世にリリウムのあらん事を   作:木曾のポン酢

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現代兵器書きたい病にかかってガリア公国にダイアモンド・ドッグスのS++の兵士が異世界転成するってSSを書いたはいいが、自分でも面白くないと思ってしまう出来になってしまう今日この頃、皆さまいかがお過ごしでしょうか?

ハインドが活躍するSSほんと無いなぁ……


気の強い女は……

「なんだ……貴様は……?」

 

地の底から響くような低い声で、霞エリカは語りかけた。寝起き特有の不機嫌というわけでは無いようだ。

 

「全企業の注目の的な、Ms.イレギュラーよ。うふふふふふふふふ」

 

ヤバい、興奮してきた。圧倒的に有利な状況で、気の強い女代表みたいな人間の前で、小物の如く笑えるという現状に。愉快極まりない。やはり、人間たるもの餌の前では舌舐めずりせねばならない。そう、生きる上ではこういう余裕こそが必要なのである。

 

「そぉんなことよりぃ〜。どう?ロシアンルーレットはお嫌い?それならば喜んで今からガッツリやらせてもらいますがぁ?」

 

自分は感情を隠すといった行為が何よりも苦手なので、どうもストレートな物言いになってしまう。

 

「なるほど、噂通りの狂人か……」

 

吐き捨てるように霞っちが言う。は?ワシ狂人だって噂されてるの?あの中で?あの中の中で?わざわざ?狂人?きょうじん?笑わせる。

 

「程度の差こそあれ、リンクスなんざどいつもこいつも狂人だろ?人殺して平気な顔してんだから。けたけたけた」

 

頬を銃でペシペシする。柔らかい。

 

「少なくとも、誰もお前のように殺す事は目的としてないさ」

 

「あーら?私だって全て目的があるから殺してるのでございますことよ?」

 

「……そのふざけた口調を止めろ」

 

あーら、怖いでありんす怖いでありんす。この人怒ってるでござまんし。

 

「スゥミカちゃぁ〜ん!そんな怖い表情しないでぇ〜!目は見えないけど睨まないでぇ〜!!わたちぃー、震えておもらちしそ!」

 

「その口を止めろと……」

 

「そんな事より」

 

黙れという言葉の代わりに、銃口を霞の口に突っ込む。

あぁもう、腕がもう一本あれば、このよく見たら余り手入れのされていない黒い御髪を撫でる事ができるのに。ジャンヌちゃん大失態!てへ!

 

「答えないんならお好きという事で良いんですね?ロシアンルーレット」

 

てめぇの答えなんざ聞いてねぇよとばかりに言葉を続ける。こちとら前々からやってみたかったシチュエーションが目の前に来て涎が止まらねぇんだ。

ガチガチとスミカの口内で銃を揺らす。少しだけ、彼女の表情が恐怖に歪んだ。かわいい。

 

「ではルール説明をおば。まぁ簡単よねぇ、ここにありますは何の変哲もないリボルバー式の拳銃。入っている弾は一発だけぇー。」

 

銃を口の中から取り出し、ギュルルンギュルルンとシリンダーを回す。

 

「この拳銃を今から貴女のその可愛らしい頭に向けて五発撃ちまーす。もしそれで幸運にも銃弾が出なかったら、私は貴女を殺す事をやっめようとおっもいまーす!!」

 

私の心の声が「うわーなんてやさしいんだー」「天使だー天使だー」と棒読みで言ってくる。

 

「それは……」

 

ガチッ……と乾いた音が響いた。

その音が聞こえた途端、霞スミカは口を閉じる。

 

「いっぱーつ。六分の五は流石に成功するかー」

 

「あぁそうかい、本当にこっちの話を聞こうって気は無いんだな……!」

 

霞っちは怒り心頭っと言った感じだ。この拘束を解いたら牙を剥いてこちらに襲いかかっくるだろう。

 

「そだよぉーん。私はお客様のニーズにあわせた対応ってのは苦手でしてぇー」

 

物事は何事も、自らの脳内の台本通りに進めたほうが楽極まりない。

 

