だが、この二人はどうしたのだろう。

 

「私達は、訓練場に」

「これから新人達の朝練を見に行くんだ」

「ああ、成程」

「どうする?晃一も参加する?」

 

 朝練か。精神力ばっか使ってたから、体を動かしたいところではあるんだがな。

 

「俺はこれから大学だ」

「そっかあ。大学生なんだもんね」

「大学なめんなよ中卒共」

「「辛辣!?」」

 

 眠いので多少口が悪くなっております。

 

 

 

 

 

 

 

 眠気に負けそうになること数回。やっと授業が終了。寝てないし。ちょっと意識が飛んだだけだし。

 

「お疲れさま、晃一君」

「あいお疲れ」

 

 月村とは一緒の授業が多い。学部が同じだし、忍さんにお守りを頼まれてたりするからだ。同じような理由でバニングスと相良も一緒の授業が多い。

 

「この後はどうするの?」

「山に行くか、翠屋に寄って休んでから山に行くか」

「結局山には行くんだ……」

 

 疲れてるけど精神的なものだし、体を動かさなきゃ気がすまなくなってきたもので。

 

「アリサちゃんたちもきっと向かってるし、雫が会いたがってるよ」

「そうかね」

「そうだよ」

 

 じゃあ、行きますか。ゆっくりしたいってのはあるしね。

 

「レポート提出してくるから先行ってて」

「じゃあ、出口で待ってるね」

「そう? 悪いね」

 

 まあ提出してくるだけだし、そこまで時間はかからないだろう。

 一旦月村と別れ、レポートを提出しにいく。

 

「お、古夜じゃん」

 

 今日は何頼もうか。ブルマン入ってたら良いな。

 

「古夜~」

 

 でもよくよく考えてみたらバイト休んでるのに客としていくって気まずくね?

 

「古夜!」

「ん、ああ俺か」

「いやどう考えても古夜はお前だろ……」

 

 話しかけてきたのは茶髪の男。確か、学部が同じだった気がする。何の用だろう。

 

「月村達の事紹介してよー」

「無理」

 

 即答。そういうの俺ができるわけないだろうに。ちょくちょくこういう輩がいるから困る。

 

「えー独占すんなよ。ずるいぞ」

 

 独占て。それ言うなら俺より相良の方だと思うが。あいつの方が一緒にいるわけだし。

 

「連絡先教えてくれるだけでいいから!」

「個人情報保護だ」

 

 適当にあしらう。というか、こいつの名前なんだっけ? まあ、どうでもいいか。

 

 

 

 さっさと提出を済ませ、月村のところへ。

 そこでは、月村がナンパされていた。取りあえずちょっと観察しようか。

 

「あ、晃一君」

 

! すぐ気づかれた。

 

 月村の一言で俺の存在が明らかに。男達はすぐに立ち去っていった。

 

「またナンパかい」

「ナンパって、そんなのじゃないけど」

 

 困ったように笑う月村。

 

「アリサちゃんも言ってたけど、下心が丸見えすぎて」

 

 相手にするのが少し大変らしい。

 この年で月村みたいな美少女に話しかけるって、普通下心があるもんだと思うけど。丸見え過ぎるのがいけないのかね。

 

「それだと、よく相良と仲良くできたよな」

 

 下心の塊だと思うが。

 

「相良くんは、なんか、純粋な感じがしたし。それに……」

「それに?」

「なんというか、なのはちゃんと、雰囲気が似てたから」

「……ああ」

 

 確かに。相良の方がバカっぽい感じがするけど、どこまでも真っ直ぐなところとかな。主人公気質と言いますか。本質が似てるんだろう。

 

「ま、高町も馬鹿なところはあると思うけど」

「今日、刺々しいね……」

 

 寝不足なので、いつもよ(ry

 

「まあそれはそれとして。さっき思ったけど翠屋に顔だすのちょっと気まずい気が」

「いいからいいから」

 

 月村に引きずられていく。

 痛い痛い手首がメリメリいってるって!

