世にリリウムのあらん事を   作:木曾のポン酢

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久しぶりにAC4をやったのですが、体感速度が違いすぎてまともに動かせなかった。危うくススにも負けかけたし。

ストレス発散にACfAの二足クレピュスキュール(両肩をガトリングに換装)でシエラジオ狩りしてきた


砂漠の狼

世界とはしりとりのようなものだ。

間に一人入るだけで、その流れは大きく変わる。

「りんご」から「ごりら」の間に、「ごま」と答える者がいれば、本来「ごりら」と答えていた人間は「まんとひひ」と答えを変えざるをえない。

こんな風に、たった1つの変化で世界はどんどんと姿を変化させる。

 

アナトリアの傭兵の任務は、元々来るはずだったモノとは違うような者が流れ込んでくるようになった。

GA・GAE・インテリオルなどの元から依頼があった企業の他に、レイレナードやオーメルなどといった企業の任務も混ざるようになっていた。

各地で奮戦する最後の鴉。その勇名は、急速に世界に広まっていった。

 

変わらないものもある。

マグリブ解放戦線は各地で活発に動いている。彼らにとって、企業への反抗という目的は変わりようのないものだ。

末端を潰そうが、基地を襲撃しようが、彼らは止まらない。

なぜなら彼らの先頭には、企業という力に立ち向かう象徴がいるのだから。

 

 

 

ならば、それを狙おう。

 

 

 

結局のところ、この世界でも同じ結論に至った。

当然といえば当然だ、頭を失ったらどんな生物でもいつか死ぬ。それを叩かない道理はない。

だが、彼らの頭は強い。あの狼が相手では我々の出血は免れない。

 

少し頭をひねり、彼らはあることを思い出した。

丁度良い駒がある。どんなに傷ついても、誰の懐も痛まない。それにあの男は、さらなる金を求めていた、ならば簡単に食いつくだろう。

 

そうして、アナトリアにその依頼は届いた。

鴉はすぐにそれに了承した。

 

 

 

第7話 砂漠の狼

 

 

 

「目標は未だ来ず……か」

 

アフリカ、砂の中にワルキューレを隠した男は一人静かに獲物が来る時を待っていた。

今回のミッションは単純なものだ。

砂漠の狼、アマジーグの撃破。

依頼はGAからだった。マグリブ解放戦線内部のモグラから、バルバロイの輸送計画が漏洩された。

GAはこれを千載一遇のチャンスと捉え、襲撃作戦を立案する。

しかし、GA社の最高戦力であるメノ・ルーはその時極東にて作戦行動を行っていた。

彼女以外に、GAに信用の置けるコマはいない。いや、一人だけ磨けば光る可能性のある男はいるが、彼が宝石となれる日はまだもう少し時間が必要である。

 

「GAの粗製には荷が重すぎるか」

 

ブロックタイプの高栄養食品を口に放り込み、水で流し込む。

完全なる奇襲を行うために、レイヴンは何日も前から砂の中に潜んでいた。

アンブッシュは得意だ、昔から何度もやった。

卑怯だという思いは無い、楽に稼げる方法だ。

 

しかし、アマジーグに何も思わないわけではない。

砂漠の狼。たった一人で、企業と戦い続ける男。最悪のAMS適性を、最悪の精神負荷で持って補う戦士。

この生き方を救えぬ阿呆だと切り捨てることはできない。自分だって、女のために精神を削りながら戦ってるのだ。

 

自嘲の笑みを浮かべる。無線封鎖を行っているため、フィオナの声は長い間聴いていない。

彼女の声を次に聞くときは、ミッション開始の時である。

 

穏やかに、ただただ穏やかに始まりの時を待つ。

頭の中で無数の状況を想定する。

そのパターンはゆうに3桁を超える。中には、援軍としてオリジナルネクストが来るというものも含まれていた。

ありえない、なんてことは戦場においてありえない。先の弾道ミサイル破壊任務では、テクノクラートのネクストが妨害の為に現れた。問題無く撃破は出来たが、今回のミッションにも護衛として現れる可能性はある。

 

その場合、どっちを最優先で叩くか。目標はバルバロイの撃破のみだ。護衛がノロマなら輸送中の奴を叩き、離脱するのが吉だろう。軽量機の場合は、そちらを潰してから、早急に料理すると……

 

結局、その日もバルバロイは来なかった。電子タバコを吹かした後、男はゆっくりと眠りについた

 