「では二ハーツメー。ゴッブンノヨーン!!」

 

カチッ。これも外れだ。

 

「あらあら、運が良いこと。オリジナルって凄いんでしねー」

 

「ふん……」

 

あら、あらあら。スミカっちゃん。目を瞑ってこちらに反応見せないようにしてらー。下手な抵抗はこっちを楽しませるだけだと気付いたかー。つまんなーい。わちきつまんなーい。

 

カチッ、カチッ

 

というわけで二連続でトリガーを引く。スミカの口元が少しだけ歪んだように見えた。

 

「けっ、四分の三も三分の二もスカかぁー。残念ー無念ーササニシキー」

 

「…………」

 

チッ、本格的にマグロになりやがった…こちらの顔を見せないためとはいえ目隠ししたのはやはり失敗だったか。表情が楽しめない。これが下手なエロ同人なら透けてどんな目をしてるかわかるのに。

 

「へぇーい、霞っちノリ悪いー。何か言っとくれよー。そんなんじゃ友達できないよー」

 

「……さっさと殺せ。」

 

あ!これ進研ゼミで見た奴だ!姫騎士霞!対魔忍スミカ!くっ殺!くっ殺!オーク!オーク!ブヒー!ブヒー!フゴ、フゴゴゴゴ!!

 

「フッゴッゴ……!そうかー、さっさと終わらせて欲しいかー。しゃーないなー。」

 

まぁ、泣き叫ばん相手にこれを続けてもしょくがない。

 

どうせ、霞ルートにおいてこれはまだプロローグなのだ、私という主役兼シナリオ書き兼読者も飽きてきちまってるし、パパパッと終わらせよう。

 

「じゃ、二分の一いっくよー!」

 

本当なら、ここで1000万かかった時のセクハラおじさん級に引き延ばす筈だったのだが。かるーい感じで引き金を引く。

 

カチッ

 

「こんぐらっちゅれーしょん!!おめでとー!!霞スミカさん!貴女にはこれからも楽しい楽しい人生を送るとこができまーす!!ぱちぱちー!!」

 

右手はチャカを持ってるし、左手は無いしで拍手は出来ないが。エア拍手ならできる。

さてさて、やっとのことで死の恐怖から解放されたスミカちゃんにインタビューしてみましょう!

 

「じゃ!生き残った感想を一言!」

 

「……」

 

おうおう、目隠しされながら睨むな睨むな。この美少女がおしょんしょん漏らしちゃってもいいのか?

 

「……ふん、飽きたんならさっさと帰るんだな。だが、次にあった時は何としてもお前を倒す」

 

あー、そっかー、ばれたかー、飽きたことバレてたかー、失態だなー、私としたことがー。

 

「うふふー、そだねー、ゴメンねー、スミスミー見たいな反応無い子だと全然楽しくなくてー」

 

拳銃をもてあそびながら、言葉を続けていく。

 

「じゃ、わちきこれで帰るからー。そこで助けが来るの待っててねー」

 

そう言って私は、スミカの頭に向けていた手を下ろし……

 

 

 

 

 

 

 

 

スミカの腹に向けて拳銃を一発撃った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「な……」

 

あ、血ー吐いた血ー吐いた。

 

「なに……を……」

 

「殺さない……とは言ったけどさー」

 

さてさてここでネタバラシです。

手も足も縛られ、身体を硬くして出血を止めようとしているスミカの耳元でささやく。

 

「撃たない、とは言ってないよね?」

 

ちなみに、最初っからこの展開にする為に弾は出ないようにしてました。

 

けたけたけた、と声をあげて笑う。あぁ楽しい。少しばかり安堵しちゃってたもんねー、安心してすこーしばかり弛緩してたもんねーしょーがないよー!

 

けたけたけた。あぁ楽しい。けたけたけた。凄い楽しい。

 

「このォッ……外道がッ!!」

 

「なぁに敵の言うてること頭の横で少しばかり信じてんのさースミカー。案外甘い女だねースーミカー」

 

もひとつおまけにけたけたけた、と笑ってみせる。

そう言う間にも、スミカのお腹からどくどくと赤黒い液体が流れ出てくる。おうおう苦しそうな顔してるねー。きゃわいい!