 

「目赤くなってる!?」

「カラコンカラコン」

 

 貴女も大分強かになりましたね。

 

 

 

 

 

 

 

 翠屋に到着した。

 

「ん、来たわね」

 

 もはやほぼ定位置と化した隅っこの席。そこにバニングスと相良が座っていた。

 

「こーいち!」

「おお雫久しぶり?」

 

 雫がお出迎えしてくれた。忍さんも恭也さんも翠屋で働いているので、自然と雫もここにいることが多い。

 ちなみに疑問系になってしまったのは、そこまで久しぶりでもない気がしたから。

 

「いらっしゃい晃一君。バイト休んで顔だすとはいい度胸ね」

「こんにちは忍さん。だから寄るつもりはなかったんですけどね」

 

 忍さんと軽口を交わしながら月村共々席につく。

 

「注文は?」

「いつもので」

「エスプレッソね」

 

 注文を済ませる。流石はチーフウェイトレス、仕事が早いね。

 

「いつもエスプレッソだっけ?」

「いや適当言った」

「またあんたは……」

 

 ここらへんのアドリブが効くのも流石である。

 

「こーいち遊ぼう!」

「少しゆっくりさせてくれないかね」

「だいじょうぶ、おままごと」

「……俺は何役?」

「こーいちがお父さん、トオルが家畜」

「おい晃一雫ちゃんにどんな教育してんの」

 

 俺に聞くなや。小太刀二刀流使いこなすスーパー六才児だぞ。恭也さん曰く剣の才能ぱないらしいし、忍さん曰く夜の一族としての力も申し分ないらしいし。

 

「むー……じゃあいっしょに山に行く!」

「勘弁してくれ……」

 

 万が一にでも怪我させたら殺されるわ。それに寝不足のこの状態じゃ面倒見きれない。

 

「こーら雫。あんまり迷惑かけちゃダメよ?」

 

 コーヒーを運んできた忍さんが雫をたしなめる。

 

「はいコーヒー。雫も一緒にジュース飲んでなさい」

「……はーい」

 

やはり母親には逆らえないのか、雫のわがままはそこで終わった。オレンジジュースを手に、月村とバニングスの間に座る。

 

「そうそう、なのは達の方はどうだった?」

 

 バニングスが尋ねてきた。

 

「ほとんど話してないんだがな」

 

 変わったところはなかったと思う。相変わらずの仕事中毒っぷりだった。

 

「あんたは簡単に行き来できていいわね」

「めんどくさいから頻繁に行き来はしないよ」

 

 それでもバニングス達より多いか。俺は独りでうろついてるけど、バニングス達の場合は高町達と予定を合わせたりしないといけないからな。

 

「最近は家の方も忙しくなってきたからね」

「そうなのよ」

 

 もうすぐ成人だからね。バニングスと月村は家の事に関わることが増えている。食事会に顔を出したりだ。

 

「晃一君、またボディーガード頼める?」

「予定が合えば」

「信頼できる護衛がいるのは羨ましいわね。あたしにも頼めないかしら?」

「予定が合えばな」

 

 お金たくさんもらえるから他の予定よりある程度は優先しますぜ?

 

「くっそ、俺もボディーガードできるようになりてえな」

 

 話に入れなかった相良がこぼす。

 

「その心は?」

「はぶられてるみたいで悲しい」

 

 ド正直か。

 

「護衛したいなら高町道場に通うことをお勧めするぜ。女の子の頼れるナイトになれること間違いなし」

「ちょっと恭也さんとこ行ってくる」

 

 相良、ログアウト。

 言っといてあれだけど、教えてもらえるかな。暫くは雫の練習相手とかになりそう。

 

 六才児にボコボコにされる大学生か。合掌。

 

 

 

 

 

 

 

 夜、はやてから通信が来た。いつもの雑談である。何でも今日、高町達フォワード陣の初出動だったらしい。

 

「無事任務は完了か」

『うん、レリック無事回収。スバルもティアナもデバイスに大満足やったで』

「そりゃ重畳」

 

 徹夜した甲斐があったというものだ。

 

「デバイスメンテの方はフィニーノが殆どやってくれるだろ」

『せやな。となると来週は多少時間に余裕が生まれるはずや』

「お待ちかねの訓練場だな」

 

 使いまくるぞー!

 

『結局修行かい。……仕事ちょっと手伝ってくれへん?』

「やーだね」

『むう……』

 

 めんどくさいだけなのはごめんです。

 

「愚痴ならいくらでも聞いてやるさ」

『それは頼りにさせてもらうわ』

 

 やはり部隊長というだけあって面倒事も多いのだろう。俺の言葉に即答するはやての顔には若干疲労の色が見える。

 

「無理無茶無謀をするなとは言わないが、体壊すなよ?」

『……まさか晃一君に心配されるとはな』

 

 苦笑するはやて。失敬な。

 




海鳴側のことも書きたかった。あと雫の性格がまったく分からない。

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