 

状況が変わったのは2日後だった

 

「フィオナよりワルキューレ、聞こえますか?」

 

ほぼ一週間ぶりのオペレーターの声を聞き、少しほおが緩む。

 

「こちらワルキューレ。感度は良好、来たか?」

 

「はい、予測通りのルートです。護衛も確認できません。バルバロイは三分以内に作戦エリアに入ります」

 

「了解した、ワルキューレを起動する」

 

コンソールをいじる。眠り続けていた戦乙女が目を覚まし、身体を覆っていた多量の砂を吹き飛ばす。

 

ワルキューレは、最初の任務からその姿を変えていた。

プラズマキャノンはMSAC製の分裂ミサイルに、肩には近距離迎撃用の散弾兵器を搭載している。

 

そろそろ、ブレードの種類や腕のアセンブルも変えたい。アリーヤの腕もいいが、EN兵器を扱うにはインテリオルユニオン製のものが一番だ。

 

この仕事を終わらせたら、その辺りの買い替えも考えなくてはいけない。そう考えながら彼はブースターをオンにする。

 

「バルバロイ、作戦エリアに入ります!」

 

コジマ粒子が周囲に展開する、これで敵もこちらの存在を認識するだろう

 

ワルキューレは飛び立った、英雄の死に立ち会うのだ、遅刻しては失礼だろう

 

 

だがしかし、物事はそう上手くはいかない。

 

「な……ワルキューレ!北からネクストが一機接近中!!これは……まさか……?」

 

なるほど、パターンDか。さて、相手は誰だ?

 

「確認した、どうしたフィオナ。知り合いか?」

 

「敵AC、ホワイト・グリントです!そんな、ジョシュアがどうして……」

 

咄嗟に舌打ちしたくなるのをなんとか抑える。想定した中で最悪の状況だ。アスピナがアナトリアに対抗して投入したこの最も新しいネクストは、傭兵として各地で活躍していた。

 

フィオナは彼の事を知っているらしい、どんな人間かについて色々と話していた。

彼はアスピナにて、AMS研究の被験体をやっていたらしい。

最初の山猫、フィオナはそう言っていた。誰よりも長い間ネクストに乗り続けた彼の実力は、ベルリオーズにも匹敵するとも。

 

「リンクス、ジョシュア・オブライエンだ。救援に向かう、持ち堪えてくれ」

 

男の耳に、ジョシュアからの無線が聞こえてくる。どうやら、全チャンネルに向けて流しているらしい。名前を売るためか、それとも仲間を安心させるためか。

 

「お互い傭兵だ、例え知り合いだろうが戦う可能性は大いにある。まさか、覚悟してなかったなんて言わないよな?」

 

「……いえ、大丈夫です」

 

フィオナが答える。

 

「ホワイト・グリントは軽量機です。バルバロイだけを相手して逃げることはできません。二機とも撃破してください!」

 

「了解、バルバロイ起動前に倒す!」

 

ワルキューレがOBを吹かせ、ホワイト・グリントへと接近していく。

 

視界にアスピナの白い閃光が映る。最初の山猫と最後の鴉、天才と粗製、白と黒……ほぼ全てが真逆の存在。一致するのは互いが傭兵ということのみ。

 

ミサイル発射、OB停止、QBを行いながら接近する。

 

「アナトリアの傭兵……なるほど」

 

ホワイト・グリントからの声が聞こえる。その中から、様々な感情が見える。

 

「お会い出来て光栄だよ、ジョシュア・オブライエン。そして……」

 

ブレードを展開、ミサイルをかわしたホワイト・グリントがブレードを構えるのが見える。しかし、構わず、突っ込む。

 

「サヨナラだ」

 

そして、二人の傭兵は激突した。長い長い因縁の舞台は、こうして幕を開けることとなった。

 

 

何もない荒野の中で、白と黒2つの光が交差する。

ライフル弾をいなしながら、マシンガンを撃ち込む。

 

「クソッ!捉えられない!!」

 

ビルに一瞬身を隠し、ライフル弾をかわす。

ミサイルロック完了。ファイア、ファイア、ファイア。

そしてミサイルと共に突っ込んでいく。

が、ホワイト・グリントはQBでそれをかわすと、こちらを迎撃するために突撃ライフルとレーザーキャノンを放つ。レーザーはかわす、ライフル弾は斬りつけることによって消し去る。