 

「でも良いとこに当たったねー、ここあれだよねー、赤ちゃんのお部屋だよねー」

 

拳銃をしまい、流れ出る血を指で触れ、嗅ぐ。

あー、キク。こいつぁーキクよ。ソーセージに混ぜたらなかなかのコクが出そうだ。

そして更にお腹を撫でる。んー、良い腹だ。筋肉が詰まってる。もしも子供が宿ったら窮屈だったろうねー。

そんな未来は、おそらく来ないだろうが。

 

「ま!いっか!どうせコジマ漬けの女が子供産めるわけ無いんだし!ノーカウントだ!ノーカウント!!」

 

ごめんなパッチ。多分お前未来でこのセリフ言っても首輪付きのオペちゃん許してくれないと思う。

ま、ハードならちゃんと戦うし大丈夫っしょ!

 

「殺す……!何としても……お前は私が殺すッ!!」

 

「止めときなよー、復讐はー、なにも生みませんからーー」

 

「このォッ!!」

 

ガタガタと操縦席が揺れる。すげぇ力だ。怒りの馬鹿力という奴だろう。

 

「じゃ、そゆことで!わちき帰るから!あ、もうあんたらの敷地襲わんから許してちょんまげってお上に伝えといて!じゃね!またね!戦場とかでまた会おうね!」

 

「待てッ……!グッ……」

 

背中にありとあらゆる罵声が降りかかる。それらを全て無視して、クレピュスキュールの元に戻った。

 

『高エネルギー反応接近中、約五分で作戦領域に到着予定』

 

「おっとっと、インテリオルめ救援をよこしやがったか。まぁ、最精鋭だからしょうがないのかもな。」

 

急いで出発準備を整える。楽しかったしこれ以上たたかうつもりはない。帰ろう、帰って寝よう。うん、それがいい。

 

「OK、離脱しよう。」

 

ブースターを機動、横目でゆっくりと広がる血だまりを見る。うーん、苦しそうだ。頑張れよという気持ちも含め、彼女に対して投げキッスをする。

 

「それではみなさん、さよーならー!!」

 

バイバイと手を振り、離脱する。

さてさて、帰って次の戦場を考えるかー。

 

 

 

 

 

 

目を開く、そこにあるのは白い天井

 

身体が重い。少し頭を上げてみる、白衣に着替えた自分の身体がそこにあった。

 

なんとか生きていたらしい。ボヤけた視界の中で看護士達が、ドクターに伝えろと言っているのが聞こえる。

 

そうか、生きていたか。なら、あの女に復讐ができる。

が、どうも、頭がはっきりしない。

少しばかり、目を瞑る事にした。

 

 

次に目を開けた時、目の前には見知った男がいた。

レオーネの参謀将校だ。常に冷静な男で、焦った姿は一度も見た事がない。自分の直属の上官でもある彼は、複雑そうな視線をこちらにむけてきた。

 

「なんとか生きていたようだな。」

 

人払いをしているため、周囲には医者も看護士もいない。男とスミカ、二人きりだ。

 

「ネクスト二機での作戦で失敗したんだ、言い訳をするつもりはない。降格でもなんでも、罰は甘んじて受けるつもりだ。」

 

そうだ、そもそも自分はそのような地位や名誉や政治などに興味はない。

戦いを渇望していたから、だから私はネクストに乗っているのだ。

 

「だが……あのイレギュラー……あいつは私が……」

 

「すまないが霞、その願いは叶えてやれそうにない」

 

淡々とした男の言葉に、スミカは驚いて視線をそちらに向けた。

 

「それは……どういうことだ?」

 

「理由は二つある。一つ、インテリオル・ユニオングループは本戦争からの完全撤退を決定した」

 

「なんだと!?」

 

思わず叫んでしまう。下腹部が痛むが、気にもせずに言葉を続ける。

 

「まだ、戦争は序盤の筈だ。なぜ撤退などと……」

 

「ロベルト・マイヤー大橋にてサー・マウロスクが落とされ、さらにドルニエ採掘基地を襲撃したシェリングもアナトリアの傭兵にやられた。上層部はこれ以上の戦争継続は不可能と判断し、秘密裏にGAやローゼンタールと停戦交渉を開始した。インテリオル・ユニオンはこの賭けに負けたんだよ」

 

「あの二人が……?」

 

どちらも、スミカよりもナンバーは上のリンクスだ。その二人がやられたということは、アナトリアの傭兵というのはこちらの想定以上の腕利きだったということだ。前時代の化石だと笑っていたあの男がそれに落されたというのは、なんとも皮肉な事だが。

 

「会社の独立は守れる筈だが、その代わりにネクストに関しては大きな制約をかけられるのは逃れられないらしい。対イレギュラーの作戦とはいえ、出撃するのは難しくなるだろう」

 

「ならば……私は今からレイレナードやアクアビットに移籍するよ。あの女を……なんとしてもあの女を……」

 

「完全撤退と言っただろ?それに、だ。もう一つ理由は残っている」

 

「もう一つ……?なんだ、それは」

 

もはや、上官に対する態度などを見せられるほどの余裕をスミカは持ち合わせてなかった。男もその様子を気にしてはいない。参謀将校は、ノーマルではあるが元AC乗りで、この時の彼女の気持ちが理解できた。

 

だからこそ、もう一つの理由を説明することを少しばかり躊躇った。

 

男は、深く息を吸うとしっかりとスミカの方を向いて、言った。

 

 

 

 

 

「残念だが、君はもうネクストに乗ることは出来ない」

 

 

 

 

 

この怪我人の、どこにそんな力があったのだろうか。男は表情を変えずにそう思考した。

 

「どういうことだッ!?」

 

飛び起き、男の胸倉を掴んだスミカが血走った目でもってそう叫ぶ。

 

「そのままの意味だ、イレギュラーの放った銃弾は、君の内臓だけでなく背骨にも損傷を与えていた」

 

あくまでも淡々と、この錯乱した元パイロットに事実を伝える。

 

「検査の結果、ネクストのような大きな負荷のかかる機体に乗ることはもう許可出来ないらしい。」

 

「何が検査だ!!私はこうして生きているんだ!!まだ乗れる!!あいつに復讐ができるッ!!!」

 

「君は優秀な人間だ、パイロット以外にも会社の為に奉仕する方法はある」

 

「そんなものッ!!私には……私にはッ……!!」

 

大きく見開かれた目からポロポロと雫が溢れている。

 

男は一度大きくため息を吐くと、そのまま立ち上がった。胸を掴んでいた手は抵抗なくそのまま床に落ち、スミカは力なくうずくまり、泣いた。

 

「……こんな状況だ、上官への暴行は不問にしておこう。だが、ヤケにはなるな。奴へのリベンジの手段は残っている筈だ。」

 

スミカは答えない、ただ、声にならない嗚咽のみが聞こえる。

 

「君はまだ若い。その事をよく覚えておけ。」

 

そう言って、男は部屋から出て行った。

 

 

静寂が戻った。すぐに、看護士たちが戻ってくるだろう。

霞スミカは、ゆっくりと顔を上げた。その顔には、鍛えられた軍人でも震え上がらせるほどの怒りと憎悪が見える。

 

「殺す…………」

 

そうだ、なんとしても、あのふざけたおんなを、わたしは、ころす、ころす、ころす、ころス、コロす、コろス、コロさねバなラナイ。コロサネバナラナイ。アノオンナヲコロサネバナラナイ。

 

真っ白な病室の中で、一人の女が復讐に囚われる。

 

その事を知ってか知らずか、気狂いは輝く笑顔でもってゲームを楽しんでいた。

 

「はっはっは!!無駄なんだよぉ〜サンズぅ!!人類モンスター全ての想い程度じゃ私の〝決意〟は挫けないんだ!!」

 

 

 

多くの血が流れる。だが、殆どの者は、未だ剣を納める気配はない。

リンクス戦争は、まだ始まったばかりである。

 

 




狂気が足りないのでテンション上がったら書き直すかもしれません。

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