そしてなんとか懐に潜り込むが、ジョシュアはそんな自分を渾身の一太刀でもって退ける。

 

「まともに斬り合おうって気は無いということか!」

 

「当然だ、アナトリアの傭兵の噂はこちらでも確認している。わざわざそっちの土俵でやる気は無い」

 

斬りすぎたということか、迂闊だった。相手を無理矢理土俵に連れてこれる技量も無いのに、手札を見せすぎたのだ。

だが、後悔しても遅い。対策はこの戦いと後だ。

 

「なら!!」

 

落ちながら敵をロックする。肩部の散弾兵器とマシンガンの照準を合わせ、放つ。

 

が、これもジョシュアは交わした。マシンガンは何発か当たったものの、PAのせいで効果が薄すぎる。

 

そんな時、最悪の報告がフィオナから送られてきた

 

「バルバロイ起動します!そんな……このままじゃ……」

 

二体一、最悪の状況だ。楽な任務が一転して絞首台への道へと変わった。

 

どちらも決定打を欠いたこの状況で、援軍は致命的だ。男は素早く算盤を弾く。この状況なら、任務放棄しても最低限の言い訳は出来るはずだ。

 

「フィオナ、この任務を放棄して離脱する!」

 

「了解しました、すぐにGAに連絡を……」

 

ホワイト・グリントの猛攻をかわしながら、視界の端に映る赤いイレギュラーを見る。トラクターの上に立つイクバール標準機の軽量二脚は、こちらの姿を見るとブースターに火を…………

 

 

次の瞬間、バルバロイが巨大な炎に包まれた。

 

「な……!?」

 

「なんだぁッ!?」

 

ジョシュアと男、同時に声を上げる。

爆風が機体を叩く、だいぶ離れていた筈なのに異常な風圧が襲ってきた。

 

フィオナも同じだが、戦場にいない分衝撃が薄い。すぐにパニックから回復すると、レーダーに映る情報を報告した。

 

「ば、バルバロイの反応はまだあります。だけど、この攻撃は…………」

 

「うひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!!!」

 

「「え?」」

 

その声が響いた瞬間、二人はさらなるパニックに陥った。フィオナの声を遮った声は、フィオナの声だった。

 

「何だ……これは一体……」

 

焦ったようにジョシュアも呟く

どうやら、全員にとってのイレギュラーな状況が今らしい。

そんな中、声は楽しそうに言葉を紡ぐ。

 

「いやぁ、仲間はずれはよくないなぁ!私もいれてくれないと……!」

 

「こちらワルキューレ!そちらの名前を……いや、目的は、目的はなんだ!?」

 

二機とも既に手を止め、この状況がどうなるかを見守っている。

 

「いやいや、ちょっと貴方のお手伝いをね!」

 

フィオナの声で、フィオナが絶対に言わない言葉をを楽しそうに吐く女。いや、それはまるでセリフのようだ、女優が台本を読むように、声を張り上げ、観客に聞かせるように、無線の向こう側のイレギュラーは語る

 

「イレギュラーネクスト、レーダー範囲内に入りました!これは……こんな機体見たこと無い……」

 

 

ワルキューレのカメラに映ったイレギュラーの姿、それは、なんとも幻想的な姿だった。

 

四枚の白い羽根を広げた機体が、高速でこちらに接近してくる。いや、アレは羽根ではない。ブースターの光だ。OB使用時の光が、まるで羽根の様に広がっているのだ……

 

「なに……この音は……」

 

フィオナの声を聞き、耳をすませる。そういえば、この女の声の後ろから、何か音が……いや、これは……歌?

 

–––––– oh,I'm scary.––––––

 

「さてさてさてぇ!ここにおわしますは砂漠の狼、最初の山猫、そして最後の鴉ッ!!」

 

––––––so I'm scary.–––––––

 

女が笑いながら叫ぶ。場にいるすべての存在が、このイレギュラーを注目している

 

––––––all that I see.–––––––

 

「なんだ、なんなんだ、貴様は……」

 

新たな男の声、おそらく、アマジーグだろう。

 

––––––now,I'm scary. –––––––

 

「狼と山猫なんて初陣じゃちょぉっっと荷が重いけど、私が負けるわけないだろォッ!!!!」

 

––––––all is fantasy.–––––––

 

「敵機確認!重量四脚です!一直線にバルバロイに突っ込んでいきます!!」

 

「どうなってるんだ……この距離をOBでだと……」

 

「くっ……!?バルバロイ、今行くぞ!!」

 

「こんな所で死ぬわけには……!!」

 

四者四様の反応が無線に響く、その声を貫き。この世界にとって最悪の幻想は更に速度を上げる。

 

「行くぞォォォォォォォォォォォォ!!!!!!」

 

 

––––––all is fantasy.–––––––

 

 

 

 

かくして、ホワイトアフリカの地にて役者は揃った。

自らを主役と自称する少女は、第一幕の終わりに堂々と姿をあらわし、頭に浮かんだセリフを読み上げる。他の演者は驚愕し、偉ぶった脚本家たちも目を白黒させる。

だが、幕は既に開いている。誰も逃げることは許されない、そもそも逃げる場所など存在しない。

 

こうしてこの少女は歴史の中に突如としてその名を記されるようになる。

他者から見ればまるで天災の如く暴れ回ることとなる彼女の初舞台は、このように混乱の最中で始まった。

 




いまさっき思いついたの

「これは……なんで、お前が……」

財団との戦いを終えた男、ボロボロの身体のまま帰ってきた男がベットに倒れこむと、そのまま彼は意識を失った。

次に目を覚ましたのは、何故か輸送ヘリの中だった。
そこには、本来いる筈のない人間がいた。

「マギー……なんで……」

「どうしたの?私の顔をずっと見つめて」

「さぁな、腹でも痛いんじゃないか?はっはっは!」

すぐに男は知る、この二人は、過去の二人だと。自分が初めての仕事に赴く直前の二人だと。
そして彼は気付く、いま自分たちがいるのは、別の世界であるということに。

「あれは……AC!?馬鹿な……!速すぎる!!」

「渓谷の中に入る!しっかりつかまっとけよ!!」

「あれは……あの時の……」

見た事もないACに追跡されながら、運び屋たちは逃げ続ける。

彼らは何時しか追い詰められ、崖っぷちにてそれと相対する


だが


「残念だが、俺は一度お前みたいなのを倒してるんでな」

「そんな……ノーマル如きに……!?」

ありえない下剋上が起きる時、歴史は大きくその形を変えた。

そして、さらなる波乱が押し寄せる



「なるほど、ネクストを倒したノーマルがいると聞いてみれば、同じミグラントだったとはな」

「……お前は?」

「そうだな、黒い鳥とでも呼んでくれ。昔はそう呼ばれていた」

最初の鴉と

「すぐにそちらに救援に向かう、持ちこたえてくれ」

「レイヴンだ!伝説のレイヴンが救援に来てくれたぞ!」

「伝説のレイヴン……だと?」

最後の鴉

「なんだ、君たちも来ていたんだ」

「なに?あなた、こいつらを知ってるの?」

「財団……か、久しぶりだな」

人間が大嫌いな人形

「企業のAC……なるほどね、レイレナードでもGAでも無く、お前らの事か!主任!!」

「たっく!なんでこんな所でまでこいつみたいな金にならない奴と戦わなきゃならないのよ!!」

「まぁまぁ、気楽に行こうよぉ!!……まだ、動く時じゃないからな」

人間が大好きな人形



清浄な大地にて、荒廃した大地の戦士達が疾駆する。

「敵ネクストは遠距離狙撃型!やばいぜ!このままじゃ嬲り殺しにされる!」

「UNAC部隊の展開を確認!前線は人形共に任せて早く本命を!」

「ゾディアックと死神部隊が手を組んだ……だと?」

「鴉殺し何ぞに斬られるほど!俺は鈍っちゃいねぇんだよ!!」

「平和のためには、貴方達は消さねばなりません。世に平穏のあらんことを……」

「状況は混沌としている。だが、だからこそ動くには最適と言える。クローズ・プランを開始しよう」

無数の思惑と弾丸が交差する。誰が勝つのか、誰が死ぬのか、そんな事は誰にも予想できない。

そんな中を、彼らは走り抜ける

「好きに生き、好きに死ぬ。それこそが俺たちだろ?」

そこが戦場である限り、彼らが止まる事はない。


アーマード・コア
鴉達の狂想曲

オチすら思い浮かばないので絶対にやりません

でもとりあえずマギーはネクストに乗るし、メノ・ルーは蜜蜂になってるよ。

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